姫様からの誘い
「今週も授業お疲れ様、明日から2日間休みだ、それぞれ校則に従い放課後をそして明日からの学園生活が始まってから初めての休日を楽しむように、では」
あの、入学歓迎会から1週間が経った、何か変わるかと思えば特に何も変わらない日常が待っているだけで、廊下を歩けば憎し怖しで目を逸らされるか睨まれる。
キャロルさんに至っては、小さく悲鳴を上げてすぐに目を逸らす。
それとクラスメイトからも若干避けられている、容赦なく散切り頭にしようとする僕の姿は、彼彼女らには悪鬼の様に見えた事だろう、それを恐れることなく今日も僕へ声をかけてくれるのは彼女だけというものだ。
「トラ君、今日は暇? 一緒にお買い物とか」
その彼女ステラは学園初日からくっつけている隣の机から僕が立ち上がると一緒に立ち上がり僕の予定を聞いて来る。彼女は僕以外と会話は最低限で済ませ、いつも僕にべったりで放課後もついて来る、僕の予定を聞くと私も一緒に行くといつもの返事をしてくれる。今日の予定は帳面を切らしてるのでそれを買うくらいで、その後は。
「…………」
「…………」
冒険者の宿の裏庭、制服の上着を脱ぎシャツ一枚で刀を模した木刀を振る僕とそれを飽きることなくずっと眺め続けるステラ、帳面を買い終わった僕はそのまま宿へと帰って来てからは手早く荷物の整理をして、こうして鍛錬をするのが日常だ。
僕の隣に先生ではなくステラがいる様になったと言う所以外は村にいた時と変わり映えしない風景と言える、僕は定めていた回数を振り終えた所で一度休憩を取る事にした。
「お疲れ様トラ君」
「どうも、ステラは見てるだけで退屈しないのかい?」
「ううん、トラ君の格好いい所をずっと見れて楽しいよ」
「さいですか」
ステラが小走りで僕に駆け寄って来る、その手にはタオルが握られており僕に労いの言葉と一緒に手渡してくれる、御礼を行ってから受け取る。素振りをしている姿は果たして格好のいい所なのだろうか疑問だが。そんな風に休憩をしていれば。
「ティグレ君、貴方にお客様よ」
「僕に? どちら様かな」
「ロビーの方で待たせてるから、上着を着てから行きなさいね」
「わかりました」
ハンナさんが僕を訪ねて来た来客が来たと知らせに来た、珍しい事もあった物だ。この街の知り合いでわざわざ会いに来るような人物はさだめしクアード先生か?
そう思いながら、上着を着てロビーの方に行けば、予想だにしていない人物がいた
「こんにちは、ティグレ様、それにステラ様も」
「ひ、姫様が何故ここに」
「こ、こんにちは」
「ティグレ様とお話がしたくて来たのですよ」
優雅にコップを傾ける橙髪の少女がそこに座っていた、彼女の座るそこだけ、場末の宿とは違う上等な屋敷を思わせる雰囲気が漂う、なんだって姫様が僕に。
ついてきていたステラも委縮して僕の背中に隠れてしまっている、隠れたいのは僕の方だぞ、一介の田舎者に姫様から守る騎士と為れと言うのは酷ではないかい。
「さ、左様ですか」
「どうぞ、立ち話では長くは話せないでしょう、椅子はあるのですから、お二人ともおかけくださいませ」
「し、失礼致します」
「……ます」
なんとか、姫様への返事をする事が出来た僕へ、姫様は対面の椅子を勧める。
話がしたいと言う姫様を無碍に返せばどうなるか分かったものでは無い。
どもりながら対面に座る事にする、しかし話とは一体何なのだろうか。
「義姉様、ティグレ様とステラ様にもお茶をお願い出来ますか」
「お茶菓子も出すからちょっと待っててね」
「義姉?」
「あら? ご存じありませんでした、冒険者の宿は私の兄の一人が亭主をその副亭主のハンナ様は兄の奥さん、つまり私の義理の姉に当たりますわ」
「そういう事、はい、ゆっくりしてってね、キャシー」
「ありがとうございます」
確かに姫様の兄の一人である王子が冒険者の宿の亭主をしているのは知っていた。
だがハンナさんについては何も知らなかった、衝撃の事実に僕は面食らう、何故こう僕の周りには大人物が集まるんだ。しかも知らずとはいえ、朝食から夕食まで食事の面倒も見て貰っていたんだが。
これからは自分で台所を借りて準備しようと思った。さて、衝撃の事実に狼狽するのは後にしよう、とにも今は。
「その、僕……私への用事とは一体何か、お聞かせ頂けますか?」
「はい、ティグレ様をお誘いに来たのです」
「お誘いですか」
「はい、海外文化勉強会と言う学友会の会員になりませんか?」
異世界侠客道!! 老龍と若虎 HIRO @iaiaCthulhu1890
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