10.「お祝いごとはみんなで」下
深い眠りに落ちる時、いつも思い出すことがある。
それは寒さ、空腹、誰かに害されるかもしれない恐れ、様々な形をした不安感。
こわいものから身を守るように体を丸めて布団の中で小さくなっていると、いつも瞼の裏に黄金色の光が見えてくる。
光は身体中を巡って、こわい気持ちや、おそろしい想像を全て遠ざけてくれるのだ。
──深い眠りに落ちるとき、いつも思い出すことがある。
それはこの惑星の美しさであり、大好きな騎士や人々の笑顔。
自分は守るために生まれてきたのだと、今なら信じられる。
大丈夫、わたしは人類の味方だと、夢のなかで繰り返した。
◇ ◇ ◇
窓が揺れる音がして、未来は目を覚ます。
真夜中、夜明けすら見えない時間に、未来は身を起こした。
寝台の上に手をついて、溢れ落ちてくる髪を手で抑える、起きることが何より苦手な未来なのに、何故だか目が冴えていた。
「オクティナ?」
未来は身のうちに向かって問い掛ける、半身が己のことを目覚めさせたのではと思ったからだ。
体の主導権は未来にあるが、時折オクティナはこの体を使って動く。
問い掛けには答えがなかった、オクティナはまだ眠っていて、未来だけが起きてしまったようだった。
もうすぐ冬も終わりとはいえ肌寒い、寒い夜は嫌いだから布団に戻ろうと、未来はもう一度寝台に身を横たえようとする。
窓の揺れは止むことがなかった。
風で揺れている、というには規則的で、音は強まっていて彼女は首を傾げる。
結局、気になって仕方がなくなってしまって、未来は寝台から降りた。
靴を履いて、椅子に掛けていた上着を羽織り、出窓の方へ近付いてみる。
月光で青白く光る、冷たい窓枠に触れながら外を覗き込んだ。
見えるのは桜の木、視線を下げれば裏庭へと続く道がある、見慣れた景色。
がたがたと揺れ続けていた窓は、突然ぴたりと静かになった。
不可思議な現象を解き明かしてみたい好奇心に抗えず、未来は踵を返して部屋の外へと向かう。
真夜中の廊下は寒くて、未来はちょっとだけ出てきたことを後悔した。
けれど歩けば歩くほど、言語化出来ないような予感があって、戻る気にはなれない。
誰のことも起こさないように、息すらも潜めながら階段を降りる。
正面玄関まで真っ直ぐ歩き、少し躊躇したけれど意を決して外へ出た。
扉を開けた先から吹き込んでくる真冬の風に髪が揺れる。
広がった視界に未来は息を呑んだ。
中庭の芝生が月明かりに照らされて輝き、風に揺らされて光の波を作っている。
ちらちらと輝きが舞う、まるで青色の絵画の中に迷い込んだかのような明るい夜だ。
美しい光景を前に立ち尽くした後、かじかむような寒さの中を未来は歩き出す。
風は規則的に吹き付けていて、つられるように未来は夜空を見上げた。
翡翠色の瞳に満天の星が映り込む。
美しい冬の空に一際、輝く星があった。
一条の星、金色に輝く星が一直線に落ちてくる、まるであの夜のように──。
未来は立ち止まって目を凝らした。
夜空から来るものが何なのか、一心に見上げながら見極める。
こちらに向かって落ちて来るもの。
その正体は一体の、金色に輝く竜だった。
竜の姿を見た途端、未来は笑みを咲かせて走り出したくなるのを抑えこんだ。
あの美しい竜の呼び名さえも、未来は知っていた。
嬉しくて仕方なくて、冷たくなった両手をぎゅっと握る。
手を振りたくて、駆け出したい、だけど驚かせてしまうかもしれないから我慢する。
約束通り帰ってきてくれた──その事実だけで飛び跳ねたくなるくらい嬉しかった。
竜の姿は見上げているうちに大きくなり、終いには音もなく庭へと降り立った。
金の翼が閉じる、大きな欠伸をする竜の背にはひとりの騎士が乗っている。
彼は宥めるように労りを込めて竜の背中を撫でていた、真紫の瞳は穏やかで、微かな声で語りかけてもいるようだ。
金色の竜へと未来は駆け寄っていく。
