第14話『アフロブッチーーン』
冒険者ギルド。それはファンタジーを題材にしたゲームやラノベだとかなり馴染み深いものではなかろうか。
一攫千金を狙う者、力を求める者、名声を求める者。
実に様々な人々が集まり、中にはゴロツキや荒くれ家業な連中も多い。
そんな冒険者ギルドに俺達は到着した。
西部劇とかに出てきてた両開きのドアを開いて中に入る。
カウンターには、アフロ頭のヨーダ見たいな爺さんがグラサンと革ジャン装備でカウンターにあぐらをかいていた。
「ぎっギルマス、ちょっといいか?こっこの二人が、何か冒険者になりたいとか言ってきてて…」
「……あ?ワール。お前は確か街に出たって言う妙なもんを調べるクエストを受けたよな?まぁいい報告はあげとけよ。それと……」
アフロヨーダが此方を見る。
何やら値踏みをしている様な視線を感じるのは気のせいか?。
「……ここはただの冒険者ギルドじゃねえ高級冒険者ギルドだ。分かるか?お前ら見たいなろくに戦いも知らない素人が気軽に冒険者になりたいって、入ってきていい場所じゃねぇんだ。帰りな……」
「…………………」
「…………………」
え?ここって何?冒険者ギルドよりハイランクな感じの場所だったの?。
何か一瞬で俺が完全な素人だってバレたけど、まぁリーマンスーツ装備で武器もないからもろばれだろうけどな。
しかしうちの謎メイドまでダメ出ししている感じからするとこのグラサン、あんまり相手を見る目はないんじゃないかと考える。
だって一目で相手の力量を知れる実力者っとかならユーレシアについても何かしらあってもおかしくないだろう?。
それを俺と同じように扱ってる時点で雰囲気と年だけのアフロだと判断するわ、まぁ現実にパッと見で相手の強さとか分かりますなんてヤツが実在する方があり得ないよな。
そんなファンタジーな人材はいないと言う結論が出たところで……このジジイの言葉に対する返答を如何にするかだが……。
もう決まってる。
「人の実力を一目で分かるほどおたくは大層な経験でも積んできたのか?なら教えてやるよ俺が。お前にな。お前さんに他人の実力を測る目なんてなんもない事が、今証明されたぞ、コラッ」
「…………なんだと?」
ユーレシアがかつてない程にニンマリしている。
ちょっと調子に乗りまくりな発言を早くも後悔しているぜ。
しかし取り消したりはしないがな。
「確かに俺は、まぁ大したことないぜ?今はな。けど現時点で俺の隣のメイドの実力も分からないんなら、おたくはその程度って話だ…」
「ハハハッそれは仕方ないぞ相棒、このグラサンジジイは年寄りだからな恐らくとっくに
「…………」
ユーレシアとのツーマンセルでグラサンジジイにアタックだ。
周囲の冒険者ギルドの冒険者達からは不満が噴出する。
「なっ!?ギルマスになんて物言いだ」「このオヤジとメイドがぁっ!」「ここが高級冒険者ギルドだと知っての言葉か?」「舐めやがって……」「おいっあのぐったりしてるのってワールか?」「ああっやたら綺麗なメイドに引っ立てられているがあれはワールのヤツだ」「メイドなんて引き連れやがって、どこのボンボンだよ」「ムカつく…」
どいつだ、オヤジとメイドって言ったヤツは。
三十路野郎は認めるがまだギリギリ、オヤジはないだろうと異議を申し立てるぞ。
ギルド内はヒートアップ。冒険者っと言うか殆どゴロツキ見たいな連中からは殺気すら出ている。
負けじとうちの謎メイドも親指で首を掻き切る仕草で応戦している。
俺も中指でも立てるかと考えていると……。
「………ちっ分かった。このままじゃ拉致があかねぇし、お前らの実力とやらを見てやるよ。そんなのがあればな」
チャンスをくれるにしては喧嘩腰な発言だ、こちらも喧嘩腰なのでおあいこだけどな。
するとヨーダ風味なギルドマスターが声を上げる、それに応える様にギルドの奥から二人の巨漢がズンズンッて現れた。
マジかよ、なんだアレッ……顔恐すぎ何ですけど。
「コイツらはワシのボディーガードのゴイルとバズーだ、この二人相手にお前らの実力とやらを見せてみろ……」
グラサンジジイは言うだけ言うと強面の巨漢二人がのそのそとこちらへ来る。
モブの名前を覚えるのが苦手な俺はユーレシアの方を見ると………隣いる筈のメイドがいなかった。
ドサッ。
ドサッ。
「……………はぁっ」
「あ?なに………ハッ!?」
俺はため息を一つ、だってうちの謎メイドがいつの間にか巨漢二人の前にいたと思ったら。
何か強面が二人とも静かに倒れた。
当然ギルマスのグラサンはビックリ仰天である。
他の冒険者達も騒ぎ出す。
「なっ……何が起きたんだ?」「え?あの二人が。しゅっ瞬殺だと!?」「何者だよあのメイド!」「一体何をしたんだ?」
ガヤガヤとうるさい連中だ、けどグラサンジジイの間抜けな顔を見れたのは俺的には良かったかな。
「……それで?おたくのボディーガードはあの様だけど、実力とやらはうちのメイドが示したって事でいいのか?」
「………お前は何もしてねぇだろう」
「おいおいっアイツはメイド。俺の従者だぞ?その従者にやられる手合なんぞの相手を俺がしたら……殺さない自信がないんだが?」
