Abyss

アビス

〈時刻1501時。中華人民連合、明貴ミングゥイ市〉

 中華人民連合国の東部に位置する蒼東ツァンドン省。アリュエット・マイティ・サービス関連の企業がひしめき、それに合わせるかのようにトクロス、フィセム、アダマス・ハイ・インダストリーズといった世界企業連盟加盟企業が立ち並ぶ。多数の大企業誘致により、雇用問題が大きく改善した蒼東ツァンドン省は当然のごとくインフラ、メディアが世界企業連盟の支配下に置かれることとなった。そもそも広大な中華連全体を支配するのに、中華連全土を手中に収める必要はないのだ。

 エネルギー、環境、医療、インフラ、通信、物流、食品……人々の生活基盤は企業によって支えられている。企業の活動なくして国家など成り立たないのだ。今や国際連合(International Union)よりも世界企業連盟の方が世界に影響力を持っていると唱える学者や記者もいる。事実、イズニティでは各方面への配慮があったとはいえ、国連軍として派遣されたのは民間企業アリュエット・セキュリティ・サービスである。


『この番組は世界の生活を守るアリュエット・マイティ・サービスの提供でお送りいたしました』


 世界最大の民間企業〈アリュエット・マイティ・サービス〉は世界企業連盟のトップ企業というのは周知の事実だが、あまり知られていない話として国際連合のスポンサーでもある。国連は加盟国からのはんしゅつきんによって運営されているが、はんしゅつきんは政治的問題に左右されやすく、中立性の問題も挙げられる。これを解消するため、国連は世界企業連盟からの膨大な支援金を受け取っている。もちろん、AMSの資金提供額は断トツでトップ。


『子供の見守りから街の警備まで。生活の安心をお約束するアリュエット・セキュリティ・サービスです』


 そんな大企業幹部と犯罪組織〝ブラックレインボー〟が繋がっているとなれば、極めて厄介な状況だ。そもそもブラックレインボーは最近知られるようになった犯罪組織である。急成長し続ける背景にAMSの後ろ盾があったとしても不思議ではない。ブラックレインボーの資金力は従来の過激派組織、テロ組織とは比較にならず、SVRは多くの著名人や政治家を取り込んでいると政府へ警鐘を鳴らしている。


『マイクロマシンによる免疫治療法を紹介。トクロス社は世界で初めてマイクロマシンによるがんの治療法を確立しました……』


 ブラックレインボーという犯罪組織を調べ上げるため、ロシアの極秘特殊部隊スミルノフはエカチェリーナ隊長を筆頭とし、八名から成る選抜チームを中華連へ派遣した。友好国とはいえ特殊工作部隊を中華連へ送り込んだロシアだが、大統領はこれを認知していない。スミルノフはGRU所属という立場上、とくせいと独立性が高く、大統領への報告義務がないためだった。言い換えれば国の後ろ盾を受けられない今回のような極秘任務にはスミルノフがうってつけであった。

「どこもかしこも大企業の看板ばっかりだわ。もうすでに敵だらけって感じ」

 マリナは現地のスミルノフ隊員ヴィッキーと接触するため、大衆食堂に来ていた。

 木を隠すなら森の中。人を隠すなら大衆の中。実に分かりやすい。

『もう少しで待ち合わせの時間よ』

 左耳のイヤホンからはヴァレンティーナの声が聞こえる。

「見つけた」

 こちらに歩み寄って来る女性。少々、日焼けをしているが間違いない。ヴァレンティーナ本人だ。

「久しぶりマリナ。元気にしてた?」

 ヴィッキーは対面の席に座り、店員に八宝菜ハッポウサイを注文する。

「ええ。少し暑いわ。貴方あなたはこっちでの仕事慣れたの?」

「ばっちり。給料も最高に良いし、何より新しい刺激がたくさんあって楽しいわ」

 ヴィッキー・スタロンデス、スミルノフ所属で階級は上等兵。近年まれにみる非常に優秀な隊員で、特に語学力、コミュニケーション能力、決断力に定評がある。加えて、暗号解読やハッキングといった特殊スキルも高い。まさにAMSへ潜入する人材として適材だった。

