第4話『異世界転移』
気がつくとそこは何処までも続く草原だった……とかではなかった。
まず俺達を乗せた車は高速道路を走る速度で走っていた。
すると視界を群青色の青い光で満たされて……。
そしてこの謎メイドの話によると俺達は今、本物の異世界に転移したのだ。
しかしここで問題が起きた。
それは場所だ。
俺達は異世界かどうかは知らんが確かに転移、つまりはテレポートをした。
何処にかって?。
実にファンタジーなゲームにありがちな街並みの街、そのど真ん中に。
高速で移動している車に乗ったままでな!。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!?」
「いやっはっーー!!流石相棒!イカれているなぁーー!」
周囲の街並みなど気にする余裕もない。
人、人、人、人、人、人、何か猫耳生やしたやつとか角を生やした奴等もいるがマジでそんな事気にしてる場合じゃない!。
必死で車のハンドルを切る。
人身事故なんて死んでも起こしてたまるかってんだ糞が!。
「うっぉおおおおおおお退いてくれよぉおお!」
はっ早くブレーキを踏まねぇと!。
このままじゃあ誰かを引き殺してしまう。
「ちなみに相棒。この王都は既に大混乱だからな?衛兵なりが後を追ってきてるから車を停めると取り囲まれてしょっぴかれるから急ブレーキはオススメしないぞ?」
俺はアクセルを緩めて急ブレーキはしないようにする事にした。
大丈夫、これだけ大きな音を出してるんだ。この街の連中も距離を取って道を開けている。
フッとしたはずみでミラーをちらり。
鬼のような形相で鎧を着込んだ連中が馬に乗って此方に来ていた。
俺はアクセルを全力で踏むことにした。
「うううぉおおおおおお!走れ俺の相棒ーー!」
「ちょっ!?お前さんの相棒は私だからな!?おいっ聞いてるのか相棒!」
ウルセーー!今は逃げる事が最優先何だから黙ってろ謎メイド!。
ゲーム見たいな世界の街だとしても、街のど真ん中で車を爆走なんてさせたら間違いなく重罪だろう。人身事故なんてしたら文明レベルが低い世界ではお約束の問答無用で首チョンパが待っている可能性もマジでありえる。
ここは一度街から脱出して、ほとぼりが冷めてからなに食わぬ顔でまたこの街に入り直すしかない。
その為にはなんとしてもここは逃げ切る!。
しかしそんな俺の考え等お見通しとでも言うように、馬に乗った衛兵みたいなのがこちらの進路に先回りをしてきた。
車じゃこの街の狭い横道に入る事は出来ない、そもそもこの軽自動車から見える景色じゃあどの方向に逃げれば街から出られるのかすらわからない。
俺は半ギレになりながら口を開く。
「やばっ!前の道を塞がれた!ふざけんなよ!こっちがどれだけ人をひかない様に運転してると思ってんだ!」
最早あの馬と鎧野郎に突っ込んで抜けるか、急ブレーキで止まって降参するしか道はない。
人を殺すのはイヤだし馬に突撃したらこの安物の軽自動車もまともに運転出来る保証もない。
ここまでか……。
「うん?相棒よこの車は空中を走る事が出来る様になったから上に逃げるといいと私は思うぞ?」
……………………は?。
「そんな事出来るわけ…」
「出来るぞ?」
「何で?」
「異世界を越えるっていう経験がこの車の経験値になって、経験値が貯まったからこの車のレベルが上がったのさ。そんでそのレベルアップに応じて新しいスキルを獲得したんだ」
「………………この軽自動車が?」
「この車が」
「……………………………」
なっ悩んでる暇はない!。
我が愛車よ!このイカれメイドの言葉に僅かでも真実があるのなら、お空を飛んでくれぇーーー!。
その時、フッとかすかに揺れた。
その時、俺は車の車輪がかすかに浮いたからの揺れだとは気付かなかった。
車が、俺の相棒が…………。
マジで空に浮きやがった。
◇◇◇
本当に空を飛んでしまったぜ。
何もない空中を道路走ってる見たいに、当たり前の様に走ってる。
「マジかよ俺の相棒が空を……おいおいっマジでファンタジーな事になってんぞ!」
「だからお前さんの相棒は私だろ!?こんな中古のポンコツカーが相棒ってどういう事だ!」
こっコイツ、なんて事をいうんだ。
確かにコイツは金がなかったから中古で買ったぞ?車体も所々傷とかあるし。
どうせ異世界に車で行くんならレンタルでもっとイイ車を借りパクして来ればよかったとかチラッとは思ったけども。
俺はハンドルを撫でながらボソッと答える。
「お前のお陰で助かった。社畜時代の時からお前だけは俺の心からの相棒だぜ……」
