魔法の修行

「と言う訳で、母さん、具現化魔法について教えて下さい」

「えぇ……」


 先生との魔法についての復習の翌日、僕は母さんに頭を下げていた、というのも。

 先生は何か用事があるらしく、1月と2月の間の稽古を休みとすると言った。

その間は朝に自主稽古を欠かさない限りは、魔法の使い方を調べる也、学ぶ也するといいと言われて、じゃあどうするかと考えた時、真っ先に浮かんだのが。


「母さん具現化型だろ、何かコツなり、そも魔法を教えてくれたり出来ない?」

「そうねぇ、基本程度とアイデアなら教えられるけど、それだけよ」

「それだけでもいいよ」


 母に教わると言う方法であった、母はやはりと言うべきか快諾してくれて、二人で向かい合わせでテーブルを囲む。


「具現化の基本はすることよ」

「理解すること?」

「っそ、ティグレ、剣ってどういう物かしら?」

「そりゃ、剣は剣だろ、振って当たれば、人でも物でも、ずんばらりって感じの」

「形や重さは? 何の素材で出来てるの? 触った感じはどうかしら? 舐めた時にはどんな味? 装飾はどうなのかしら? 切れ味は? 鍔はある?」

「いやいや、なんだってそんな話に……ああ、そういう事か」

「ジャガーとレオン以外はうちの家族は察しがいいわよねぇ、早くて助かるわね」


 母さんの矢継ぎ早の質問攻めに理解がいった、それに対して兄さんと父さんを引き合いに出して褒めてくれる、別にあの二人は馬鹿って訳じゃないと思う。ただ、割と考え無しで突っ走る所はあるけれど。


 まぁ、兄さん達の話は置いといて。具現化の肝はどうやら作りたい物についてどこまで理解しているかが重要だと言う事なんだろう。

 剣一本にしても、形状、重さ、材質、隅々まで理解して初めてまともに作れるって訳か、でもそれって。


「やるにしても割に合わないよね、それらを調べるよかその時間で働くなりして剣を買って、稽古をした方が断然いいと思うんだけど、違う?」

「違わないわよ普通に剣を使うならそっちの方がいいわ、だから大体の人はそう答えるの、具現化魔法が不人気な理由でもあるわ、過程と結果が割りに合わないのよね、以上、具現化の基本でした」

「これだけか、説明は単純でもやれと言われたら複雑だね、こりゃ」

「説明は簡単よ、やるとなると難しいのよ、ただ一応コツを言うなら思い入れのある物なんかや構造が理解しやすい単純な物程具現化しやすいと思うわよ」

「思い入れに構造の単純な物ねぇ、まぁ、街でもぶらつきながら考えて来るよ」

「そう、高級住宅街の方には近づかないようにね」

「わかってるよ」


 こうして母さんからの説明と基本を聞いた僕は、とりあえず何か別に分かる事が無いものかと、今度は街に繰り出す事にする、姉さんも言ってた図書館なら具現化魔法についての魔法書の一つや二つ見つからない物かね。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



「駄目……か」


 家から図書館に場所を変え調べものを続けかれこれ昼を周った。

そして見つけた物は、母さんから聞かされた物が少し書かれた程度しか書かれてない別の型の魔法書ばかり。


「司書さん、具現化型の魔法について書かれた魔法書って無いんですか?」

「あら、ティグレ君、そうねぇここで勤務して10年経つけど、見た事無いわね」


 司書さんはこの街以外でも有名な魔法使いであり学者らしい、昔から通っていた姉さんを通して僕ともこうして仲良くしてくれる気さくなお姉さんだ。

 お姉さんと言うには少々歳が……おっと、睨まれた。そして肝心の具現化型の魔法書についてはやはり知らないそうだ。

 とは、魔法使いが自分の使う魔法についてを記した書物の事だ。

昨今の魔法の勉強はこの魔法書を用いて行われている。先生が言うには昔は紙の大量生産も印刷技術も製本技術も無いから、魔法と言えば自分で作りあげるか、魔法使い自身に弟子入りしなければ、使えないものだったそうだ。

 

 先生の昔は大分昔だ、大体100年だとか200年前だとか、それこそメリエル公国が建国された当初の時代の事をさしていたりする話とかにまでさかのぼる。これ以上は余談になるな、さて魔法書は無しかぁ。


「となると、自分で編み出す他ないのか、母さんのアイデアに乗っかるかなぁ」

「ティグレ君は具現化型なのね、苦労するわよぉ、具現化は……あまり子供には言わない方がいいかな、とにかく頑張ってね」

「? まぁ、色々考えるとしますよ」


 司書さんが最後何か含みのある言い方をしていたが、何だったのだろうか。

これ以上は、図書館で調べ物をしても意味は無さそうだし、折角街に出たんだし。

 一仕事していくか……




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