「そうそう。マリナに渡すものがあった」

 元々、スミルノフではいくつかの大企業へ工作員を潜り込ませており、いざという時の国家間トラブルの解決手段として外交カードになるよう準備している。

「はい、これ」

 ヴィッキーがマリナへ手渡したのは厚みのある茶封筒。この中には内偵の報告書が入っている。最重要書類だ。マリナはこれを受け取りに来たのだ。

「ありがとう。大事にする」

「OK、確かに渡した。あとはおいしいご飯でも食べましょう」

 任務とは無関係の雑談を一時間ほどし、マリナとヴィッキーは店の外で別れた。

「これより帰投する」

 人々の混雑に紛れ込み、マリナはセーフハウスを目指す。

『尾行、警戒してね』

「問題ない」


《選抜チーム構成員》

 エカチェリーナ少佐、マリナ少尉、アーニャ少尉、ヴァレンティーナ軍曹、スヴェトラーナ軍曹、エレン伍長、アイミス上等兵、カテリーナ上等兵



〈中華人民連合、明貴ミングゥイ市(某所)〉

「いいか、ブラックレインボーとAMSの幹部を捕える。必ず生け捕りだ。護衛は始末していい。そこまで抵抗があるとは思えないけど、危険な連中だからな」

「了解」

 エカチェリーナ率いる選抜チームはAMS幹部とブラックレインボー幹部が落ち合う建物を特定していた。アリュエット・マイティ・サービスが建設中の新しいオフィスビル。ここの四階で彼らは秘密の会合をする予定だ。

「アイミス、エレンは脱出路を確保。マリナ、ヴァレンティーナ、カテリーナは北口から。残りは私とともに南口から突入する」

 ヴィッキーによる調査報告書により、AMS幹部とブラックレインボー構成員に関する詳細情報が手に入った。結論から言えばAMSはであり、ブラックレインボーと接点がある。それもここ一、二年という話ではない。AMSは民間企業でありながらブラックレインボーとしての活動も行っていた。スポンサーとかビジネスパートナーというレベルではないのだ。関係でいえばブラックレインボーの一部がAMSと言った方が正確である。邪魔な政治家や著名人、競合企業を排除してきた事実もあり、AMSが急成長をし続けるのはブラックレインボーの力もあるのかもしれない。

 ここで気を付けなければならないのは世界企業連盟の存在である。AMSとブラックレインボーが密接な関係なのは判明したが、その他の大企業がブラックレインボーと関係があるのかは不明だ。もしかすると世界企業連盟という組織そのものがブラックレインボーによって計画され、創設された可能性がある。これは決して楽観視できない。


 建造中のオフィスビル。まだ陽は高いが本日は工事が行われていない。工事現場には警備員が何人かいる。これは工事現場へ一般人が入らないように誘導するためで、特に武装しているわけではなかった。

 スミルノフは北口と南口の二方向から同時に敷地内へ侵入。警備員らを背後から近づき、口を布で塞ぐとともに手足を素早く拘束用バンドで縛り上げる。これで声も上げられず、身動きもできない。

「こちらカサートカ、警備を無力化。これより中央階段へ向かう」

『了解。こちらは非常階段を上がる』

 建物は防音用シートと塗料飛散防止用のシートで覆われ、外からほとんど見えない。

 まさか武器を持った者達が工事現場にいるとは誰も気が付かないだろう。

「カサートカ、二階へ移動する」

 中央階段に見張りはいない。カテリーナ伍長、ヴァレンティーナ軍曹、マリナ少尉の順で階段を慎重に上がっていく。

「二階に到着した」

 扉は付いていないが、部屋は出来ていた。ここから部屋のクリアリングをしていかなければならない

『誤射に注意しろ。こちらも二階にいる』

「了解」

 カテリーナが部屋入り口のすぐ横に移動する。それに続いてヴァレンティーナ、マリナも配置についた。そしてマリナがヴァレンティーナの左肩を叩き、ヴァレンティーナはカテリーナの左肩を叩いた。これを合図にカテリーナは部屋へ突入。残る二人も前に続いて部屋の中へ。