彼女の瞳は竜の背に乗る騎士へと向けられていた。
「忠明さん、おかえりなさい」
やっぱり彼は未来に嘘をつかない。
笑顔と共に掛けられた声にびくりと肩を揺らし、忠明は驚いた様子で未来を見た。
「ただいま、寒いだろ、どうした?」
「何か目が覚めて、」
気になったから見に来たんです、と続けようと思ったら、ぐいと邪魔をされる。
ぐいぐいと顎を寄せ顔を押しつけてくる金色の竜の名を、未来は呼んだ。
「イカヅチ、お疲れ様。
忠明さんを乗せてくれて、ありがとう」
きゅー、と返って来たのは巨体の割に可愛らしい返事だ。
未来が顎の下を撫でてやれば機嫌良くまた鳴く、そんな愛竜の背中から忠明は飛び降りてきた。
彼が身に纏う竜王騎士団の赤色が揺れる、彼らは名の通り精獣である竜を駆る者たち。
気難しく自分が気に入った相手しか背に乗せないイカヅチは、己の主に向かって口を開けた。
さっさとご褒美をよこせ、という態度を前にして、忠明は苦笑いしながら片手に下げていた餌袋に手を入れる。
「あとは竜舎に戻ってから食えよ、いいな?」
肉の塊をおやつとして貰って、イカヅチは機嫌良さげに身を震わせた。
体を覆う金色の鱗が月光を弾いて光る。
傍に立った忠明に未来は問い掛けた。
「イカヅチがここにいるってことは、出先から寮に直接帰ってきたんですか?」
「本部に寄ると間に合いそうになかったからな、ちょっと気を抜いた瞬間に次の仕事が入るんだよ、休みまで潰されたくない」
愚痴混じりに答えながら、忠明はイカヅチの首横を叩く。
それを合図に翼が広がった、一鳴きを最後にイカヅチは空へと舞い上がる。
自らの意思で騎士団本部に併設されている竜舎へと帰るのだ。
未来は忠明と一緒に金色の翼を見送った。
忠明は騎士寮へ入ろうと未来のことを促す。
「寒いの嫌いだろ、戻るぞ」
はい、と返事をした声は思いがけず弾んでいた。
白い息を吐きながら寮へと駆けていく未来のことを忠明が追いかける。
顔を見なくても分かるほど、彼女の後ろ姿は嬉しさでいっぱいだった。
誰も見ていない時だけ忠明は、分かりやすく安心した笑みを溢す。
──騎士寮には七名の現役騎士と、十名の幼子たち、そして寮母が暮らしている。
これで全員が無事に揃った、今日という日の為に。
◇ ◇ ◇
「みらいお姉ちゃん、おめでとう!!」
「おめでとー!!」
食堂の中に幼子たちの元気な声が響き渡った、周囲を取り囲まれて身動きが取れなくなっている未来は、満面の笑みで返事をする。
「みんな、ありがとう!
お姉ちゃんはとても嬉しいです」
おさげ髪が彼女に抱きついた、それを皮切りに幼子たちは次々に彼女に飛び付いて、はしゃぎ声を上げた。
引き倒されそうになりながらも未来は笑っている。
未来と幼子たちの賑やかな様子を見守っていた薫は、食卓の上にみんなで並べた料理の数々を見ながら微笑む。
「こうしてお祝いが出来て良かった。
約束通りみんな揃ったし」
「未来に嘘はつけないよ」
薫の言葉に笑いながら返したのは詩音だ、
「可愛い妹の為なら、何だってしてあげたいものね」
「私たちを繋げてくれたのは、未来だから」
笑い合う双子は、未来がちゃんと自分たちが贈ったぬいぐるみを飾ってくれていることを知っている。
ふと気付いたように、詩音があっと声を上げながら背後を振り向いた。
未来は幼子たちにお祝いの歌を贈られている最中だ。
「みんなは、未来に何かプレゼントしたの?」
「俺はちゃんとしたよ、他は知らないけど」
詩音の問い掛けに一番に答えたのは恵一だ、彼女に向かって笑い掛けたあと、彼は傍に立つ忠明に視線を送る。
「お前は未来に何か渡した?」
「渡したっていうか、約束したっていうか……」
恵一の悪戯をする三秒前みたいな顔を見て面倒くさそうにした忠明は、歯切れ悪く答える。
忠明の返答を聞いて、恵一は声を上げた。
「お前また物じゃなくて口約束あげたの?
