第15話『冒険の舞台へ』

声のした方を見る。


そこにはビックリするほどの美人な女性がいた。


金髪碧眼で年は二十歳くらいか?とにかく恐ろしく綺麗な女性である。


どれどれスタイルは……ってあれ?。この子は首から下は鎧を装備しているようだ。

美人女騎士ってヤツだ。これはこれでアリだな。


是非ともくっころ宣言をしてほしい程の逸材だな。

けど一つ気になる事がある。


この子の着ている鎧な、どっかで見たことがある金ぴかな鎧なんだよ。

まさかな。まさかな~~。


見ると彼女はプルプルと拳を震わせている。


「………………どちらかでお会いしましたか?」


すると、冒険者ギルドの入り口にいた女騎士が消えた。


次の瞬間には目の前にドンッ。

そして………。


「私のっ!愛剣を返せーーーっ!」


ボゴスッ!。


◇◇◇


………お?。

俺は金ぴか女騎士に殴られて気を失ってしまっていたらしい。


むくりと起き上がり回りを見ると……何か凄い事になっているな。


冒険者ギルドの冒険者がギルドの床や壁、それに天井にまで

腰から両足までが何故かピーンってなっていて上半身がめり込んでるんですけど。


そして…………。

ウチの謎メイドが女騎士を簀巻きにして足蹴にしている。


「おうっ起きたか相棒。見ての通りお前さんを殴り飛ばしたこの金ぴかは縛り上げといたぞ?コイツはどうするんだ?」


「んんーーーっ!んーーーーーーっ!」


コイツ一人でみんなブッ飛ばしたんだろうなぁ、本当にコイツはチートの塊見たいなメイドである。メイドの要素が見当たらないが。


「……はぁっいってぇなぁ、いきなり人を殴り付けるのが騎士様の流儀かよ。とんだバーバリアンな職業だよな騎士って」


「んんーーーっ!」


どうやら不満ありありなご様子だな。


「相棒、やはり冒険者ギルドで冒険者になるのか?」

「は?そりゃ冒険者となるには冒険者ギルドで………いや」


少し考えてみる、ゲームやラノベの知識頼りで冒険者になりたいなら冒険者ギルドに行って冒険者の資格を取るとか登録するとかって考えていたけど。


そもそも冒険者って資格やら人に認めて貰ってなるもんじゃなくね?。

前の世界の探検家とかって人の協力とかがあるにせよそれになるにあたって何かしらの資格が必要なのか?。


まぁその辺りのリアルな知識はないので知らんけど。

その事に思い至りユーレシアを見ると。


ものすごい笑顔を返された。


「フフンッ気付いたか?別に冒険者になるのに誰かしらの許しなどこの世界じゃ要らないのさ。もしもとやかく言う輩がいたら私が黙らせてやる」

「そいつは頼もしいな」

「そうだろう?私はいつも頼もしく、そして超絶美しく麗しい美少女メイドなのさ!」


誉めると際限なく調子に乗る謎メイドだ。乗るだけならタダだから乗ってしまえと言わんばかりに調子に乗りやがる。


「……しかし勝手に冒険者になったとしても、ほらっあれだ。冒険の舞台と言うかダンジョンとかモンスターが出てきて金になるイベントが発生する場所に入るには色々とあるんだろ?ファンタジーな世界のクセに…」

「確かに、例えばこの国で一番有名なダンジョンには冒険者ギルドに登録された冒険者しかダンジョンに入る為のアイテムを国から貸し出されない。だからこの国でダンジョンに入りたい人間はみんな冒険者の資格を取ってギルドに登録するのさ。そして諸々の手続きやら貸し出したアイテムの使用料。なった後にも税金などで国は冒険者からお金を搾取するって訳だ」


……ほらなぁ~そんなこったろうと思ったよ。最近はラノベでもやたらとリアルな風味の諸事情が描かれてるよな。


ファンタジーにそんなん要らんだろ。税金関係とかさ。本当に要らんだろ。

しかしユーレシアは俺にニマニマな顔のまま更に話をする。


「しかし、しかしだ相棒。私の素晴らしい叡智を持ってすれば全ての煩わしさをまるっと無視してサクッとダンジョンに侵入し!勝手に稼ぎまくりな冒険者ライフが可能なのだ!」