「クリア」

「よし隣だ」

『クリア』

 この調子で二階の部屋をスミルノフは調べていき、敵がいない事を確認した。

「カサートカ、三階へ移動する」

『了解。こちらも移動を開始する』


 三階。二階と同様にクリアリングを実施。やはり誰もいない。

「カサートカ、四階へ移動する」

『さて、ここからだ』


 四階へと階段を上るカテリーナ。だが、四階へ辿たどり着こうとしたその時、カテリーナは左手をこぶしにして「待て」のハンドジェスチャーをした。

 そしてカテリーナが口を開いた。

「ブービートラップがある」

「なに……」

 予想外の言葉にヴァレンティーナは思わず聞き返した。

『こちらシュカーヴィク。こっちもトラップを確認した。赤外線センサーの警報装置、ピアノ線だ』

 カテリーナは外科手術で使用するようなファイバースコープ・カメラをゆっくり操作し、四階へと伸ばしていく。

 四階に赤外線センサーが張り巡らされ、さらに銃を構えた多数の敵をカメラが捉えた。

『これは待ち伏せだ。情報と違うぞ』

 エカチェリーナの班もファイバースコープ・カメラで四階の偵察を行い、今回の奇襲任務が敵に知られていることを理解した。

『とりあえず連中から話を聞くとしよう。センサーを切れ』

 ファイバースコープに備え付けられた極小の高周波バサミで赤外線センサーの電源を破壊し、邪魔となるピアノ線も切断した。

『何人か残して他は始末しろ。せんこうだんを使って突入する。スリーカウント。3、2、1』

 ヴァレンティーナがカテリーナの後ろからフラッシュバンを四階へ投げ込み、正面の敵を無力化。三人が一気に突入し、まぶしさで苦しんでいる敵を撃ち抜いていく。

「誤射に注意! 移動する!」

 正面からエカチェリーナらが現れた。

「さて、吐いてもらおうか」

 エカチェリーナはひざまずいた一人の男に銃を突きつけ、今回の待ち伏せについて問い詰める。

「何もしゃべることはない。お前達はお終いだ」

「どういう意味だ。さっさと言え」

 エカチェリーナが左足を撃ち抜いた。

「うっあああ……」

 痛みでもだえ苦しむ敵に向けてさらに蹴りを入れ、頭に銃口を近づけた。

「どうした。早く言わないとまた身体に穴が開くぞ?」

「どうせ殺すんだろ?さっさとやれ……」

 なかなか強情な敵に エカチェリーナは内心いらっていた。そんな時、アイミスから無線が入る。


 タンッ! タンッ!

 タンッ! タンッ!


『隊長! 敵です!ああ、くそ、撃たれた……』

『アイミス!しっかりして!』

「まずい。一階だ急げ」

 エカチェリーナは用済みとなったりょの頭を撃ち、すぐに班を率いて非常階段へ。マリナ達も先ほど上ってきた中央階段に引き返す。



 ビル一階では激しい銃撃戦が繰り広げられていた。アイミスの胴体は血がにじんでいる。もう長くは持たないだろう。

「敵は何者だ」

 建築材やコンクリート材を壁にしつつ、スミルノフと敵は撃ち合い、両者とも隙を見せない。

「くそ。素人しろうとではないな……」

 ヴァレンティーナはマガジンを換えつつ、相手へ向かってフラッシュバンをとうてき。しかし、相手からはスモークグレネードが投げられ、濃い白煙により視界がさえぎられる。

「相手はサーマルを使っている。エレン、下がれ」

 エレンは白煙の中へKC5フラググレネードをとりあえず投げ込み、銃を撃ちながら今の位置から後ろへ後退していく。


 ヒュンッ!


 一発の弾丸がエレンの左足を貫通し、さらに二発目がエレンの胴体に命中した。


「エレンっ……敵のスナイパー!」

 アーニャはエレンがスナイパーによる狙撃で射抜かれた事を理解した。どうやらスナイパーもサーマルスコープを使用している。こちらの位置は熱源で完璧に分かるはずだ。

「隊長! 二階プレハブにスナイパー!」

「見つけた。資材置き場の左にもいるぞ!」

 すぐにスナイパーを捉えたエカチェリーナとアーニャがそれぞれ二人ずつスナイパーを倒した。

「敵はまだ来る。全員南口から脱出だ!」

『エカチェリーナ、無事か!』

 突然、エカチェリーナの耳に男性の声が入ってきた。GRUグルー総局長だ。

「局長、作戦は失敗! 敵はこちらの動きを知っている!」

 エカチェリーナはけん制としてフラッシュバンを背後に投げるが、銃撃音は続いている。

SVRエスヴェーエルだ! 君らを狙っているのはSVRエスヴェーエル。それもザスローン部隊だろう』

 局長から出た言葉はあまりにも予想外な言葉。SVR(ロシア対外情報庁)はロシアのちょうほう機関である。

「おいおい味方だろ! 頭湧いてんのか! スヴェトラーナ、マリナ、カバーしろ! 車を調達する」

 マリナとアーニャが後方からの追撃を抑えている間、エカチェリーナはヴァレンティーナとともに使えそうな車を探す。

「皆来い! 車だ!」

『君らはSVRエスヴェーエルから最重要ターゲットとして手配されている。どういうわけか私にもさっぱりだ。私は大統領からお呼びがかかっている。君らの援助はできそうにない』

 エカチェリーナが車の運転席に座り、エンジンをかける。

「はっ、孤立無援はいつも通りですよ」

『強力な助っ人をそちらに向かわせた。コードネームは〝オヴニル〟だ』

 車を発進させたエカチェリーナはミラー越しで追跡者を確認しつつ、セーフハウスへ向かう。

「どうやってオヴニルと合流すれば」

『向こうから来てくれるはずだ。何とか生き残ってくれ』

「了解。GRUグルーの名誉にかけても」


 だが、物事はそう上手く進まなかった。

 SVRが誇る特殊部隊ザスローン。彼らは攻撃部隊とは別に後方部隊を控えさせており、至る所に狙撃手と伏兵を忍ばせていた。安全な逃走経路など最初から無い。彼らの非情な射撃により、エカチェリーナが運転する車はタイヤが破損してしまった。