懲りないねぇ!?」
「デカい声で言うなよあいつに聞こえるだろ……!」
騎士寮の中でも特に仲良しなふたりのやり取りを見て詩音と薫が笑っている。
詩花は溜息を吐いて幼子たちの方へ歩いていってしまった。
「いやお前さ、重たい感情を軽い物みたいにして渡すのやめとけって。
未来は受け止めちゃうんだから」
「別に重たくねえし他意はねえし誕生日祝いしてるだけだろ」
「わたしがどうしました?」
ごちゃごちゃ言い合っていたふたりの元に、いつの間にか近付いていた未来が問う。
言葉を詰まらせた忠明に代わって、恵一がへらっとした何とも言えない顔で答えた。
「未来にプレゼント、忠明は何贈る予定なんだって話をしててさ」
「ああ、それなら。
ちょっと前に竜の背中に乗せてくれるって約束しましたよ」
にこにこしながら彼女は嬉しそうに答えて、忠明のことを見上げた。
「そうでしたよね?」
「ああ、約束したな。
物も嬉しいけど、楽しいことを一緒にしたいって言われたから」
なるほど、彼なりに未来の要望に応えた形だったのかと納得した恵一は、聞こえるか聞こえないか分からない声量で呟く。
「ちゃんと理屈はあったのか、意外と」
「さっきからうるせえな……」
微妙な声量でも騎士の耳にはしっかり聞こえる、何が何だか分かっていない未来と迷惑そうな忠明に見つめられて恵一は笑った。
「応援してるだけだよ、なぁ未来?」
「……んん?」
未来にとっては何を言われているのだかさっぱりすぎる。
首を傾げた彼女の元に食堂の飾り付けをしていた雄大と龍海が声を掛けた。
「おまたせ未来、準備万端だよ」
「薫さんと忠明たちが作ってくれた料理に、みんなでやった飾り付け……未来が好きな物だらけになってよかった」
頭の中の疑問符が全て吹き飛んでいった未来は、ぱぁっと目を輝かせ、元気の良く、幼い子どものように言った。
「ありがとう、みんな大好き!」
空気を染め上げるような未来の明るさが、騎士寮に伝播していく。
彼女の笑顔を見たひとは、みんなつられて笑ってしまうのだ。
和やかな雰囲気のなか、大いに食べ騒ぎ、束の間の平穏に訪れた小さな幸福が、また一つ積み重なっていった。
◇ ◇ ◇
皆で作ったお祝いの日は、優しい余韻を残して終わっていく。
好きなものを好きなだけ食い尽くし、ケーキまで平らげてやっと満腹になった未来は、満足した顔で食堂の椅子に腰掛けていた。
「しあわせだぁ」
「よかったねぇ、未来。
……片付けは私たちでやっておくよ」
溶けていきそうな未来を見て微笑んだ詩音は、忠明に目配せをする。
そうだな、と彼は椅子から立ち上がり、未来に手を差し伸べた。
「食後だろうと未来ならどんだけ動いても平気だろ」
「あっ、そうだ、誕生日プレゼント!」
忠明の意図を理解し、未来は凄い勢いで立ち上がって……その割にはそうっと忠明の手を握った。
「何だよ、緊張してんの?」
「だってぇ!」
答えにならない言葉で何やら伝えようとしてくる未来のことを理解しようと、忠明はじっと彼女を見つめていたが、果たして伝わったのかどうなのか。
「ただにぃと一緒にとぶのぉ!?」
「みらいお姉ちゃん、いいなぁ!」
羨ましそうな顔でやってきた幼子たちに向かって、忠明は言った。
「もうちょっと大きくならないと、お前らを竜には乗せてやれねえんだよな」
「忠明さん手、手!
