試験終了

「ここ……は」

「起きたか」

「貴方はクアードさん?」


 知らない天井で目が覚める、目を覚ます前の事を思い出せば、すぐに思い出せた。


「試験はどうなったんですか?」


 僕は最後ルーズ君の魔法、おそらく魔力を斬撃に変化させた攻撃に脇腹を思い切り抉られたのだ、そして勿論出血、その出血に驚きその場で倒れ、おそらくここは。


「試験は中断、おまえは学園の医務室にルーズは親御さんに連絡して帰らせた」

「再試験等は」

「特に無し、ルーズの最後の一撃の前に時間は既に5分が経っていた、あの模擬戦の結果をそのまま試験とする、だがまぁルーズは……」


 おそらく、刃傷沙汰を起こしたルーズ君は試験がどうであろうと不合格となる事が決定しているのだろう、僕はどうなのだろうか、明らかに相手に実力を出させる事を妨げる妨害行為をしながらの戦闘だ……褒められた内容ではないのでは無かろうか。


「俺の私見だけで言えば、ティグレが教わった武術、戦い方は実践、それも対人戦に特化した代物だろう、長棒の連打に急所を狙おうとして止めてる攻撃があった、人間の急所を完全に把握してないと出しようのない攻撃も出かけてたしな、最初の長棒の一撃も、本来、伸ばした時は顔面か股間を突くものだろう」


 クアードさんは僕の武術を褒めてくれた、確かに先生は僕に魔物等ではなく人との戦い方を教えてくれた様に思える、人体の急所の箇所や、どうすれば効率よく武器を奪い、一方的な戦運びが出来るのか、まるで僕がいつか人と戦うだろうと思いながら教えてるかのように。


 藪蛇についても正解だ、先生から習った訳じゃないが、藪蛇で不意打ちをするならば、顔面か股間を突くと言うのが最も威力を発揮すると思っている、それに避けられても頭ならそのまま振り抜き首へ、股間なら足払いに繋げれると思うと先生にも話したら。


「そりゃいいのう、と、先生は行ってくれましたね」

「お前と言い、その先生と言い、平然とエグイ事を考えるな、とにかく親御さんを今呼んでるから、しばらく寝てろ」

「わかりました」


 クアードさんにそんな事を言われながら、僕が小一時間昼寝をしていれば。


「どうも、息子を迎えに来ました……って、クアード」

「ああ、この度はこちらの不手際で……って、お前ジャガーか」

「クアード、帰ってたんだな、それに教師か」

「まぁな、と、俺の事はいい、ティグレはジャガーの息子だったのか、怪我は魔法で治療済み、失った血の分の飯食えば、平気だ」

「そうか、ティグレ、立てるか、立てないなら、おぶるぞ」

「大丈夫だよ、父さん」


 父さんが医務室に入ってクアードさんを見ると目を丸くしていた、それはクアードさんも同じで、父さんを見て同じような顔をしていた、二人は知り合いの様だ。

 ただ、クアードさんはそれについてはすぐに切り替え、僕の容態を父さんに伝える僕も父さんに心配はかけまいとベッドから降りてしっかりと立つ。うん大丈夫、少しボーっとするのは血が足りてないだけだろう、それよりもショックは。


「僕のパーカー……着替えすればよかったな」


 帰り道に僕はぼやいてしまう。僕が今着ているのは父さんが替えに持って来てくれたシャツ、手には大きな切り痕のついた母さんと選んだお気に入りのパーカー、

 縫い合わせればまだ使えるだろうが、僕にそんな技術は無い、新しいの買うかな。


「試験は全部終わりだな、結果が出るのは来週だったかな、それまでは父さんと観光でもするか!」

「そうだね、なぁ、父さん、新しいパーカー買ってよ、駄目になってさ」

「いいぞ、何でも買ってやる、おまえには一番構ってやれなかったしなぁ」


 まぁ、切り替えて行こう、試験はもう終わり、泣いても笑っても、全力は出した。

結果が出るまでは、父さんと遊ぶことにしようかな。






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