第35話 手土産

オニオンとグラスは数回闘い、あることに気が付いた。


「やっぱり盾だけでも防げますね」

「…そうですね」

基本動作は盾を構える事が前提となるが、オニオンの攻撃をグラスはほぼ軽減していた。


「あとはタイミングですね」

幸いにも盾を構える動作は早く後出しジャンケンでも防ぐ事が出来そうだった。


「でも何か行動してたら間に合わないので練習に付き合ってもらってもいいですか?」

「はい、僕で良ければいくらでも」

「ありがとうございます」

グラスはとことんまでオニオンと闘い、操作を自分の思い通りになるようにしていった。



その頃、当然フージンは暇だった。

「何だろう?なんか腹立ってきた。でも私が言い出した事だしなぁ……」



「あいつに五十音を一つずつ送ってよう」

綾はスマホを持ち貴俊にメッセージを送った。



オニオンとグラスがそろそろ二十戦を迎える頃

「グラスさん、ちょっと待ってもらっていいですか?」

「はい、何かありましたか?」

「ちょっと僕のスマホに連続メッセージを送っている人物が…」

「……大体わかりましたのでそちらに集中してもらって大丈夫です」

「ありがとうございます」




『ひ』、まで送った頃に貴俊から返信があった。


『なに?』

『別に』

『次は綾も闘ってアドバイスしてよ』

『…あんたが鍛えたさっちゃんに?』

『戦闘スタイル違うからギルドの為に頼むよ』

『わかったわよ』


「ったく、しょうがないわね!」

綾はにやけながらヘッドセットをつけた。




「…さてと、二人が闘ってる間にスキル習熟度でも上げてようかな」

オニオンは一人でワールドを巡り、モンスターを倒す事にした。




木曜日


目覚ましに起こされた貴俊は瞑りそうになる目を必死に開けながらスマホを確認した。

「やっぱり……」

ちょっと前にメッセージアプリが受信する振動を少しながら感じていた。


『今日手土産買っておきなさいよ!イベントが始まる明日買うとか許さないからね!』


「…個人戦の時はあんなに妨害しようとしてたのに」


とりあえず貴俊は

『わかった』

と返信した。




終業後


貴俊は会社から近い百貨店にいた。

「…手土産?」

何を買えばいいのかわからなかった。


ウロウロしながら色んな店の商品を見る。


「…わからない」

スマホで挨拶、手土産と検索をかけてみるが

「いや、これ個人差あるでしょ…」

とラインナップされる商品群を見て途方にくれていた。


その時、スマホ画面に通知が来た。

綾だ。


『今どこ?』


その連絡にとても喜んだが冷静を装った。

『会社近くの百貨店で手土産選んでるよ』


そう返したがすぐに後悔した。

「何を買っていけばいいか聞けばいいのに…」

自分はバカなのか?と自問した。


『今から行くから待ってなさい』

そんな綾からの返信に助けられた気がした。



数分後

二人は合流した。


「…で?何を買うつもりだったの?」

綾は貴俊を試している。


「あ、あのあれとか、あっちのあれとか」

「…で?何を買うつもりだったの?」

あえて同じ事を聞いた。


「何を買ったらいいかわからないから一緒に選んでください…」

「…ったく、初めからそう言いなさい!」

「両親に挨拶って初めてだから…」

「逆に経験あったらブチギレるけど?」

「………」

「何で黙る?」

「実は以前に…」

「え?あるの!?」

綾は驚いた。


「………」

「……無いな、この野郎」

貴俊の頭を思いっきり叩いた。



二人は綾の意見で手土産を買った、しかし貴俊は腑に落ちていなかった。


「…ねぇ、これ綾が食べたいものじゃ?」

貴俊は手に持つ辛子明太子が入った袋を見てから綾を見る。

「そ、そんなことないわよ…」


「土曜日は綾も一緒に帰るんだよね?」

「………」

何も答えなかった。


「やっぱり…」


「はぁ?何よ!信じてもらえないなんて悲しいわ!!」

腕を組み自分とは逆方向を向く綾に

「…綾」

貴俊はスキル低い声を発動した。


「な、何よ。ええ!そうですよ!悪いの!?」

少し頬を赤らめながら反論する。


「悪いとは言ってないけど素直になろうよ」

「ふん!」

また逆方向を向いてしまった。


「綾…」

「…何よ」

「愛してるよ」

「…は、はぁ!?なに、何を言って!?」

「愛してる」

貴俊はようやく自分を見た綾の目を真剣に見つめた。


「な、何よ、急に…、こんなところで」

綾は下を向き恥ずかしそうにしている。


「じゃあ帰ろうか」

「……お前、マジで許さないからな?」

それが貴俊の策略だと気付くと態度を一変させた。


歩くスピードを速める貴俊。


「ちょ!待ちなさいよ!?」

小走りで追いかけ貴俊の腕を掴む綾、振り向いたその顔はとても幸せそうな笑顔だった。


「…もう!」

「っ!ゲフゥ…」

綾のボディブローが入った。


「そ、そこは腕にしがみつくとかでは?」

「はぁ?」

「何でもない……」

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オンラインゲームでランキングを競っているライバルは肉食系でハードめな職場の女上司でした 海鮮メロン @seafoodmelon

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