握ったんだから早く連れていって!」
繋がれた右手を忠明の左手ごと振り回し、未来が訴えかける。
忠明は不思議そうな顔をして。
「何照れてんだよ、もう子どもじゃないんだろ?」
「子どもじゃないから恥ずかしいんです!」
そう恥だ、未来はこの感情を知っている。
忠明は未来のことを未だに小さい子どもだと思っているから、平気でこういうことをするのだ。
未来の催促に忠明は、何が可笑しいのか笑いながら歩き出す。
片付けに取り掛かり始めた幼馴染たちが、笑いを堪えた顔でふたりを見送った。
「イカヅチをまた呼ぶんですか?」
「ああ、夕方に掛けては大体、この辺り散歩してるんだよあいつ。
大人しく竜舎にいる性格じゃないから」
忠明に手を引かれながら庭に出て、未来は上空を見上げた。
茜色に染まり始めた夕暮れ時の空、夜空とは違った美しさを見つめる。
忠明も同じように空を眺めていた、天候や風向きを捉える竜王騎士である彼にはこの空も、未来とは違って見えるのだろうか。
そういえば何で手を握られているんだろう、と未来は気が付いた。
別について来いとか言ったらいいだけなのに、ぷらぷら繋いだ手を揺らしてみると忠明が笑う。
「迷子にならないようにと思って」
「騎士寮の中でなるわけないでしょ!」
やっぱり子ども扱いだと未来は珍しくはっきりと拗ねた、誰かを揶揄ったりポーズとしてではなく、本気で心底から拗ねた。
笑うのをやめて忠明は懐から笛を取り出して吹く、その音は竜にしか聞こえないもの。
忠明の柔らかく、低い声が未来を呼んだ。
「あの雲海の中を飛ぶんだぜ、未来」
声音に含まれた無邪気さが、未来の機嫌と視線を上に向ける。
彼が指差す夕暮れ空の彼方には確かに、紅に染まる雲が大きく広がっていて。
あの中を飛んでいくなんて想像するだけで楽しいに違いない。
未来は満面の笑みになった。
呼笛の音に招かれて、金色の竜が雲の隙間から降りてくる。
高鳴る鼓動は今だけ、自分の分しか聞こえなかった。
「寒くないか、平気?」
「大丈夫!」
声を張り上げないと風に消されて聞こえない、そんな上空で揺れながら、未来は楽しくてしょうがなくて笑い声をあげる。
機嫌良さげに飛ぶイカヅチの背にふたりで乗って、忠明に抱えられながら未来は流れていく風に手で触れた。
上昇して雲を抜けるたび、光の粒子が視界いっぱいに広がって綺麗だ。
夕暮れ色の光を全身で浴びながら、未来はやっぱりこの惑星が好きだと思った。
──路地裏で見上げていた空も、流れ星に触れたいと手を伸ばした夜も、全部が今の未来を形作る原典となったもの。
寒いのは嫌いなまま、だけど忠明の体に包まれていると温かいから大丈夫だった。
子どもみたいで嫌だけど、昔から彼に抱えられるのは好きだ。
笑いながら色んな話をした、小説の感想だったり、彼がいない間にした幼子たちとの遊びのことだったり。
イカヅチの翼が雲を切り裂いて、雲海を貫き飛び出した先に、邪魔するものが何もない空が広がった。
忠明はいつも、こんな景色を見ながら愛竜と飛んでいるのだろうか。
手を伸ばした先で沈む太陽、燃え盛る紅に魅入り圧倒されて、未来は何も言えなくなる。
「綺麗だなぁ、いいなぁ……」
「羨ましいのか、太陽が?」
無意識に発していた言葉を忠明が拾った。
未来はちょっと迷ってから、彼になら良いかと口を開く。
「美しいものに触れたいのです、ずっと」
わたしは綺麗じゃなかったから、と言い掛けた瞬間、どくりと心臓が脈打って未来は胸を押さえた。
二つ重なって響く鼓動はいつも通り、痛くも苦しくもないのに。