「やられた!」

 何とか車のバランスを保とうとエカチェリーナは懸命にハンドルを切るが、振動は激しくパンクしたタイヤは完全に走行能力を失っている。

「突っ込むぞ! 衝撃に備えろ!」

 エカチェリーナの努力も虚しく立体駐車場の発券機へ衝突した。衝突の激しい衝撃でエアバッグが作動し、後部座席にいたマリナ、アーニャ、ヴァレンティーナは身体を強烈に打ちつけた。

「うっ……くそ」

「みんな……無事……?」

「急げ……追手が来ているんだ」

 マリナ、アーニャ、ヴァレンティーナの三人は何とか壊れた車体から這いずり出た。

「隊長、スヴェトラーナ」

 マリナは車体に身体を寄せながら、運転席の方へ進んでいく。

 幸いどこも折れてはいないようだが、身体の痛みは激しく左足は内出血を起こしていた。

「隊長……」

 運転席を見たマリナはがくぜんとした。

 エカチェリーナは頭部から血を流し、変形したハンドルが胸部を圧迫していた。そして残念なことに助手席のスヴェトラーナはすでに息を引き取っていた。

「ああ、そんな……隊長」

 助け出そうにも座席とドアが変形しており、エカチェリーナも座席も両方動かせない。

「私はここまでだ」

 エカチェリーナが口を開く。

「いいか……お前達は生きろ。生きていれば勝機がある。ここから逃げるんだ」

「しかし」

「これは命令だ。オヴニルと合流しろ。行け……」

 マリナ自身、分かっていた。この状況でできることは何もない。

「了解」

 歯を食いしばり、マリナはアーニャとヴァレンティーナの元へ合流しにいく。

「みんな奥へ!」

 時間的ゆうはない。後方からはザスローン部隊が迫っていた。


 ‐標的を捉えた。

 ‐ここで確実に仕留めるんだ。

 ‐了解。前進する。援護しろ。


 四人のザスローン隊員が消音器付きASY‐1を構え事故現場に展開する。見た目こそ一般人の装いだが、彼らはプロだ。


 ‐車両の遺体を確認しろ。


「来た…………」

 エカチェリーナは薄れていく意識の中、何者かが近づいて来るのを感じた。

 それはザスローンの事ではない。

 迫り来るのはもっと重みのある足音。

貴方あなたが来るとは……やってちょうだい」


 カチ、キンッ!


 安全ピンが外れたR3フラググレネードが一つ。


 ‐まずいグレネード!


 壊れた車両へ転がっていくグレネード。

 それを見たザスローンはすぐにその場から退避した。


「悪くない最期」



 マリナは隊長の乗った車両が爆発していったのを見た。

 がザスローン隊と交戦している。

 ハンドガンPs‐05による正確な射撃でザスローン隊員の銃を弾いたかと思えば、背後のザスローン隊員へ振り向きざまに左袖からワイヤー付しょうないを射出。続けて正面へすべり込むようにザスローン隊員のふところへ。そのタイミングに合わせてしょうないを引き戻し、手に戻ったしょうないでザスローン隊員の首を切り裂いた。

「あいつは」

 目にも止まらぬ速さ。常人離れしたあの動き、間違いなかった。

「シェイドだ」

「まさか、あいつが助っ人?」

 アーニャはHLR‐2を構えシェイドの接近に備えた。

「あれがシェイド……」

 マリナやアーニャとは異なり、ヴァレンティーナはシェイドの姿を初めて見た。

 四人の追撃班を無力化したシェイドはマガジンを新しい物に交換し、さらに右の壁へ向かって二発、左の柱へ向かって二発の弾丸を放つ。放たれた弾丸は全て貫通することなく跳弾し、裏へ回り込もうとしていた別動隊のザスローン隊員へ全弾命中した。


