第9話『お姫様とこそ泥』

時刻は深夜2時だが3時くらいの夜更けである。


そんな時間にも関わらず、彼女はガラス窓から見える王都の夜景を眺めていた。


物凄い可愛い女の子である、金髪碧眼で年頃は高校生低学年くらい、大きな瞳が特徴的なお姫様だ。

スタイルはまだ発展途中かな?将来は絶世の美女間違いなしである。


何故にお姫様かと言うとドレスを来ているからだ、かなり丁寧で細かい仕事だな。

あのドレスだけで結構な金になりそうだ。


………もちろん盗んだりはしないけどな。


「………………」


俺は生まれてこれまで

生まれが高貴だとか言う人間にあった事がない。

そもそも人生で出会った人間の程度なんて大抵の人間はたかが知れてる人間しかいるまい、っま成功者と呼ばれる社会の勝ち組連中もたかが知れるのは変わりないけどな。


しかし、このお姫様は違うわ。


俺見たいな底辺の負け組にもはっきり分かる程に立ち姿は堂に入っており、気品のある雰囲気を纏っている。

正真正銘の高貴な人間ってヤツだ。


マジもんの王女様である。


当たり前だがそんな身分の人にバカな事をすれば首が飛ぶ。既に色々手遅れ気味な俺だがお姫様にちょっかいを出すなんて一線は越えたくない。


しかしである。

………どうやら俺が世界を越える事でゲットしたスキルとやらはプレアが言うようなスキルを可視化する


「………なぁプレア。あの黒いモヤみたいなのなんだと思う?」


そうっ俺の目には本物のお姫様の身体にまとわりつく様にある、黒いモヤが見えた。


『……私も確認しました。残念ながら私にも分かりません』


プレアでも分からないか、見た目かなり不気味な黒いモヤだが俺の目にしか見えないのか当のお姫様は気にした素振りはない。


ってか、かなり抽象的だが俺にはあれが何なのか分かってる。


「あれはっ多分、死相ってヤツだ」

『……死相、ですか?』


そうっ何故分かるのかと言うと、何となくっとしか言えないところが情けないが。


恐らく俺のスキルと関係している筈だ、そのスキルが訴えかけてくるって感じだろうか?あのモヤみたいなのはろくなもんじゃない。


「恐らくあのお姫様、数日中に死ぬな」


根拠のない確信だが、間違いなくと断言出来る。

病気かそれとも対外的な要因かは知れないけどな。


さてっこれどうすんの?取り敢えずお姫様のスキルとか盗み見だな。


【フローラ=ハインツ=グラントリア】

【保有スキル】

【美と芸術の女神の加護】

【害意感知】

【上級剣技】


おおうっ上級剣技ってか。見た目と違って武闘派なのか?んで害意感知は、アレか?毒殺とか暗殺への対抗手段的な?。


なんて殺伐としてんだファンタジー世界のロイヤルフィールド。

上流階級の闇を見たな。


ん?それはそれとしてなんたらの女神の加護?っえ?この世界女神とかいんの?まぁ探せば本当に神とかいそうな世界観ではあるわな。

案外俺がここにたどり着いたのってその女神様の思し召しだったりして。なんてな。


俺はナイフを取り出す。


『?、インフィニティナイフで何をするつもり何ですか?』

「まぁやるだけやってみようかと……」


流石に十代中頃の美少女がお先真っ暗とはよろしくないだろ、本当に女神の加護とやらがあるのなら一発ここで奮発して欲しいよな、神様パワー。


ナイフの先から細い糸見たいなのが伸びる。この糸が俺の求める何かしらのアイテムに変わる筈なんだけど……。


「…………」


やがてナイフを持った手のひらの上に小さな箱が現れた。

大きさ的には指輪とかが入ってる小さいサイズの箱だ、デザインも中身が高級な物が入ってる箱である。


「………何でお姫様の死相を払えるアイテムをって念じてこの小さな箱が出てくんだよ」


中を確認する。

あっ中身はバラをモチーフにしたブローチだ。


中々に美しい芸術品である、売ったら高そうだな、知らんけどジュエリーとかにカテゴライズされそうな感じのブローチである。


『マスター、それでお姫様の死相が払えるのですか?』

「払えはしないだろうな、ただこれをあのお姫様に渡せればいざって時に役立つアイテムになっている筈だ」

『……どうやって渡すんですか?それを』

「多分、そこのテーブルにでも置けば、勝手に手にとってくれるかもよ?」

『……………』


プレアの無言がしんどいな。

けど俺的には本当に上手いことなると思ってるんだよ。


って訳でブローチ入りの箱を閉じて、部屋のテーブルに置いた。


そして、手を離れた瞬間である。


「………誰?」


え?速攻で気づかれた?。


『落ち着いて下さい。マスターの手を離れたあの箱に気づいただけです、インビジブルアンブレラの能力を看破したわけではありません』

「そっそうだよな、ふうっあせった……」


しかし驚いた事がもう一つ起きた。

窓からの光が当たらない影の部分、お姫様の近くの暗闇からいきなり人影が現れた。


「………人の気配は、ありませんでしたが。姫様テーブルに小さな箱が出現しました」

「…いきなり現れたぞこの黒ずくめ」


絶対にさっきまで誰もいなかった筈なのに普通に現れた、全身が黒い装備のニンジャ見たいなヤツだ、影の護衛的なヤツか?。

そして声が高い、どうやら女性のようだ。かなり若い。


しかし二人は敵とかではないらしく、突如として現れた謎の小箱に視線を向けている。


やがて黒ずくめとお姫様は話し出す。


「この小箱は一体?」

「お気をつけて下さい姫様、魔法による爆弾やも知れません」

「もうっ私の害意感知のスキルは貴方も知ってるでしょう?これからは害意も悪意も感じませんから安心して下さい」


さっき確認したスキルだな。

かなり有用なスキルだ、羨ましい。

従者は渋い顔をしているが構わず箱を開けるお姫様だ、怖いもの無しだな。


そして中を見て二人は目を見開く。


「……これは、ブローチ。ですか?なんでこのようなものが」

「これは、かなり価値の高い一品ですよ?王族の目から見ても、これ程細かい細工は滅多にお目にかかれませんね」


すいません。チートなナイフのスキルでホイホイって出した品物です。

ブローチを片手に女子トークに花を咲かせてる、さっきまで爆弾がどうとか言ってたのに。


『マスター。そろそろ頃合いかと』

「分かってるよ、そんじゃあずらかるか……」


女子トークを盗み聞きする趣味はないからな。


「ユーレシアの奴がどこにもいるか分からないか?さっさとあの謎メイドを回収しようぜ」

『…………………分かりました』


なんか物凄く不満そうな返事である。

もうここには用もないので、扉に向かう。それにしても何故に俺がたどり着いた部屋にお姫様がいたんだろうか。


「案外本当に女神様の加護だったりしてな……」

『…………?』


そして扉のドアノブに手をかけた時。


ズガァアアアアアンッ!。


いきなり物凄いデカイ音がお城中響き渡った。

思わずビクッてなった。

お姫様とその従者もビックリ仰天だ。


「いっ今の音は何!?」

「分かりません、もしや昼に侵入した賊の仲間が?」

「賊?その仲間が城に夜襲を?」

「まだ何も分かりません。事実確認をしてきます」

「ま、待って!私も行くわ、お父様が心配だわ!」


俺は急いで扉から離れる。二人は速攻で部屋から出ていった。


『………………マスター。あの女から言付けが今来ました、聞きますか?』

「………聞く」

『この城の謁見の間にいるから来るようにとの事です』


謁見の間?ゲームとかだと王様が主人公と会ったりするあの場所だよな。

何でそんな所にあの謎メイドは行ってんの?牢屋に入れられてんじゃなかったのかよ。


しかもそこまで来いって………。


嫌な予感しかしない。さっきの爆発音のせいで余計にそう感じるわ。


「……………ハァッ」


俺はため息をつきながら開け放たれた扉にむかった。
















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