「どうした?」
「ちょっと、感動しすぎて心臓が……」
微笑しながらそう言ったら、忠明は苦笑いをして未来の肩を軽く叩く。
「それ、頼むから止めるなよ、人類を背負う新しい希望になったんだろ」
「人類だけじゃないですよ、わたしは天才なので騎士まで救えてしまいます」
胸を張りながら言ったら、忠明は笑いながらイカヅチの手綱を引いた。
気ままに空を飛んでいた体が指示を受けて旋回する、そろそろ空の散歩も終わりだ。
「子どものころを思い出すな」
「一緒にイカヅチに乗って飛んだ日ですか、今日みたいに」
忠明の胸に体を預け温もりを感じながら、そういえばと、彼女はなんて事無いような声音で問い掛ける。
「あの時、約束したこと覚えてます?」
背後の気配は微動だにしなかった、別に動揺もしないし他の感情を抱く様子もない。
未来が察せなかったという可能性が高いけど、忠明はいつも通りに聞こえる声で。
「悪い、何だっけそれ」
放たれた言葉に、未来は思わず吹き出す。
「……そうですか、忘れましたか。
そういうことにしておきます」
未来の声は風に掻き消され、さて。
聞こえたのだかどうだか返事はない。
イカヅチは緩やかに降下して、騎士寮の庭が見えてきた、楽しい時間ほどすぐ過ぎる。
形のない贈り物は思い出となって、未来の中に留まり彼女を生かしていくだろう。
この冬、未来は十五歳になった。
明日からはまた、血と埃まみれの戦いが彼女のことを待っている。
◇ ◇ ◇
寝台に腰掛けて、未来は相棒である細剣を眺めた。
白鞘に収まった剣は薄く軽い、柄には未来の瞳と同じ翡翠色の宝石が嵌め込まれている。
騎士寮に来たばかりの頃、入団と同時に翔から貰ったこの細剣で、未来は今まで戦ってきた、これからもそう。
これを誰よりも上手く使う才能があるから、第一階級となれたのだ。
未来は忠明のような最優の称号に相応しい騎士になりたい。
そして雄大のように誰もが憧れる存在になって、詩音のようにひたむきで、詩花のように真っ直ぐでありたい。
龍海みたいに誰からも頼られて、恵一みたいに相手の機敏に聡くありたい。
そしていつか、薫と翔がしてくれたみたいに、どん底にいる誰かを引き上げて教えてあげたいのだ。
この惑星は広く、とても美しいことを。
『お前の憧れは大勢いるな』
細剣の柄を撫でていた未来は、聞こえてきたオクティナの声に微笑んだ。
「オクティナもそのひとりだよ。
……憧れっていうか、もう自分の一部って感覚の方が強いけど」
『そう言われるとこそばゆいな。
だが、悪い気はしないよ、ありがとう』
未来は笑みを浮かべて仰向けに寝転んだ。
黄金色が揺蕩う瞳で天井を見上げ、明日からのことを考える。
平穏よりも戦いの方が日常で本業の騎士である未来は、あまり怖いとか考えない。
考えるのはいつまた、この穏やかな休日に戻って来れるかということだ。
「明日から、またよろしくね」
『もちろんだ、お前の魂は私が守る』
頼もしいなぁ、と言って目を閉じる。
お腹いっぱい好きなものを食べて、大好きなひとたちと思う存分触れ合えて、本当に幸せな休暇だった。
幸せだからこそ戦わなくちゃならないんだ、と未来は知っている。
「わたしは、人類の味方」
おまじないのように、祈りのように自分に向けて彼女は唱える。
「わたしは完璧、最優の騎士」
己に言い聞かせる未来の言葉に、オクティナが答えた。
『私たちは人類を守る。
大切な誰かと生きていく為に』
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