「私はオヴニル。GRUグルー総局長の依頼により、貴方あなた達をロシアへ送り届ける」

 目の前にやってきた女はそういった。

「話は聞いている。貴方あなたシェイドでしょ」

 マリナは単刀直入に相手へ尋ねた。

「周りが勝手にそう呼んでいるだけ。自ら名乗ったことはない」

「じゃあ貴方あなたの名前は?」

「ミサキじょう。もちろん偽名だけど。話なら後で聞くわ。追手はまだいる」

 自分の名を名乗り終えるとシェイドは左腕に付けた小型のタッチパネルを操作する。すると一台の黒い車が駐車スペースから出てきて、四人の前に停車した。

「さあ乗って」

 運転席へ乗ったシェイドはスミルノフ三人が乗り込むのを確認し、車を発進させた。

「さ、突破するわよ」

 立体駐車場の出口には小銃で武装したザスローン隊員が待ち構え、さらに他の建物にも複数の狙撃手を配していた。

 当然車を見ると車へ向けて銃を撃つ。


 ‐くそ防弾仕様か。


 車は防弾仕様のため放った銃弾は貫通せず。


 ‐追いかけろ。

 ‐無理だ。車がやられている。


 彼らはそばに停めていた車ですぐに追いかけようとするが、車のタイヤはパンクしており、使い物にならなかった。


 ‐くそっ、タイヤがパンクしている。


 この時間稼ぎによりザスローン部隊の追跡任務は下方修正が入ることとなった。



〈中華人民連合、明貴ミングゥイ市〉

 車内では音楽番組がかかっている。曲はフレデリック・フランソワ・ショパン作曲〝練習曲作品10第3番ホ長調〟。この曲は日本で〈別れの曲〉として一般的に知られている。まるでスミルノフ三人の悲壮感を体現しているかのようだった。そしてエカチェリーナの勇敢さと美しさをたたえているようにも感じられた。

 戦場とは常に死と隣り合わせである。それはエカチェリーナが一番分かっていただろう。死に際でも彼女は仲間と祖国のことを思っていた。その証拠に彼女は自らの遺体がシェイドによって処分されることに強く感謝していた。

 シェイド、その名はいわゆる異名であり、じょうミサキという名も複数ある偽名の一つ。運転席にいるこの女、確かに今はスミルノフの味方であるが同時にスミルノフの敵でもある。いや、スミルノフだけではない。ロシアにとって安全保障上のきょうなのは確実だ。しかし、今はこの女を信用するしかない。味方であればこれほど頼りになる存在はいないのだ。

「なんでこんな車が都合良くあそこにあったんだ?」

 アーニャはシェイドへ少し問い詰めるように尋ねた。

「あの場所が当初の合流地点だった。私の予定では」

「なるほどね」

「私も聞きたいことがある。《ヘイズ》をどうした」

 マリナが気になっていたのはイズニティでの話だった。おそらくブラックレインボー所有と思われる生物兵器《ヘイズ》をシェイドは回収したのだ。《ヘイズ》の行方が気になるのは無理もない。

「それに関しては答えられない。ただ悪いようには使ってはいない」

「《ヘイズ》はブラックレインボーのもの?あれは生物兵器でしょ」

「厳密にいえば兵器とは少し異なる」

 車を運転しながらもシェイドはザスローンやブラックレインボーへの警戒を怠ってはいない。その目は全てを見通しているかの如く、冷たく光っていた。

「そういえば同じようなことを言った男がイズニティにいた。どういう意味?」

「あれは兵器として運用することは考えられていない。ある目的のために設計された人工ウイルスだ」

「ある目的?」

 車は交差点前の信号機で止まる。赤信号だ。信号機の上には一匹のカラスが止まっている。

「人類の削減。もう少し丁寧に言えば健全な遺伝子の選別」

の選別?」

 ヴァレンティーナは意味を理解できずシェイドに聞き返した。

「《ヘイズ》は先天的遺伝子疾患を患っている者、後天的免疫不全である者、慢性的な生活習慣病を患っている者、健康的じゃない人を緩やかに、でも確実に死へと導く。詳しい潜伏期間は知らないけど、感染者は長期にわたってウイルスをまき散らすキャリアとなる」

 信号が青になり車は再び発進する。

「感染経路は空気感染、飛沫感染、経口感染、母子感染、接触感染。幸い水を媒介にすることはない。ただ、それも将来的に改善される可能性がある」

「なぜブラックレインボーがそんなものを?」

「それを説明するのは私のセーフハウスに着いてから」


 マリナ達が乗った車は法定速度上限ぴったりで道路を進んでいった。



〈時刻1602時。中華人民連合、灰城フゥイチォン市(シェイドのセーフハウス)〉

 再開発が積極的に進められている灰城フゥイチォン市。国内外からの観光客が多く、エンターテイメント業界の発展が著しい。試験的にホログラムを使用した看板や案内板が採用されているため、古めかしい街並みと近未来的な街並みの二つのエリアが混在している。

 中華連でのスパイ活動はスミルノフでもなかなか難しい。治安維持を名目とした人工知能搭載型監視カメラや空中ドローンカメラが至るところにある。また中華連が誇る特務機関、陸軍対外情報局〈第505機関〉は非常に恐ろしい存在で、彼らを敵に回すのはロシアとしても避けたい話であった。

「武器庫にある銃は自由に使っていい。足が付くことはない」

 シェイドは二つのホルスターにそれぞれPs‐05を収め、ダガーナイフや手裏剣のような刃物を手首や袖の下、レッグホルスター、ベルトのバックルへ収めていく。

「すごい……」

「なんて品ぞろえだ」

「おまけにどれも部品が丁寧にカスタムされている」

 スミルノフのメンバーはシェイドの厚意で武器庫にある武器を自由に選択していた。ハンドガン、サブマシンガン、PDW、カービン、アサルトライフルといった様々な種類の銃が種別に並べられている。いずれも全長をなるべく短くしつつ、材質を変えることで軽量化し、取り回しが向上。さらにせいこうなライフリングと熱冷却機構の改善によって反動の軽減も実現している。また、グリップも手でしっかり握りやすいようデザインが変更されていた。