「………………ッ!」
勢いがあるうちにホラをふけるだけふいておくぜ。だってあんなのの相手とかさせられたら俺とか簡単に死ねるからな。
「なっ!私は確かにメイドだが、私はお前さんの相棒だぞっ!」
横からわめくアホメイドは無視だ無視。
俺は出来るだけ自然な笑みをする。下手な作り笑いだ。
「………………」
「………………」
グラサンのヨーダと見つめ合うとか気持ち悪い事この上ないが我慢だ。
やがて向こうが折れた。
「………っち、仕方ねぇ。分かった、分かったよ。お前らのウチへの冒険者登録を認める、おいっギルドカードの発行を…それとのびてる二人はギルドの奥に運んで魔法で回復させてやれ」
何やらグラサンが受付カウンターの受付嬢に指示をしている。
………ふうっどうにか最初の関門を突破したっぽいな。助かったわぁ俺も誰かと戦えとか言われなくて…。
「ユーレシア、まさかとは思うけど生かしてるよな?」
「当たり前だ、それよりも人を従者扱いするのは如何なものだと私は思うんだが…」
何やら不満ありありなメイドをなだめているとグラサンジジイが俺に話をしてきた。
「ギルドカードを作る用意が整うまで待っていろ、冒険者って仕事について詳しく話をするがここじゃあれだから別室に移動するが構わないか?」
「構わない、色々と細かいサービスだけどそれが普通なのか?」
「……普通は受付嬢の仕事だ。俺が直々にこんな真似をする事は滅多にない」
だろうな、回りの冒険者が
「お前みたいな手合と下手に関係を拗れさせるのはバカを見るだけだ。俺はそんな真似はしない、結果さえ出せば文句もねぇ…要は実力が全てって訳だ。分かりやすいだろ?」
「そっちの方が俺達も助かるよ」
ウチのメイドも無駄にごちゃごちゃするより単純に力で解決を好む蛮族よりの思考回路の持ち主だしな。俺は違うけど。
「それで?手ぶらみたいだが、もしもモンスターの素材なりを持ってるってんならギルドで買い取るが…ワザワザウチに来たって事は何かしら目を引く自信のある獲物でも仕留めたんだろ?」
………仕留めてねぇよ?。
本当にそんなシステムがあるとは。さすがファンタジーな世界だな。
恐らく新人の実力を回りに一目見せておくことで今後のトラブルの回避でもしたいのかもしれない、それなら実に利にかなったシステムだよな。
ん?ならあれでもいけるか?。
プレア。
『……はい』
あの金ぴか騎士から取り上げた剣。あれ車内に置いてたろ?あれを手元に出してくれ。
『……いいんですか?やれと言うのならやりますけど』
なんか含みのある言い方だな。
しかし少し待つとさっきまで何も持ってなかった右手に黄金の剣が握られていた。
このアイテム転送するのも相当に便利な能力だよな。確か次元収納のスキルの応用だったか?。
まぁいいか。
俺はかっこをつけて剣をカウンターに置いた。
「これならお眼鏡に叶うか?昨日襲ってきた狂犬みたいな騎士から取り上げたんだよ」
「………そうか」
グラサンジジイは口の端を吊り上げて笑う。
そして………。
「取り押さえろぉっ!」
「ハアッ!?」
コイツいきなり捕縛命令とか、ふざけんなよ!。
グラサンジジイの命令に従いゾロゾロとこっちに来やがった。
「なっ!?ふざけんなよグラサンジジイ!なんのつもりだコラッ!」
「テメェこそどういうこった!ソイツはこの国で知らない者はいないと言われる二大筆頭騎士の一人。黄金の騎士ブランニーシャの愛剣じゃねぇか!そんなもん買い取ったらあの剣のコレクターの騎士に殺されるわ!」
「ああん!?その黄金の騎士をぶちのめして土下座させてから巻き上げたんだよ!」
「更に城の貴族も王族も土下座させたのが私達だぞ!貴様らもこんな非礼をこれ以上するのなら詫びろ詫びろ詫びろーー!」
ユーレシアは次から次に来る冒険者を指先一つ触れさせる事もなく魔法で吹き飛ばしながら何か言っている。そのセリフはやめろ。
「なっ……なんだコイツらは!?ヤバい過ぎる!おいっ何としてもここで取り押さえて城につき出せ!」
ちなみに俺は冒険者にどんどん追いやられていく。いいなぁ魔法。俺も魔法で冒険者をブッ飛ばしたい。
野郎冒険者との密集具合が急上昇、三密って言葉を知らねぇのか。
「くっそ!ざっけんなよコノッハゲェーーー!」
「おっ俺のどこがハゲだコラァッ!」
「だったら私がそうしてやる!」
言うとユーレシアはまるで瞬間移動でもしたみたいにグラサンアフロの目の前に、そして……。
ガシッ……ブッチーーンッ!。
「はぎゃああああああああああああああっ!?」
「「「「「ギッギルマスーーー?!」」」」」
ユーレシアの攻撃がギルマスの頭皮に炸裂。
クリティカルヒットだ。
グラサンアフロはただのグラサンになって気絶した。
現場はまさに阿鼻叫喚。地獄絵図。支離滅裂と言った具合だ。収集不可能だな。
そんな時である。
「………お前達は、何処にいても騒がしいみたいにだな」
「……………?」
やたらと透き通る様な女性の声がした。
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