第11話「ユーレシア無双(2)』

謁見の間に向かう私の目の前に、 宮廷魔導師と名乗る男と魔法師団なる一団が現れた。


「我が名はサイモン!この国において宮廷魔導師を任される者だ!侵入者のメイドごときが随分と大それた事を仕出かしてくれたな!覚悟せよ!」

「我ら魔法師団の魔法の真髄を見るがいい!」


「……うるさい連中だ、ごたくはいいから掛かってくるといい」


「なっなんだと!?こっここ小娘っ!」


私の挑発に簡単に乗る宮廷魔導師とやらだ。


「くらえっ!ブレイジングアークフレ……」


「……マテリアルバインド」


無論私の魔法で身動きを封じてその辺に転がす、口も動かせないから喋ることも出来ない。


「…………ッ!?……………ッ!?」


「悪いがお前達の様な三下の相手などしている暇は無いんだ、じゃあな……」


魔法師団とやらも無力化してその辺に転がしておく。

もうすでにこの城の兵力の大半を魔法で無力化したが未だに敵はゾロゾロと出てくるので更に数十分程雑魚ラッシュが続いた。



それから城の兵士や騎士や魔導師を魔法で無力化したものを殴ったり蹴飛ばしたり投げ飛ばしたり色々とやらかしながら突き進む。


そして謁見の間と前に来た。


やたらと大きくきらびやかな両開きの扉が目の前にある。


「……魔法で閉じられてるな、生半可な攻撃魔法や物理的な攻撃ではそうそう突破するのは無理な代物だ……ただし」


それはあくまでも連中の力量での話でしかない。


「はいっドーーーーン!」


ズガァアアアアアンッ!


私の拳なら魔法を使うまでもなく破壊出来るのだ、何故なら私は最強で最カワなメイドさんだからな。


すかさず私はポンコツを使い相棒にここに来るように連絡を入れる。


「………車、聞こえるか、車さん?」

『………はあ?まさかそれは私の事ですか?言っておきますが私はマスターからプレアと言う名前をもらいましたからお見知りおきを』


ポンコツ中古軽自動車に名前?たまに相棒の感性が理解出来ない。


「はいはいプレアね分かった分かった。それより私の相棒に言付けを頼む、この城の中にある謁見の間という場所に来て欲しいと伝えてくれ」


(………私の?)