「なっなんだとぉおっ!?」

『……マスター、その女の話は間違いなくアウトロー側の話だと判断します。甘い言葉にはご用心してください』


プレアが何か言ってるが今はそれどころではない!そっそんな夢の様な異世界生活が送れるのか!?本当に送れるのか!?。


俺はユーレシアに詳しく話を聞こうと……。


すると、ボコボコにされた冒険者が一人、また一人起き上がって来やがった。流石は高級冒険者ギルドに席を置く冒険者だ。

おそらくレベルが相応に高いんだろうな。


………ってそんな場合じゃないな。見ると負け犬冒険者どもが親の敵を見る時みたいな視線を俺とユーレシアに向けている。ギルマスの元アフログラサンは息子の敵を見る様な視線向けてきやがる。


ここでやり合うとマジで命の取り合いになるな、それも面倒だし何より今は冒険者ギルドよりも冒険自体に興味津々な俺なんだよ。


「プレア!ギルドの外に現れろ。ユーレシア!その簀巻き騎士を車に放り込め、こんな負け犬ギルドにもう用はない!ユーレシアお前の話にのってやるから話は車の中で聞かせろよな!」

『………了解しましたマスター』

「分かったぞ相棒!よいっしょっと……」


「んんーー!んんんーーー!」


そして俺達は冒険者どもがリベンジにくる前に冒険者ギルドを後にした。一体何しに行ったのか分からないよな。



プレアは当たり前の様に空を行く。


「それでユーレシア。その稼ぎまくりな冒険者ライフってのはどうやったらいいんだ?」


主にダンジョンに勝手に入れると言う抜け道について詳しく。


「ああっそれについて話すのはもちろん構わない、ただしな。相棒のこれからの異世界について一つ聞いて欲しい事があるんだ」

「………は?」


何をいきなり、まぁ空に上がったし以前見たいに遠くから魔法とかで攻撃される事は城の連中を脅す見たいな真似はしてあるからないと思うけど。


多分時間には余裕はあるし話くらいは聞けるか。


「……進む方向の指示は頼むぞ?話は聞くけど」

「分かった、このまま真っ直ぐだ。そして異世界での生活の話だが…」


謎メイドが横目で俺の方を見ながら話す。いつものニマニマはない、真面目な話と見た。


「相棒も知ってる通り私は相棒がチュートリアルでゲットしたあの指輪、『異世界契約の指輪』で相棒と契約して召喚された。相棒のお助けサポートとしてな、つまり私には召喚された時から相棒のサポートをする為の情報が知識として頭に入っているのさ」

「なるほど、じゃあユーレシアも俺と同じでこの世界の存在じゃ最初っからなかったんだな?俺はてっきりこの世界のなにがしを召喚したんだとばっかり思ってたわ……」

「フフンッ恐らく相棒の運命力……いやっ運が良すぎたんだろうさ、この私と契約出来るなんてどれ程幸運な事か……」

「そう言うのいいから、さっさと続きを話せよ」


俺の催促にユーレシアは話を続ける。


「まぁ要は私は相棒のやること協力するのが仕事のメイドだ、だから相棒のやることに力を貸すが、そこで一つこの世界での目的を明確にして欲しいのさ」

「………もっ目的?」


いやっいきなり異世界に放り出された俺にそんな事を急に言われてもよ~。


「そうっ目的さ、例えばさっきの冒険者ギルドに行ったのには冒険者なりたいから、なら相棒の目的は冒険者になって何かしたいことがあるのか?」

「……いや、ゲームやラノベだと異世界とかには大抵の場合は冒険者ギルドに行って冒険者になるって話の流れがあるし、それに……」

「それに?」


「やっぱり異世界だぜ?全く知らない未知の世界に来たってんなら……冒険?してみたいじゃん?」


三十路野郎が何を言ってんだってバカにされそうだから言わなかったのだが、中年でも冒険者とかに憧れるのさ、少なくとも俺はな。


………ただ冒険者っと言っても最近のラノベやアニメの影響で、冒険をしない冒険者ってのがあるけど、あれは違う……俺的にな。


例えば……。


採集しかしないって冒険者。

冒険はどこにいった。実家の隣に山菜取りが上手いジーちゃんがいるからそれの弟子にでもなれよ。


街にある諸々の雑用をする冒険者。

要は清掃とかだな、後はお使いとか何でも屋みたいなの、だから冒険はどうしたってんだよ。

ボランティアか?日雇い労働者か?。


モンスター狩りまくり冒険者。

狩人か何かにでもなれよ。それも厳密には冒険者じゃないだろうが、冒険とバトルをセットにすんなよ。

バトル少なめで楽な冒険に行きたいんだよ。


……とまぁこんな感じか?。


冒険者なのに冒険しない系って俺は嫌なんだよ、冒険者なら冒険してなんぼだろう。


だから異世界に行くことなった時に真っ先に浮かんだのは、ちゃんと冒険をする冒険者ってのになりたいと考えた。

それが俺の異世界での目的だ、


俺はユーレシアの方を見ながら話す。


「要は冒険者になるのは冒険をしたいから、誰も知らない場所に行ったり、見たことのないものを見たり……せっかくファンタジーな世界に来たんだぜ?なら巣籠もりしてその場所から動かないとか、観光とかって街ばっかり巡る、なんてのよりも見てみたい物が色々とありそうだろう?」


