第13話『ドリームマッチと冒険者ギルド』

そこは、最終決戦の地である。


「バフゥウウウウウウウウウウウ!」

「バンモォオオオオオオオオオオ!」

「ハタラケェエエエエエエエエエ!」


俺の名はさと……いやっアカシアだ。数多の社畜や企業戦士達を守護する存在、ブラック企業戦士である。


その俺の目の前にいるのは無数の鈴木ゾンビ達だ。

しかし奴等はただの雑魚に過ぎない。


奴らを束ねる諸悪の権現が鈴木ゾンビの大軍の向こうにいた。


「佐藤ぉおおおお!きさまぁあサービス残業もしないで何を異世界なんぞに言ってやがんだあぁあ!?」


ヤツの名前は鈴木下道すずきげどう

俺がブラック企業戦士として勤めるブラック企業での俺の元上司である。


まぁ夢の世界の話だが……この世界に生きる全ての社畜を、企業戦士を、そして新入社員をイビり、侮辱し、罵倒して暴力を振るう事を辞さない腐れ下道である。


ヤツは世界を支配し、この世の全ての人間を社畜化し、全人類を支配しようと企んでいるのだ!。


「金も出ねぇのに、残業なんかするわけねぇだろこのハゲぇっ!不景気でどうしょうもないなら頭を下げて頼み込む姿勢を見せろやカスがぁっ!」


「きっ!?きっききキキキキキキキサマァアア!ぶっ殺してやる!」


鈴木が片手を上げて前に降り下ろす。

鈴木ゾンビ軍団がそれに応える様に此方に進軍してきた。


「…………来やがれぇっ!」


俺はリーマンスーツを着込み、何故か隣には我が愛車がいた。

………負ける気がしねぇな。



「ぐぉおおおおおおお!」「ぎゃあおおおおおおお」「バヒラァアアアアアア」「ボーナスナシィイイイイイイ」「ヤスゲッキュウウウウウウ」


愛車に乗り込んでアクセルを全快。

俺の軽自動車に引かれたり吹き飛ばされたりする鈴木ゾンビ達は実に様々な悲鳴をあげている。


初めて時は色々とパニクッたが慣れれば何の遠慮もなくアクセル踏めるぜ。

これも相手が糞上司である鈴木だからであろう。


良心なんてかけらも痛まなぁーーーーいっ!。


「オラオラオラアアアアアッ!」


「ばっばかな!?俺の下僕達を何の躊躇もなく…」


何でお前にクリソツなゾンビに俺が躊躇すると思ってんだコイツは……本当に人に迷惑や気苦労をかける事しか能のない連中ってのは、人が心の底から自分を嫌っている事に気付かないよな。


地獄に落ちろばーか。


俺は鈴木ゾンビどもを車で吹き飛ばし一掃する。


ついに下道王げどうおう鈴木との一騎討ちだ。


「くっ!こっここまでくれば正々堂々と勝負を………」


「死ねぇえええええええええ!」


バゴムッ!。


「ぐっハァアアッ!?」


そのまま車で鈴木をブッ飛ばし、俺達の闘いは決着した。


地面に転がりピクピクしている元カス上司の前に俺は立っている。


「がっく!………くそっこんな所で……俺はこの世の全ての負け組を従えて……っ!」


「鈴木……今までお前が、蔑み。侮辱し。見下してきた、全ての社畜とブラック企業戦士達に。心の底から詫びろ」


鈴木が上半身を起こし立ち上がろうとする。


俺は更に一歩前に出で睨み付ける。


「あぁやぁまぁれぇぇっ!おお……じゃない、スゥズゥキィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!」


「ぐっうぅうぬぅううううううううううううう」


俺の言葉に、鈴木は苦悶の表情と声をあげながらも……腰を屈める。


両足の膝を地面につけた。


両手の手のひらを地面にあてる。


そして……その不細工な顔の額を……。


地面に…しっかりと擦り付けた。


「もっ申し訳ございませんでしたぁああああああああああっ!」


「………………」


それは完璧な土下座であった。


どっかのメイドのせいでムカつくヤツを土下座させてみたいなってマイブームが到来中の俺である。だからこんな夢をみてんのかな?。


「…………終わった」


これで今までこのカス上司とブラック企業に苦しめられてきた、全ての社畜と企業戦士を守る事が出来たんだな……。


ブラック企業戦士アカシアの物語。


完。


◇◇◇


「………ん?」


目が覚めた。


……?、何故かとても気分が良いのは何でだろうか。


昨日は真夜中に城を脱出したのはいいけど、深夜だったから晩御飯を食べる場所もなく、しかも飲み物を買える自動販売機もない世界だからマジで焦った。


そこで車の後部座席に放っておいた朝飯と昼飯様に買ったパンと飲料水を思い出して空腹をしのいだ俺達だ。


ユーレシアのヤツも当たり前の様に食べ物を食べるから(お前なら何も飲まず食わずでも案外平気そうだなって言ったらそんな訳ないだろ!って怒られた)、何とか寝たけどお腹が減っていて喉も渇いている。


