第21話文化祭11

「貴方はこんな格好で何をする気?」


「僕が何したいかって?」

夏と秋の気候が混ざったような夕方。

赤トンボの羽に太陽光が反射して煌めいている。

そんな河川敷に声が響く。


「そうよ。貴方はいつも肝心なことを言わないからね」


「僕はただ見つけたいだけだよ。旧友をね」


「貴方……友達いたの……」


「こう見えて友達思いなんだよ僕」

ちらっとウィンクをして怪しげな笑みを浮かべた。





「うっ……」

この愛くるしい顔で二日酔いか。

しっかりと気持ち悪そうだ。

晴明の評価を改めないといけないかもしれないな。

空達にも迷惑をかけたし……


これは昨晩の事である。

「あれ?まだ晴明は帰ってないのか」

文化祭の事で少し帰るのが遅くなってしまったから晴明が腹を空かせて倒れていると思ったらまだ家にいなかったのだ。

空達と一緒にまだ見回りでもしているのだろう。

そんな事を思っていた矢先に晴明は空に背負われて家に帰宅した。


「ごめん……」

空が何やら暗い顔をしている。

どうかしたのだろうか?


「あり…が……と?これどうしたの?」

最初は疲れて寝ているだけかと思った。

しかし何やら酒臭い。


「雪が与えてしまったみたいで……」


「連れてきてくれてありがとう」

この猫どうしてやろうか。そんな事を内心考えていた。


「隆……顔怖いよ……」

どうやら顔に出てしまっていたようだ。



「そう?この周辺はどうだった?」


「特に大きな異変は無かったかな〜」

あんまりしっかりと見れてないけれど……


「そっか。また何かあったら言って!」


「分かった。ありがとう!」

そう言うと手を振りながら家の方へ帰っていった。


「さてと……おい!起きろ!」


「ん〜わしゃはもう呑めんぞ〜」

寝ぼけてやがる。

水の中に落っことしてやろうか。

それで溺れた所を尻尾を持って振り回してやろうか。

こんな事考えていると動物保護団体に何か言われそうだな。


「とりあえず寝かしておくか。そのうち起きるだろう」



「……」

一切起きない。

まるで死んでいるかのように……


「グー」

死んでいるか……


「うう……」

ピンポイントで音を発するなよ。

どうでもいいけれど。

もういいや。


「隆の変態〜」

コイツ……

本当に寝てるんだよな?

起きてたら御飯抜きにしてやってるところだった。

我ながら優しすぎるか?


そこからは一日気を張っていたせいかあんまり覚えていない。

恐らく御飯を食べて風呂に入り就寝支度を整えて寝たのだろう。

そして朝起きたら晴明はこの状態だった。

こんなもの朝から見せられたら怒る気が失せる。

本当に大丈夫なのだろうか……

今日は何か起こる気がする。

気のせいであれば良いけれど……










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る