メリエル公国とその大陸

「うむ、もう来ておるとは寒いのに意欲があるのう」

「寒いのならばうちでやります? 暖房ありますよ」

「あまり暖かくしてると眠くなって仕方ない、ここがよいのじゃ」


 昼を食べ終わって秘密基地に来ていくらか待っていれば先生が寒さに震えながら秘密基地の中へと入って来る、一応ボロ布ではあるが風除けをつけ、古いが毛布もあるまあ、それでも寒さは厳しいというものなのだ。


「さてと、それじゃ今日も座学を始めようか、まぁお前さんも来年には学校じゃて。それに年相応の読み書きと算術は教えた、学校までのこの時間は復習に当てる」

「それなら、身体を動かしません? 寒いですし」

「座学からは逃さんぞ、それじゃそうじゃの、この国について一通り話してみせよ」

「押忍、この国ですね、この国は……」


 特別教える事が無いのなら、身体を動かす稽古をと思ったが、座学からは逃れられなかった、最初はこの国についてを一通り話せと言われるので、語る事にする。


 この国の名前はメリエル公国、首都も同様にメリエルと言う名前だ。約300年前に初代大公メリエルが大陸北部に興した国と言われている。人口およそ7000万人。


 政治体制は大公を国家元首として、その他領地を持つ貴族と呼ばれる物がいる。

そして彼ら大公と貴族は公国法で定められた義務を為し規則を遵守しながら国を運営しなければならない事が決められている。

 この公国法は公国の民にも遵守が命じられており、公国法の定めた義務を為す事で自信の自由及び権利の主張を認められている。

 破れば、どのような身分であろうと罰則がある


 さて公国法という物が何ぞやと言えば、それは約100年前の出来事に遡り、当時の大公が貴族の腐敗を察知し一掃した所に始まる。


 当時の大公はこのままではきっと同じ事が近い未来に起きるだろうと危惧し。後に有識者や信頼のおける貴族などで、やらなければならない義務の明確化、強権を抑止する為に遵守する決まり事、その他に平民にも義務を提示し、それを守る限り、国民としての保証と自由そして権利の主張、その他、まぁいろいろとつづった法則だ。


 正直、全部覚えてるのはそれこそ、名のある貴族や大公、公国法を扱う職業に就く人とかくらいだと思う、だって全部つづられた本が確か父さんの手の平と同じくらいの分厚さの本になるし。


 ちなみにこの公国法は現在も大公と貴族及び有識者達によって、改案と改善が随時なされていたりする、その度に本が改訂されてると思うと、大変だろうと感じる。


 主要産業は平野部が多いという事もあり農業と酪農が盛んだ。また東と西の一部が海に隣しており漁業についても盛んである。首都についても海に面した場所だ。


「こんな所ですか? 後は古くから黒髪の大罪人の話が有名で。そのせいか別大陸や隣国の黒髪も避ける傾向にあり。積極的な交易は国の上層部の意識改革が進み始めてここ1年程でようやく始まったって所ですかね」

「うむ、黒髪がこの国じゃ忌避される理由を5年前は知らずにお前さんはよくその髪を晒してたのう」

「ありましたねぇ」


 黒髪の大罪人と呼ばれる存在はまだメリエル公国が出来る以前のこの大陸の現在のメリエル公国がある場所の国からこの大陸全土を破滅と混乱に陥れんとした存在らしい。その男は多くの国と人々を滅ぼし、大陸は一度滅びを迎えようとしたそうな。


 ただ、何があったかは分からないが、全ての人々が死ぬことなく、国こそ失われた物の大陸は滅びる事は無かった。その後、大罪人は姿を消し、二度と表舞台に上がる事は無くなった。しかし人々に黒髪の大罪人の話は未だ残り続けている訳だ。


 ただまぁ、御伽噺の元は建国以前となる程に昔なのもあって、未だに怯えてるのはメリエル公国の内陸部の一部貴族や神に仕える神官や僧侶の類くらいだ。


「まぁ自国についてはこんなもんじゃろ、では次にこの大陸の気候や地理については論じる事は出来るかの?」

「えっと、確か……」


 地理については結構危ういぞ、おおきく北部と南部に分けられるんだったな。そう地域を北部と南部に切り分ける大きな川が流れててその川の名前が……


「なんでしたっけ?」

緑河りょくがじゃ、もしくはグリーンリバー」


 そうだった、特殊な植物によって常に人間からは緑色に見える為、グリーンリバーもしくは緑河だなんて呼ばれてるんだ。で、それを超えた先はしばらくは平野と森が続くけど、南に行けば行くほど荒野にそして南西の地域は砂漠が広がってるんだったかな。それと北部一つとっても、南東部はどの国も介入してないんだった筈確か特殊な地域でその一帯は……ええっと。


「北部の南東一帯はどんな場所じゃったっけ?」

「え、ええっと……」

「原因は不明じゃが切ろうが焼こうが脅威の再生力を持つ植物が鬱蒼とする密林地帯じゃ、そんなんで大丈夫か?」

「で、でも、メリエル公国以外の地理なんて覚えても」

「今後はメリエル公国も他国との友好関係を持とうとする時代じゃぞ、甘い!」

「お、押忍! すみません!」


 地理を理解出来ていない部分を叱られてしまった、でも外国へ行くわけでも無いのだし、貿易に携わる事なんて僕じゃある訳が無かろうし、別にいいでは無いか。

と思っていれば、更に先生からお叱りを受けるのであった。


「本当は地理だけでなく、国についてもと思ったが、それは書物に纏めておく読むんじゃぞ、次は魔力と魔法の勉強と行こうか」

「押忍!」


 まだまだ座学は続きそうだ、身体を動かしたいなぁ。

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