異世界にまで来て前の世界の延長線上みたいな生活なんて論外。

生きていく世界すら変わったのに、自分も色々と変わらないでどうするって話だ。


「……目的なんてしっかりしたもんじゃねぇけど、俺はこの世界には色々期待してるんだよ。やっぱり面白い物があるなら、おたくも一緒に見るだろう?俺の相棒なんだからよ」

「……………ッ!」


取り敢えず、今の俺に言えるのはそんなもんである。

計画性がないヤツだと、よくバカにされてたよ。悪いかよ、ハッ!。


俺の言葉にユーレシアはしばし無言となる。


「んんーーー!んんんー!」


何故か後ろ簀巻き騎士が騒ぎ出す。うるさいなさっきからんんんー!って。

そしてユーレシアはなんかとても上機嫌になって話し出す。


「フハハハッ!なるほどなるほど、流石は私の相棒だな。どうやらお前さんはつまらない方の冒険者ではなく、本来の冒険者になりたい訳だ!それなら私も安心して……


そう言うとユーレシアは前方に右手をかざした。

現在俺達はプレアで空を飛んでいる、ずっと真っ直ぐ進んでいたらいつの間にか王都を出て、森の上を走っていた。


『……あれは何ですか?』


なんか目の前の森の上にかなりデカイ魔法陣が出現、緑色の光を発している。


そして………。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!。


何やら轟音を立てながら地面の一部が陥没していく、イヤッ円形に土が退いていく様に見える。

一分も掛からないうちに直径ニ十メートル、深さは不明の大きな穴が現れた。


「………ナニこれ?」

『………分かりません』


呆れる俺とプレアにチートメイドが答える。


「この穴に飛び込めば、その先に冒険の舞台が待っているぞ。突っ込めー!」


メイドがアホな事を喋っていると、後ろの簀巻き騎士が口のロープをどうやってか外したのか何やらキレ気味に吠える。


「なッ!?まさか本気で『地下世界』に行く気か!……あそこは国の者や資格のある冒険者以外が行くことは禁じられているんだぞ!」


……ほほう。なるほどねぇー。

ユーレシアを見ると親指をグッと立てている。そう言う事か。


「よしっ!プレア、あの穴に突っ込めーー!」

『分かりましたマスター!』

「イケイケだな相棒!」


「ばッバカな!?『地下世界』への不法侵入は重罪になるぞ!それを貴様ら……!」


「ユーレシア!その金ぴかを黙らせろ!」

「分かったぞ!エアープリズン!」


「ッ!?………が……また、からだっが!うご…かない!」


うるさい雑音騎士を黙らせて大穴にダイブする。

当然周囲は真っ黒だから車のライトをつけて進む、ぶつかったりしたらプレアにキレられそうだからな。


「………………」

『………………』

「………………」


暫く真っ暗な空間を進む。


………やがて闇の先に微かに光が見えた時、待ってましたとばかりにユーレシアが喋りだす。


「……相棒、このバールリードと言う世界には、実はダンジョンが一つしかないんだ」

「マジでか?ダンジョンってファンタジーな世界なら幾つもあると思ってた」

「フフンッだろうな、しかしそのたった一つのダンジョンが有史以前から誰も攻略されていないのさ……」

「!?」

「そのダンジョンはとにかくでかくてなぁ、どれくらい大きいかと言うと、そこの金ぴか達みたいな王都の人間…っいやこの大陸の人々が『地下世界』なんて別名で呼ぶ程にな」

「……別名?って事は」


ユーレシアは相変わらずニマニマだ。


「そうっお前さんが冒険する舞台となるダンジョンの本当の名前は、地上の大陸と同等か、それ以上の広大さ故にこう呼ばれる!」


光が次第に大きくなり、そしてその光を抜け出す。


「その名も『迷宮大陸』。冒険者が冒険するならこれ以上はない舞台だ!」


光の向こうの景色を見た俺。


「……ハハッ地下空洞なんてのが実装されてるなんてな。流石は魔法とファンタジーな世界だな」


そんな言葉しか出てこなかったわ。




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