 マリナはMK‐24Cカービンを手に取り、感触を確かめる。その後、アンダーバレルに対ドローン用ショックガンUX‐40を装着。

 アーニャはBNC‐30アサルトライフルに決め、マガジンを装填。加えてアンダーバレルにグレネードランチャーUG‐300を装着する。

 ヴァレンティーナはA‐122カービンにダブルマガジン・クリップを付けることで二つのマガジンを連結し、さらにアンダーバレルに反動抑制用のフォアグリップを装着した。

貴方あなた達はブラックレインボーをどこまで知っているのかしら?」

 シェイドはVGL‐8PDWにマガジンを入れ、銃側面のコッキングレバーを引き初弾装填。さらに予備のマガジンを二本、タクティカルベストのポーチに収めた。弾薬は全て製造元が分からないようにやっきょうには刻印が一切なく、火薬や弾丸も微小な調整が完璧に施されている。このため、使用された弾丸ややっきょうからシェイドの武器入手ルートを探すのはほとんど不可能だ。

「世界企業連盟のAMSと深い関係にあるというところまで」

 プレートキャリアに防弾プレートを挿入するマリナ。

「全然ね」

 この言葉にヴァレンティーナが反応した。

「何か知っているなら話してもらいたい」

「真実とは案外簡単なもの。同時に目をらしたくなるものでもある。誰もが最悪の想定をし、それは絶対あり得ないと切り捨てる。貴方あなた達も一度は疑ったはず」

「まさか」

「おいおい……」

「本気で言っている?」

 アーニャ、ヴァレンティーナ、マリナの三人はシェイドが言おうとしていることを察した。

「ブラックレインボーと世界企業連盟は表裏一体の存在。そして国連も取り込まれ、三位一体になりつつある。これで話はお終い。これから私達はホンコンを経由して日本へ向かう」

ホンコン?」

 マリナがシェイドに聞き返した。



〈時刻2249時。中華人民連合、香港特別行政区(ティェンチォン区)〉

 高層ビル群の下、派手なネオンが夜の街を鮮やかに照らし、人々の心に非日常への期待を喚起させている。小道へ入れば汚れた排水溝や駐車場も見えるが、それもまた味のある光景で、無人の清掃ロボットが道端に落ちたかみくずや空き缶を拾い集めていた。


 ブルルル……


 地上50階建てアリュエット・マイティ・サービス社ビルの屋上。一機の多用途軽ヘリコプターLC‐404が着陸している。小型で小回りが利き機動性に優れた機体だ。

「こちらガルーダ03、時間通りだな。さあ乗ってくれ」

 パイロットは屋上に現れた人物へ無線を繋げた。

「ボス直々の命令だ。遅れるわけにはいかないさ。レクター、こちらオニキス1。これよりHVT(ハイ・バリュー・ターゲット)の排除へ向かう。オーバー」

 彼は見た目が変わったユニークな銃とバックパックを装備している。どうやらブラックレインボーが独自開発した試作兵器のようだ。

『こちらレクター。オニキス1、ハンター・チーム4はまもなく目標と接敵する。上空より援護せよ。オーバー』

「オニキス1、了解。アウト」

 LC‐404は離陸し空へと飛び上がった。


 香港のティェンチォン区。スミルノフ三人とシェイドが車で移動していた。この車はしのはら自動車〈ヴァルキュリア〉のハイグレードAモデルを改造したものだ。車体外側が全面ディスプレイのようなものになっており、自在に色やデザインを変えることができる。また、車内の空気は超高性能ガスフィルターによって常に浄化されている。さらに、ドアとガラスは防弾仕様、車体底部は地雷を想定して防爆塗装が施されていた。

「高速道路に入る。カメラは無効化してあるから」

 シェイドは高速道路に入る直前、ハンドルに左横に付いてあるボタンの一つを押した。するとナンバープレートの表示が一瞬にして別のものに変わった。車体外側と同様のシステムでいつでもナンバープレートを変えることができる仕様である。

「そろそろ追手が来てもおかしくはない」

 ドアミラーにシェイドは目を配った。

「なるほど」

 シェイドのうなずきにマリナ、アーニャ、ヴァレンティーナの三人は反応した。

「来たか」

「何台?」

「今のところ二台」

 後列の一般車を追い越してくる二台の車両。こちらに近づくと彼らの車は屋根部分が収納されてオープンカーに。そして小銃を構えた者達が一斉に姿を現した。

 車のモニターにもその姿はばっちり映っている。

「やる気のようね。片付けてちょうだい」

 シェイドは今度ハンドルの右横に付いているボタンを押した。

「任せて」

「はっ。あんな連中に負けるわけがない」

「やってやる」

 こちらも車体の屋根を収納。スミルノフの三人が追跡チームであるハンター・チーム4と撃ち合う。ハンター・チーム4は射撃の腕はいいのだろう。しかし、車上という状況下での射撃には慣れていないようで、スミルノフ三人の方が明らかに上手だった。


 ブルルル……


 ヘリのローター音だ。この夜空に不釣り合いなヘリの音。


 シュ、ダンッ!


