第21話 虎穴虎子

「大丈夫か」

「――駄犬にしては早かったわね。出されたお茶を飲む暇もなかったわ」

「御無事で何より」


 麻璃亜は右手を振った。

 小さな焔が北高生に絡みついていたくと、


「で、いつまで隠れているのかしら黒幕さん?」


 と言った。

 倉庫の影から現れたのはひょろ長い影の男。


北堀江きたほりえ若君わかぎみの策としては浅慮せんりょね。誰に入れ知恵されたのかしら?」

「……南天城みなみあまぎの当主は魔力の制御が未熟な出来損ないと聞いていたが」

「いつ情報ですのソレ。克服していますわ。貴方こそお家芸の傀儡の術式のクオリティが低いのではなくて?」

「ぬかせ!」


 北堀江の両手から糸のようなが伸びるのが、俺にも視えた。


「麻璃亜!」


 間に合わない。

 麻璃亜が糸に絡めとられる。


「これからが本番だ。貴様の術でしもべを焼き尽くしてやろう」

「どうかしらね」


 麻璃亜は試すような視線をこちらに向けつつ、炎の魔法を連発した。火焔の渦が俺を追い回す。守護者カーディガンのおかげで回避できるが、躱すだけが精一杯だ。俺の疲労が酷い。


「このままじゃジリ貧だ」

『策はある。我をお嬢様まで届けよ。忌々しい魔力糸を断ち切ってやる。小僧は北堀江ボンボンをやれ』

「――応」


 頷くと同時、真っ直ぐに疾駆。すっ飛んでくる火球を間一髪で躱し、前へ! 更に前へ!! ガールードが肩から離れる。奴が魔力糸を切断すると信じ、前だけを見て更に加速し、


「貴様!?」

「おらぁっ!」


 俺は北堀江にタックルを決めた。


「どけ!」

「誰がどくか!」

「ならばこうだ!」

「っ!?」


 全身が痺れる。

 動きが取れない。

 ……魔力糸か!



「そこまでになさいな」


 見ればガールードカーディガンを羽織った麻璃亜が

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る