第7話【お父様との話し合い】
昼食のあとお父様に言われた通り1時間後にお父様の部屋の前まで訪れ、一度大きく深呼吸し、心を落ち着かせてからコンコンとお父様の部屋をノックする。
「誰だ?」
「エレナです。お父様、昼食後に言われた通り1時間が経ったので来ました。
入ってもよろしいですか?」
「おー、エレナか入りなさい」
お父様に許可をもらい部屋に入った。
「どうしたんだ?
何か困ったことがあったのか?
まぁ、とりあえずそこのソファーに座りなさい」
いつも通り凄く心配してくれる。
愛されているのは嬉しいのだけどこういうときは認めてもらえる確率が下がるので困ってしまう。
「はい。
ありがとうございます。
今日はお父様にお願いがあって来ました」
と私は普段しない真面目な顔でお父様に話をきりだした。
それを見たお父様は、今までの笑顔を真剣な顔に変えた。
(こういう子供に対してもしっかり話を聞いてくれるところは素直に尊敬できるしカッコイイとも思う。さすが私のお父様!)
「私は、もう5歳になりました。
体も以前に比べてかなりしっかりしてきたと思います。
なので、剣と魔法の稽古をしたいのですが許可を貰えないでしょうか?」
「何をいっている?
5歳になったのでそろそろ家庭教師をつけて勉強させようとは思っていた。
その中に魔法の知識も入れようとは思っていたから魔法については、その勉強の延長で教えてもらえばいいだろう。
しかし、剣は駄目だ。
そもそもお前は貴族の娘で私の可愛い娘だ。
そのような危ないことをさせるわけないだろ。
それにお前にはしっかりとした護衛も付けるつもりだし剣を振るう機会などないだろう」
(あうぅ~、やっぱりちょっと怖い)
お父様にこんなに説教みたいに話をされたのは初めてなので怯んでしまいそうになる。
だがここで引くわけにはいかないので心の中で自分に喝を入れてから話し始める。
「魔法については、ありがとうございます。家庭教師の指示に従おうと思います。
しかし、剣の稽古を諦めることは出来ません。
どんなことにも絶対など存在しません。
もし護衛がいない時に襲われでもしたら?
もし目の前で可愛い妹が襲われそうになっていたら?
そのようなことが起こってしまったとき、力不足で何も出来ないなんてことがあっては、私は一生自分を許すことが出来なくなってしまいます。
なので、お父様がダメだと言っても私は剣の稽古を諦めることは出来ません。」
「…お前の言いたいことはわかった。
でも剣の稽古は危ないんだぞ?
怪我でもしたらどうする?
お前は5歳だからと言ったが、5歳はまだ子供だ、子供に怪我をすることを率先してさせようとする親がどこにいるんだ」
「お父様が私のことを愛してくださっていることは重々承知していますし、とても嬉しく思っています。
しかし、先程も言った通り、このことばかりは引くことが出来ないのです。
信じては下さらないと思いますが私は最近夢を見るのです。
リリが悪い奴らに襲われてしまう夢を。
その時、助けに入れるのは私だけ、でも剣も握ったことも無い私は助けに入ることも出来ずにいる夢を。
私はそんな悔しい思いをしたくないのです」
ちなみにこれはほとんど事実である。ヒロインや攻略対象は、私からしたらリリを糾弾する悪い奴らだし、ゲームをプレイしていないからリリはどうなるかわからないが、悪役令嬢は死刑になったり攻略対象に殺されたりするバッドエンドが多く存在する。
なので、リリがそうなる可能性も大いにあるのである。
まーハッキリ言ってしまうと前に説明したことを大袈裟に、言い方を変えて言っただけなのである。
決して嘘ではない!
それを聞いたお父様は、「んー」と考え始めた。
お父様が考え始めて何分がたっただろうか?
実際は5分程度なのだろうが今の私にはとても長く感じた。
そしてお父様はまっすぐ私の目を見て話し始めた。
「お前の覚悟は伝わった。
夢のことをすぐに信じることは出来ないがお前の目を見ていると嘘を言ってるようには感じなかった。
たが、今すぐに了承することはできない。
一旦、ローゼ達と相談してから返事をしようと思うのだがそれでもいいか?」
「有難うございます!」
私は、断固として反対されると思っていたので、思っていたよりも前向きな返事につい声が大きくなってしまった。
ここまで来たのだから、絶対に剣の稽古をつけてもらえるようにお母様も説得しようと心に誓いつつお父様の部屋を出るのであった。
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