 目の前の道路が吹き飛び、深い穴が開く。

「ちっ!」

 その穴に飲み込まれないようシェイドはハンドルを左へ切り、すぐに進路を確認する。

「なんだ! 何が起こった!」

 ヴァレンティーナは状況が分からないままとりあえず敵のヘリへ攻撃する。

「ロケットランチャーか?」

「いいや、弾道は見えなかった」

 アーニャはヘリからの対車両ロケットランチャーだと思っていたが、マリナはロケットの弾道を見ることはできなかった。



「外したか。あの運転手、ずいぶんと良い勘しているな」

 ヘリの左側に座っているオニキス1はヘリからPRG‐Lを構え、低倍率に直した照準を高速道路の車へ合わせる。PRG‐Lはブラックレインボーが開発した携行型超電磁砲である。秒速1543キロという超音速で放たれる多目的りゅうだんはまさにきょうそのものだ。

 問題はまだ試作段階であり連射にはできないということ、重量があり個人で運用するには難がある。

「冷却中」

 パイロットのガルーダ03はオニキス1が狙撃しやすいように高度と方向を維持しつつ飛行する。

「次弾装填完了。ファイア」

 オニキス1が再びPRG‐Lの引き金を引いた。


 シュ、ダンッ!


 青白いせんこうとともに放たれた弾丸はタイムラグをほとんど感じさせない速さで弾着する。



「レールガンだ。つかまって!」

 シェイドはシフトギアを一つ落としてエンジンブレーキを利かせつつ、さらにブレーキパッドで微妙な減速を加減した。目の前の道路が吹き飛び、地面がところどころ浮き出る。その起伏を予見していたのだろうか。シフトギアを上げ直し加速。シェイドは難なく壊れた道路を進んだ。

「なんっつう、運転だっ!」

 マリナはシェイドの荒いながらも驚異的な運転技術をめつつ、敵ヘリの位置を頭に叩き込む。



「くそ、また外れた。レクター、照準ソフトに問題があるかもしれない。マニュアルに切り替える」

『了解だ』

「ガルーダ03、高度を上げろ。奴らをほうむってやる」



 空から一方的に撃たれ続けるマリナ達。

「あのクソ野郎……」

 アーニャは銃を空に向けてみようとするが、揺れ動く車両から遠く離れたヘリを狙うのは無理だった。こちらは狩られる側。あちらが狩人だ。

「かといって……あいつを撃ち落せる?」

 ヴァレンティーナの言う通り敵は空にいるヘリ。対空火器が無い。

「無理……」

 アーニャの持つBNC‐30アサルトライフルにはアンバーバレル・グレネードランチャーUG‐300が装着されている。もしグレネードランチャーでも当てることができればLC‐404は撃ち落すことができるだろう。

「リロード中を狙え」

 シェイドは三人へ冷静になるようにアドバイスした。

 この言葉を聞き、三人の頭にエカチェリーナの顔が思い浮かんだ。

「私がやる。シェイド、運転を信じるぞ」

「ええ。当たりはしない」

 MK‐24Cを構えるマリナ。MK‐24Cの射撃モードをセミオート射撃へ変更。極限の集中力を引き出し、瞳にヘリコプターを捉える。

「こいつを食らえ」

 マリナは引き金を引いた。

 MK‐24Cから放たれた弾丸は風や気圧、重力といった環境因子によりわずかだが直線よりもずれていく。しかし、その軌道はマリナが意図した通り。ヘリにいるオニキス1の胴体へ命中した。



「うっ……撃たれた」

 急に身体を前かがみにしたオニキス1を見てガルーダ03は彼が撃たれたことを直感で理解した。

「オニキス1が撃たれた。繰り返す、オニキス1が撃たれた」

『やむを得ない。ガルーダ03、帰投しろ』

「了解。ガルーダ03、これより帰投する。アウト」

『こちらレクター、ブルズアイ。ゲートを封鎖しろ』

『こちらブルズアイ。おおせの通りに』



「おいおい、あのヘリ帰ったぞ?」

 てっきりヘリが攻撃してくると思っていたアーニャは驚いた。

「お楽しみは後からってことでしょ」

 車の屋根を再び戻し、シェイドは目的地へ向けてさらにアクセルを踏み込んだ。


 そのころレクターから命令を受けたブルズアイは部下を使って、高速道路の管制センターをハッキング。分岐所や出入口のゲートを無理やり閉鎖した。これにより無関係な一般車両がいくつか巻き込まれ、ゲート付近では炎上した車も出ていた。