「………………」
おっと無言で無表情になったかユーレシアさんとやらは、多分だがこれ以上はヤバそうなので話題を変更する。
俺はハンドルを持ちながら眼下の街を見た。
「………すげぇっ本当にゲームの中に入ったみたいだな」
見える街並みは多くの建物が白いレンガを積んで作られた三階建てくらいの建物がかなりの規模で広大に広がっている。
街道が十字に通っていてこれまた白いレンガで石畳がしかれている、建物の屋根は青色だとか緑色で、ここがどこぞの島国では拝めない美しい街並みを拝める。
………て、何だよあれ?。
周囲より一段高い地形の場所に、偉く荘厳で巨大な建造物がある。
全体的に白い建物で屋根は青い。
あれは、間違いなく………お城だ。
「マジかよ、あれっ本当に城か……って事はここは王様がいるのか?」
ファンタジーでロープレなら必ずあるであろうその建造物に、圧倒される俺。
「おいおいっおのぼりさん全快だな相棒?そもそもさっきからここは王都だと言ってるだろ?」
ニヤニヤと人を小バカにした様な笑顔を向ける謎メイド、嫌な感じだ。
「わ、悪いかよ?仕方ないだろ?本物の城なんて俺はろくに見た事がないんだよ」
城なんて仕事で出掛けた地方のを遠目で見るくらいしかなかった、海外旅行なんてした事すらない俺は西洋的な城なんて写真とかでしか知らない。
「いんや、お前さんが楽しそうで何よりって話だよ、別にバカにしてる訳じゃないさ」
「ん、そっそうか……」
どうやら小バカにされた訳ではなかった様だ。
被害妄想だった様だ、反省しよう。
しかし本当に来てしまったみたいだな、異世界に。やべぇそう考えると少し興奮してきたんですけど。
流石に連中も城すら見下ろせる高度にまで追いかけて来はしないだろう。
安心感から冷静になった俺はユーレシアに一つ提案する事にした。
「謎メ、おたくはこれからどうすればいいと思う?よっぽど訳のわからない提案じゃなければ聞けるが」
「……ナゾメ?私はお前さんのやりたい事に付き合うぞ?それが余程のこと下劣な所業じゃなければだがな」
「……なるほど」
………なら俺はこの王都から離れる前に。
「よしっ!あの城を見に行こう!近くから見てみたいだよ!あのファンタジーの代名詞みたいな建物を!」
「了解だ相棒」
俺はアクセルを踏む、我が愛車は城に向けて走り出した。
そして城が大分近くになってきた。
下の街では恐らくだがてんやわんやの大騒ぎになっているだろう。
しかしそんな事は俺の知った事ではない、城を近くで見て回ったら速攻でおさらばしよう。
何しろ空を飛べる愛車をゲットしたんだ、インターネットなんて無さそうなファンタジーな世界なら後はどうとでもなる(っと思う!)。
「おおーー、本当にデカイ建物だな。こんな所に人が住んでるのか?」
「恐らく数千人くらいの人間が出入りしているな、王族以外にも宮仕えの貴族や騎士にも専用の部屋が割り当てられてるとか」
すげぇっ最早一つの町だな。ファンタジーなお城すげぇーー。
………そんな会話をしている時であった。
『警告します。現在この車両に高速で接近する飛行体があります』
「…………………」
「飛行体?なんだろうか……」
「…………………おいっ今の声は何だ?」
「え?この車のラジオからの声だぞ?」
知ってる、そこじゃない。
何で。
「な、ん、で!俺の車のラジオからあのチュートリアルの女の声が聞こえんだって話だ!」
「フフン何故だろうな?しかし例え車でもレベルが上がれば喋る様になっても不思議はないのがこの世界だぞ?」
『この声はあのチュートリアル時の音声データを使っています』
え?レベルアップで車が喋るのは普通なの?女の声が音声データ?なんだそれ。
『再度警告します。この車両に飛行体が接近中、恐らくこれは攻撃魔法です』
「こっ攻撃ま……」
ドゴォオオオオオオオオン!。
その時、軽自動車の後方から凄まじい音がした。
衝撃もとんでもねぇ、気絶しそうになったのを何とか堪える。
しかし。
『衝撃により損傷。操縦が一時的に不可能になりました、落下します』
「らっ落下しますって何処に……?」
傾いた我が愛車が落ちる先は……。
「そりゃあお前さん、あの目の前の城に決まっているだろう?」
「……………………………マジかっ!?」
ヒュルルルルルルルルルルルルルルル。
ドゴォオオオオン!。
そして我が愛車は俺達とともにお城の真ん中辺りに激突した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます