2-裏-7

 温泉から上がった少女は、やはり俺の目をまったく気にしていないようで、手で胸を隠すでもなく、むしろ見せるかのように俺の真向かいに立って腰に両手を当てていた。

「ねえ、私の体を見て、なんか思いません?」

 俺はどうしようもなく目線をそらしつつ、綺麗なんじゃないですか、とぼそっと呟いた。

「あー、そう言うのじゃなくてですね、君も風呂から上がってるんですから、気づいてくださいよ」

 首を傾げつつ、自分の体に目線を下ろしてようやく、おかしなことに気がついた。

 身体が濡れていないのだった。もちろん、タオルやなんかで水滴をぬぐった訳でもない。ただ、温泉から上がっただけで体が乾いていた。

 改めて少女の体を見れば、俺と同じく、その体には一滴の水もなくて、髪も濡れておらず、サラサラだった。

「端的に言えば、これが、私がお風呂に入るために君を殺さなければならなかった理由ですね。つまり、私たち魔術師は、存在するだけで周りの物体を分解してしまうという訳です。ですので、もしも君が自分の魂を認識する前に私がお風呂に入ろうものなら、私の魔力が君の魔力を侵食して、君が遠からぬ未来に死んでしまうということになってしまっていたんですよ」

 スラスラと言い終えると、ようやく、少女は服を着始めた。それに習って、俺もいそいそとこの世界に来てから着ている服を身にまとう。最後にローブを羽織ろうとしたところで、ひょいと横から伸びてきた手にローブを奪われた。

「ところで、君のこの黒いローブ、何製だと思います?」

 言いながら、少女は川に沿って歩き出す。小走りで追いつきながら、布製じゃないんですかと、後ろから声をかけた。

「まあ、そうかもしれませんが、私が言いたいのは、どういう魂もとい魔力が宿っているかということです」

 少女の隣を歩きながら、視界とは別のところに世界で、ローブに宿る魔力をさぐる。のは、自分の魂と同じの魔力だった。

 思わず、えっ、と声が出る。そんな俺をちらりと見てから、後ろから少女はふわりと俺にローブを掛けた。すると、ローブの魔力と俺の魂が行ったり来たりして循環しているのが

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異世界と現実のジレンマ 沫茶 @shichitenbatto_nanakorobiyaoki

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