 女性四人が乗った〈ヴァルキュリア〉は順調に目的地へ向かっていた。

「なんか空がけむっていないか?」

 ヴァレンティーナは外を見てそう言った。

「確かに」

 このことはシェイドも気が付いていた。

「まさか事故か?」

「ただの事故ならいいけど、ブラックレインボーは何をしてくるか分からない」

 夜のドライブ。それが嫌な予感をさらに増大させている。

「見て。ゲートが閉まっている」

 マリナは出口が非常用ゲートにより封鎖されているのを確認した。わいそうなことに一台の一般車両が挟まれ大破、炎上していた。黒煙が空へ上り、風に流されて広がっている。

 ここでアーニャが動く。

「私の出番よ」

 彼女はBNC‐30のアンダーバレル・グレネードランチャー(りゅうだん)を撃ち、見事ゲートを破壊した。その様子を監視カメラは捉えていたが、ブルズアイに対抗策は無くただ黙って眺めることしかできなかった。


  

〈中華人民連合、香港特別行政区(某所)〉

 海岸にも近いとある広域公園。そこの脇道にシェイドが運転する〈ヴァルキュリア〉が停まった。周りには誰もいない。そして追手も来てはいなかった。

「うん? どうして止まった?」

 アーニャだけではない。この時、マリナもヴァレンティーナも同じことを考えていた。

「ここから先は見せられない。でも安心して」

 ぼやけていく視界。強烈な眠気がスミルノフ三人を襲う。催眠ガスだ。シェイドの言葉を全て聞き取る前にマリナ、アーニャ、ヴァレンティーナは深い眠りの中へと沈んでいった。


 ‐こっちに来て。早く移動させましょう。

 ‐なかなか無茶な注文をしますよね。まさか迎えに来いとは。さらに車の後処理まで。

 ‐いいでしょ。どうせそちらも帰り道なんだから。

 ‐たとえ目隠し、耳栓をしたとしても艦内で目覚めてもらっては困ります。

 ‐この腕輪で睡眠薬を自動投入する。潜航中には目覚めない。


 シェイドとともに複数の人物が車内のスミルノフ三人に目隠しと耳栓を施した。

 そして三人を連れ出し、海岸へ。

 海岸には光学迷彩技術を応用した超低視認性のふくごうていが停泊している。

 シェイドらは三人をこのふくごうていへ乗せ、沖合へと出る。

 海面の下には潜航中の潜水艦の姿が見えた。



〈時刻0700時。日本、広島県〉

「ここは?」

 マリナが目を覚ます。彼女は自分がれいに整えられたベッドの上にいることに気が付いた。床には無地のカーペットが敷かれ、飾り気のない照明としゃこうカーテンがかけられた窓。両脇にはそれぞれアーニャとヴァレンティーナが眠っているベッドがある。

「アーニャ起きて。ヴァレンティーナも。ほら」

 マリナは二人を交互に揺さぶり起きるように促す。

「ふわぁぁあ。よく寝た。おはようマリナ、ここはどこ?」

「アーニャ、貴方あなた寝ぼけているわね」

「ふかふかのベッドが心地よくて。ただ、身体のべたつきは気になる」

 三人の服装はあの夜の時のままだった。そのため身体は汗やほこり、すす等で汚れ、不快感を生み出していた。

「ここはどこだ。あれ?」

 ヴァレンティーナも目を覚まし、アーニャとは違って冷静に現状のあくに努めていた。

「私達、シェイドに……あいつに眠らされたんだ。違いない」

「そうだろうね。記憶が無い」

 マリナは立ち上がり、部屋の扉へ手を掛けようとする。それよりも先に扉が開き、シェイドが入ってきた。

「三人とも起きているわね。ここは日本。お腹減ったでしょう。食事でもどう?シャワーもご自由に」

 シェイドに促されて三人は部屋を移動する。

 ロシア軍の未開封レーションが用意された部屋があり、その隣にはバスルームと思われる部屋があった。

「毒は入っていないと信じて頂く。レーションとはありがたい」

 マリナは正直、レーションなんかよりももっと温かい食べ物が欲しかったが、慣れ親しんだ味というのもこの状況で悪くはないと思った。

「飲み物はあそこの冷蔵庫にある。常温のミネラルウォーターならその棚の中に」

「へえ、用意がいい」

 喉が渇いていたアーニャはすぐにミネラルウォーターのボトルを棚から取り、キャップを開け、口を付けた。

「今から一時間半後にここを出発。ロシアへ向かうからそのつもりで」

「それは一般市民として?」

 アーニャは服を脱ぎつつ、バスルームへ入ろうとしていた。

「いいえ。特別な上客として。貴方あなた達もそのほうがいいでしょう?」

 シェイドは三人へ含みを持たせた笑みを見せた。

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