しかも……。


ドンドンドンッ。


「おいっ!往来の道でこんな鉄の馬みたいな変なのを置くんじゃねぇよ、聞いてんのか!」


んだよもうっせっかく気持ちよく起きれたのに、見ると如何にも冒険者って感じの装備をしている中年野郎が視界に入った。


「………………」


相手が美女でも何でもないことを確認した俺はプイッとそっぽを向いて二度寝することにした。


「おいっ!?てめぇっ今起きたよな!?何を狸寝入りしてんだコラァッ!こんな変なの物があるせいで周囲の住人が不安がってるって苦情があったんだよ!只でさえ昨日街中を暴走する謎の魔導走行兵器だとかが現れたって街の人間が噂して不安がってるのに……」


眠い、何をデカイ声でごちゃごちゃ言ってんだ?声はデカイけど興味のない内容だから一切耳に入ってこねぇよ……、取り敢えず中指でも立てとくか。ピッとね。


「てってめぇ……!?上等だコラ!この妙な乗り物ぶっ壊して引きずり出してやるからな!」


ガンガンガンッ!。


『……私のボディに拳を、いい度胸ですね。ストーンランス』


ボゴォオンッ!。


「あんぎゃあああああああああああああっ!?」


「………んっんん!ん~~~。何だ?うるさいなぁ美女の眠りは、妨げるものじゃないぞ……」

「何かギャアギャアうるさいおっさんが、プレアを何度か殴って、怒ったプレアが魔法で石の槍見たいなのを出しておっさんをブッ飛ばした」


……………え?ちょっと待って?。

俺は飛び起きてプレアに話しかけた。


「プップレア。お前さっき魔法使ったのか!?」

『?、はいっそうです。私は土魔法もスキルとして手に入れてましたから普通に使えますよ?」


使えますよじゃねぇよっ!何で俺が何の魔法もゲット出来てないのに軽自動車のコイツが空飛べたり石の槍を出したり出来んだよ。


不公平だ。世界越えた時の経験値は分配制じゃないのか!?。

俺も魔法とかでおっさんをブッ飛ばしたいんですけど。


「ふぅん、なるほどなるほど~」


何かユーレシアがニマニマしている、こういう時のこの謎メイドは悪いことを考えているんだ。


「相棒、質問なんだが、車と言う人の財産を傷つけようとしたヤツには、我々は被害者として請求しても許される立場だとは思わないか?」

「………………思いますな」


全力で賛成です。


『………恐らくですが、あの冒険者の方が法廷に出ると有利ではないかと……』


は?いきなり怒鳴りながら我が愛車をどつく輩に法が力を貸すわけがないだろうに。


俺達は地面に転がりピクピクしている冒険者の男に向かって歩いて行く。



その後冒険者の男のおごりでご飯を食べた、冒険者がブーブー言ってきたら怖いメイドが黙らせくれるので遠慮なく俺達は要求をしまくった次第である。


「ほぉー、これがこの世界の料理か」

「相棒相棒、このミクリアルのタルトってのを頼んでみるんだ」


「……なっ何で俺が」


「………ん?なんだ?」


「……………何でもないです、ううっ……」


ユーレシアが勧めるタルトを頼んだ。

……何だよこれっデカイ緑色のイモムシが丸々乗ったタルトが出てきたぞ?。


ユーレシアを見る、ニンマリしてるな。

完全に確信犯である。


「イモムシミサイル。ゴー!」


アホメイドにフォークで刺したイモムシを向けるとメイドが応戦してきた。上等だコラ。


それからお腹を満たした俺達は今後の事を話ているとユーレシアから意見が上がった。


「さてっお腹もふくれたし、そろそろ真面目にこの王都での金作を考えなければならないぞ相棒」

「……けどよ?お城であれだけ派手にやってこの街で生きていけるのか?」

「むしろあれだけやればこの国の王も馬鹿ではないから下手に此方に手を出してこないぞ?恐らく貴族達にも釘を指している筈さ…」


筈さって、そんな都合が言いように話が転ぶか?。


「少なくともあの王は、私を本気で怒らせたらこの国が地図から消える事くらいは理解しているさ、安心して暮らせばいいぞ」

「……………」


うちの謎メイドは怒らせると国を消せるらしい、凄いね。怖いね。

まっコイツがここまで断言すんならそうなんだろうな、なら……。


「やっぱり今後の生活を考えると、何して稼ぐかって事になるか……けど異世界に来たってんならしかないかなっておもうんだが」

「ほほう?アレっとは何だ?相棒……」


俺は逃げない様にユーレシアに捕まり、片手で引きずられる様に腕を捕まれてぐったりしている男に視線を向ける。


使い込まれた要所を金属でそれ以外を何かの革で仕上げた鎧やら小手やらを身に付けたおっさんだ。


完全に冒険者してるわ。


そうっ冒険者である。


「ファンタジーな世界で一発当てるってんなら冒険者とクエストで大金ゲットじゃないか?」

『………一発当てる気なんですか?』

「イヤッ出来れば三発は当てたい」

『三発っ!?』


そんな俺をユーレシアはニマニマしながら見て言った。


「フフッなら行くか?冒険者ギルドに……」


そして俺達は冒険者ギルドに向かった。









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