第22話文化祭 夢

「君は相応の相手じゃないだろう」

髪と背の高い。それでいて体の線と眼が細い男がわしゃの前に立っている。

その横に泣き声を上げるの小柄な女性が蹲っていた。

見たくない。これはわしゃが忘れようとした記憶……


この男と出会った時、こんな事になるなんて思わなかった。


「晴明様とあの男はどちらが上だと思う?」


「やはり晴明様だろう!」


「もしかしたら……」


「晴明様!居られたのですか!」


「そんなに慌てるな〜わしゃはどっちが上なのかなぞ興味の欠片もないんじゃ」

全く……

じゃが会ってみたいものだな。

そして談笑なぞできれば良いものじゃが。

会う機会は間もなく訪れた。

望まぬ形で。

上の人間が楽しみ欲しさにわしゃと蘆屋道満なる陰陽師と対決させたのだ。

そして負けた者が勝った者の弟子になるという。

どうしてこんな退屈で子供じみたことをするのだろう。

それにしてもここまで透き通っている気は……

そして一切揺るがない眼がこちらを見つめている。

わしゃより数段上かもしれない。


勝負は3本。

・舞

・組手

・中身あて


第一勝負の舞。

これはかなり疲れる。

約一時間程舞を続けなければいけない。

水が角張った動きをしないのと同じように流水のように滑らかに力強く舞う。

そんなわしゃとは対象的に舞っている最中に見た道満は荒々しくまるで狩りをしているかのようだった。

憧れた。周りの拍手はわしゃに送られたもので間違いない。

じゃが強さや荒々しさは別の美しさがある。

それでも判定はわしゃに手が上がる。

皮肉なものだ。


そして第二勝負。

あっさりと負けた。言い訳のしようもない。

身体の使い方がお手本のようだった。

強い……

躱すだけならなんとか躱す事はできるが掴まれたら最後。地面に転がっていた。

道満の顔を見上げると道満は目をつぶり頭を下げる。

そして最後の第三勝負。

いつも通り五芒星を使い中身を当てる。

道満を見ていなかったが同じような方法で中身を予測した。


「鼠が十匹」


「僕は柚子が十個」

周りがわしゃをみて溜息を吐いている。

外したか。


「え?」

審判役の男の声につられ中を覗くとなんと鼠が十匹入っていたのだ。

上の人間は頭に謎を浮かべている。

どういうことじゃ?

何かおかしい……


「これからよろしくおねがいします」

横を振り向くと道満が頭を下げている。

この時察したのだ。

最後のお題。

おそらく道満が中身をすり替えたのだ。

そう考えると驚いていた上の人間の態度に説明がつく。


「おい!何故じゃ!」

屈辱・悔しさ等が一気に到達した。

馬鹿にされている感覚だ。

そしてこのわしゃの言葉にかなしそうな顔で道満は笑って言った。


「この後、僕と少し話しましょうか」


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