テイルメイカー

原作は下記になります。


https://kakuyomu.jp/works/16816452218966850457


 文章としては綺麗だなと感じる部分が多いのですが視点がかなりブレてしまっています。 三人称なのに一人称のようになってしまっている部分が多くもう少し統一感がほしいところです。




 カラカラと、どこか懐かしさを覚える軽やかな音とともに格子戸が引かれ、ドアチャームの透き通った音色が控えめに響く。

 微かに花の香りを纏う空気とともに店の中へと入ってきた、二〇代とおぼしき男。 引き戸を閉めると首を巡らせ、物珍しそうに古民家風の店内を見回す。


 他に客のいない店内はしんと静まり返っている。 年月を経た家屋に特有の、かすかな潤いとひやりとした空気が、寺のお堂のような静謐せいひつさをかもし出していた。


 踏み入った足元は三和土たたき仕上げの土間。 右手に延びた先が、L字に折れて壁の向こうに続いている。

 壁というか、正面の上がりは下半分が板戸になった障子で仕切られ、中央に空けられた一面から奥の板間がのぞいていた。


 周囲の壁は漆喰。 頭上は吹き抜けで、太く頑丈そうな梁が渡されている。 自然と付いたであろう深い色合いが、これまた年代を感じさせた。


 レトロな硝子電球がリズムよく配されているが、高い天井のどこに明かり取りがあるのか、差し込む午後の陽光が漆喰の白壁に反射し、室内を柔らかな自然光で満たしていた。


「いらっしゃいませ!」


 男から見て左手に据えられた鉢植えの観葉樹の向こう、暖簾をくぐってスタッフらしき年配の女性が姿を現す。

 化粧っ気がなく、クセのない黒髪を高いところで一本結びにしている。 地味な生成のシャツと黒っぽいラップスカートがギャルソン風と言えなくもない。


 店内の素朴な様子と相まって、カフェというよりむしろ、田舎の親戚宅にでも迎え入れられたような心持ちに、男をさせた。


「ご予約いただいたお客様ですね?」


 柔らかな笑みとともに問いかけられ、男は名乗る。


「はい、お待ちしておりました。 お時間ぴったりでしたね。 お上がりください」


 ご案内しますね、と先に立つ女の後について、男は年季が入り磨きぬかれたかのような木製の踏み台に足を掛け、奥へと歩を進めた。


 使い込まれた杉板をそのまま天板に使った、華美さのないシンプルなダイニングテーブル。 そこにコトリと湯呑みが供され、しのぎ地の茶碗から香ばしい香りがふうわりと漂う。

 茶請けには丸い小ぶりのぼたもちが二つ、つぶ餡あんときな粉が寄り添っている。


 はす向かいの席に腰掛けた女に、自家焙煎だという焙じ茶を自信に溢れた様子で勧められ、男はこれに口をつける。 口に広がった味わいに、男の口から思わず小さな吐息が漏れる。


 茶の味わいなど気にしたことのない男だが、言われてみると、いつも口にするペットボトルより、少し濃いめに淹れてあるように感じた。

 折角なのでぼたもちにも手を出すと、これが甘すぎず、むしろ塩気を感じさせる。 甘さ自体は控えめにしながら塩で際立たせる、男にとって好みの味だ。


──こだわりの自家製カフェ……期待してなかったけど、これは当たりかも──


 春のお彼岸の頃に提供しているのが牡丹ぼた餅、同じものでも秋だとおはぎ──男の様子に嬉しそうに説明する女に、男は感心したように相槌を打つ。 諸説あったと記憶しているが、季節変動説をるこの店ならば、秋の彼岸の頃に再訪すれば、お萩として再会できるのだな、と男は記憶の端にメモを残す。


「ところで、まだオーダーとかしてなかったと思うんですけど。 これ、サービスですか?」


 お通し的なものかと男が訊ねると、きょとんとした様子で女がまたたく。 その表情に、胸の内で相手方の推定年齢と、提供されるであろうメニューの期待度を少しく下げた。


「ああ!」


 思いついたと、女はパンッと手のひらを合わせる。


「そうだ、うっかりしてました。 ご紹介の方から、説明は任せると確かに承うけたまわってます」


 完全予約制の異世界カフェ、なんて怪しげなお店、予備知識なしでお越しのお客さまは、まずいらっしゃらないんですよ、と女は軽やかに笑った。


──怪しげって……わかってるなら、なんでその名前?!──


 さすがに口には出せずに心の中で絶叫する男を脇に、女はいそいそとパンフレットらしきものを書類箱から取り出す。 その様子を横目に、叔父のニヤリと笑う悪い顔が男の脳裡にちらりと浮かぶのだった。



 本日のお客さまは、先日ご利用になった方からのご紹介。 甥御さんだそうだ。


 なんでも、元気がなさそうなので様子を見てやってほしいと郷里の親御さんに、よろしく頼まれたのだとか。


 そういう事情で、ご紹介くださったのなら、先のご利用は楽しんでもらえたのだろう。 だったら嬉しいな。


 今日は、是非その甥ごさんに、ぴったりの転生プランをご用意したい。


 ここにカフェを構え、お客さまをお招きするようになって、一年。


 ようやく軌道に乗り出した異世界カフェ、ひとときの時間をいただいて異世界にご案内するテイルメイカー業は、試行錯誤の連続だった。





 まず序文で『カラカラ』『チリリン』と一文に擬声語が複数使われていることが気になりました。 間違いではないのですが、落ち着いた雰囲気を表す文なのにくどく、美しくなくなってしまっていると感じます。



『シンとした』についてはマンガの書き文字で『シーン』なんて書かれるのもありましたが、日本語として書くなら平仮名で『しんとした』とした方が美しいです。 もちろん、一人称のコミカルな作品であれば片仮名もいいのですがこちらの作風だとそぐわないと思います。



「壁というか、正面の上がりは下半分が板戸になった障子で仕切られ、中央に一面が空けられて、奥に板間がのぞいている。」

 この文は「障子で仕切られ、中央に一面が空けられて」のところが重複になりかけていて少し引っかかります



「化粧っ気がなく、クセのない黒髪を高いところで一本結びにし、地味な生成のシャツと黒っぽいラップスカートがギャルソン風と言えなくもない。」

 ギャルソン風と言えなくもない、と指しているのが服装の部分であるなら、これは文章を切った方が通りがよくなります。 その前の部分も合わせてギャルソン風と言えなくもない、としているのなら原文のままでいいと思いますが私は違うと感じたので修正しています。



「こだわりの自家製カフェ……期待してなかったけど、これは当たりかも」

 三人称の地の文なのに完全に内心の呟きになっていますね。 ()や私の場合は──を使うことが多いですが地の文と切り離すべきです。 三人称の地の文で三点リーダーを使っているようにも見えてなおさらおかしく感じます。



 最後の店員の独白のような部分。 ここで「だったら嬉しい、と頬を緩める」とありますが、これがまた統一感がなくなっています。 独白ならば独白に徹するべきだなと。



 全体的に細かい部分の修正で大きくは変わっていません。 ただ視点のブレがやはり大きな問題だったなと思います。 説明以外の箇所も細かい修正はありますのでご確認ください。

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