『…………分かりました』


そして思念伝達は終了。

……よしっ後は相棒が来る前に準備を整えておくとするか。


「たのもー!この城で一番偉いヤツを探しているから出てこい!この場で私と相棒に土下座させるから覚悟するがいい!」


謁見の間には随分と豪華な格好をした貴族どもが大量にいて恐れおののいていた。

連中を視線を無視して私は部屋の中央まで歩いて行く。


今回のサプライズは相棒と私に無礼を働いたこの城のバカども、その一番上の連中に謝罪として土下座をさせると言うものである。


人に頭を下げる事はあっても下げられる経験など皆無な相棒ならきっと喜んでくれるだろう。


偉そうなヤツは片っぱしから土下座させたいとか考えてるに違いないからな。


「我ながら完璧なサプライズプランだ、これで相棒もあのポンコツカーを相棒だなどとバカな冗談を言うこともなくなるだろうな、うんっ」


そんな事を言いながらほくそ笑んでいると、私に声をかけてくる手合がいた。


「ワシがこの国の王、ロードルア=ハインツ=グラントリアだ、さてっ貴殿は何者かそして何故にワシらに怒っているのかを教えて貰えないかね?」


「何故?貴様の城の人間がいきなり私や相棒を牢屋に放り込んだんだぞ?その上裁判も弁護士の無しで実刑判決まで下されたんたぞ。相棒なんて牢屋でそのまま餓死させ…」


私の回りの魔導師らしき連中が動いた。

魔法の詠唱、発動だ。

炎、氷、雷、風と言った様々な攻撃魔法が私に襲い掛かる。

無論全て無駄だがな。


「…マジックブレイク」


私は魔法を打ち消す魔法を発動した、雑魚どもの放つ全ての魔法は消滅した。


当然魔導師どもはビックリ仰天っと言った感じだ。あんぐりと口を開けたり間抜け顔をさらしている。


「更に。マテリアルバインド」


私の追撃の魔法だ。

不可視の力が回りの人間の身動きを封じる。


これでこの場にいる殆どの人間は無力化した、これでこの偉そうなヤツと話が出来る。


「私の要件は単純だ。今から私の相棒がここに来るからその相棒と私にこの場にがん首揃えてる王公貴族や兵士も騎士も魔導師もどいつもこいつも土下座しろっ以上だ…」


「………………」

「なっなんじゃとこの小娘がぁっ!?」


人間の王は無言、そして隣に立っている如何にも重要な役職についていそうな老いぼれが吠えている。

うるさそうなのでマテリアルバインド。速攻で黙らせる。


「……但し私も鬼ではない、貴様達にもチャンスをやろう」


「………聞こうか」


「今の場で動けるのは私以外だと三人。この城で一番強いのと二番目に強いのと三番目に強い奴らだ。そいつらが私に勝てたら全てなかった事にしてや…」


……また誰か動いている、最後まで話をさせる気はないのか、これだから人間は。

私を囲んで動けない城の人間の間をぬうように移動する人影が二つ。


その二つの影が人垣から飛び出してきた。

一人は白銀の鎧を着込んだ騎士で両手でハルバートを握っている。

もう一人は黄金の鎧を着込んだ騎士で剣を抜いてこちらに迫る。


(……ってかこの黄金は私達を牢屋に連行した一団を指揮していたヤツだな)


取り敢えずこの金ぴかからボコろうとした時である。


「おっお父様ーー!」

「姫!お下がりください!賊がいます」

「フッフローラ!」


やたらと響く声を上げながらこの謁見の間に飛び込んで来たのはこの国の第三王女だった。

流石の国王も驚いた顔をしている。


私からすればどうでもいい相手だ。


……しかしそれの後に続いて来た相手は無視出来ない相手だった。


少しくたびれたリーマンスーツに青い傘を差している三十路くらいの男。


相棒である。認識無効のスキルも私には何の意味もないからな、まるわかりだ。


ようやくご到着のようだな、相棒。


「………悪いが遊んでる暇はなくなった。直ぐに場所を整えるぞ」


「………何?」

「…これで、終わりだ!」

「死ね!」


私の言葉に疑問を持ったのは国王、残りのセリフは左右から同時に攻撃をしようとする金と銀の騎士から発せられた言葉であった。


私は左右の騎士どもに手のひらを向け、魔法を発動。


「エアロ・インパクト」


「ッ!?」

「くっ………!」



風の力によって騎士どもは吹き飛ばされ城の壁に叩きつけられる。


そして国王と王女、倒れた騎士二人それと従者にもマテリアルバインドを掛けて身体の自由を奪う。


……これで準備はな。


「それじゃあ、相棒も来たことだし貴様ら全員土下座だぁっ!詫びろ詫びろ詫びろーー!」


ザザザザザザザザザザッ。


私に吹っ飛ばされた騎士も国王も兵士も貴族もどいつもこいつも身体が勝手に動いていく。

私の魔法で身体の自由を奪われた連中の身体を動かすくらい造作もない。


私の号令一つでその場の全ての雑魚どもがキレイな土下座をした。


例外は私と相棒だけだ。


全員が額を床に擦り付けている。実にここの連中に相応しい姿だ。


「相棒、そろそろ姿を表せ。今のままじゃ私にも姿が見えないぞ?」


私の呼び掛けにやっと相棒が姿を表した。


「……………何これ?お前何やってんの?」


……?何故か軽く引いている様に見えるが、気のせいだなっうん。










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