第22話 気炎万丈


 麻璃亜は異形を晒していた。


 頭部には尖った獣の耳が、

 背には九本の尻尾が、

 不思議な輝きと共に揺らめいていた。


九尾狐ナインテイル……」


 北堀江が呻いた。


「今すぐ私の従者を解放すれば赦しましょう」

「舐めるなっ」

只人ただびと風情がかなうと思うか」


 俺の体が俺の意志とは無関係に飛び出した。

 殴りかかる。

 麻璃亜に。



 麻璃亜は微笑んでいた。



「よくやったわ。誉めてあげる。後は私に任せなさい」



 囁きと同時。

 麻璃亜の九本の尾から炎が放たれた。

 炎は俺を柔らかく包み込み、全ての魔力糸を焼き切った。

 魔力糸を切断された俺は勢いのまま地面に倒れた。もう、動けない。



「さあ、お仕置きの時間ですわよ」



 凄絶な笑みの麻璃亜は満天下まんてんか睥睨へいげいしているかのようだった。

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