Epilogue
エピローグ
『本日は世界の裏事情に精通していらっしゃるフリージャーナリスト、ケルビン・フォンズ(Kelvin Fonz)さんにお越し頂きました。フォンズさん、よろしくお願い
『よろしくお願いします』
『では早速、聞いていきたいと思います。国連軍総司令官のアルヴェーン
『そうですね。私は三つの大きな要因があったと思います』
『三つの要因ですか?』
『はい。まず一つ目に初期対応を誤ったことです。各国はあまりにも対策を
高層ビルの巨大モニターに映し出されているニュース番組。今日の内容もブラックレインボーのようだ。世界中でブラックレインボーに関するニュースが報道されている。現実世界だけでなく、ネット世界でも大々的に取り上げられ、無数の人がブラックレインボーに関する記事や写真、動画を見たはずだ。それこそ一から十まで話せるほどに。
「
一は左隣に立っている零へ
「最初は盛大にやっておいて損はない。後は忘れた頃に二、三回やる必要がある」
ブラックレインボーのボスである《プロビデンス》の情報は表舞台に出さないことが裏世界における暗黙の了解で決まった。情報の取り
情報操作である。仮に本当の情報を世間に流したとしても有益なことはないはずだ。むしろ無用な混乱を
「本当に
一の言葉の意味は零がよく分かっていた。
「ああ。
「そいつは言えてる。長生きし過ぎた
「今、何か言ったか?」
「いや、何も言ってない」
「それに、
「それはどういう意味だ?」
「深い意味はない。死者には敬意を払うだけだ」
「そうか。そうだな」
初期化された人工知能《プロビデンス》はいくつかの変更を加えられ、再び人類地球外移民実現のための
当然のことだが、今回の事件に関与した組織(零課を含む)でも異論の声はある。しかし《プロビデンス》の暴走を生み出したのはそもそも人間側であり、それまで《プロビデンス》は人間に対し非常に友好的であった。つまり《敵となったプロビデンス》を生み出したのは人工知能の問題ではない。このような解釈を持って《プロビデンス》は本来の業務へ復帰することとなった。
頂点を失ったブラックレインボーは大人しく
新生国連常備軍によるブラックレインボー掃討作戦が世界各地で実施されており、ブラックレインボーの〝負の遺産〟の清算が進められている。新生国連常備軍の指揮官や技術者には元ブラックレインボー
ブラックレインボーに
最高司令官を失ったCSSを含むシャドウ・リーパー兵は全員が抵抗も無く投降。人間味に欠けるが
零課のライバル組織は零課が事前にレクイエム計画を通達していたため、ブラックレインボーの大攻勢を
カーァ、カアー、カーァ
カァ
二匹のカラスがいるかと思えば片方はスフルだ。
スフルと会話しているもう一方は野生のハシボソガラスである。
元々スフルは〝本物のカラス〟を参考に開発された自律型ドローン。
スフルやビルは野生のカラスから情報を得ることが重要な仕事である。その情報網は広大かつ正確だ。それこそ世界を
「我々はこれからも生きていかなければならない。平和とは与えられるものではない。自ら
「人生は楽じゃねえなあ」
「まだ若いのに知ったげな口を」
二人は
「菅田達が待っている。スフル、後方
『りょーかい』
零達の車両を空から追いながら、スフルは不審車両が無いかを
この空の下、一体どれほどの人が今を幸せに生きているのだろう。
そして一体どれほどの人が今不幸なのだろう。
零課があろうが、無かろうが、この国は大して変わらないのではないか。
そう思ったことは一度や二度ではない。
それでも私はこの国を守っていく。
命ある限り。
〝東洋の魔女。それは私を最も
‐部下に対し、スミルノフ隊長〈マリナ・イヴァノヴナ・オルカソワ〉
〝私がフリージャーナリストではなくスパイであることは確実にばれていることでしょう。
‐室長に対し、ゼニスエージェント〈ケルビン・フォンズ〉
〈2012年 日本、東京都〉
東京都に置かれている国際連合の自治機関、国際連合大学(International Union University:国連大学)。ここでは地球上における
国連大学そのものは
IUPCCは先に述べたリスクを最小限で回避するため、非人道的な強硬手段も含めたありとあらゆる解決策を
「アルベド、なかなか思い切った発表だったな。一部のお
「まどろっこしい事は嫌いなんだ。自分の意見はきちんと述べないと。それが科学者だ」
「かなり過激な内容だった。俺は心配だよ。
IUPCCメンバー限定の非公開学会。その中でアルベド・マイオスはかなり
「それより、このポスターの発表者はいないのか? 話を直接聞きたい」
アルベドの興味を引いたのは《遺伝子組換えウイルスによる特異的人口抑制の可能性について》という題目のポスター。遺伝子組換えウイルスを用いたヒトの選択的個体処分や非選択的大規模処分の有効性について述べてある。発表者は冴木綾子(Ayako SAEKI)。
「ああ、この人か。予定が
「そうなのか……残念だな。
「俺には夢物語過ぎると思うけど。そもそもウイルスは変異しやすい。制御は不可能だ。この計画は
「いやいや、可能性を追求しないと科学者じゃないさ」
この時、アルベドの頭の中では
どうしても足りなかったピースを彼は手に入れた。
彼は満足した。
新たな発見に。
そして新たな可能性に。
〝基本を
‐新人に対し、ヴァイス隊長〈ハインツェル・ヨナス〉
〝銃弾が飛び
‐新兵に対し、
濡羽色の魔女 夕凪あすか @Yunagi_Asuka
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