学園

「お嬢様がメリエル学園にですか? ティグレ様、その手紙を拝見しても」

「メリエル学園と言うと王都にある国王陛下自らが理事長を務める学園よね?」

「同じ学校の名前を作る事は公国方で禁止されてるから、嘘じゃないならそこの筈だよどうぞステラさん、存分にお読みください」


 驚いた顔をするアリスさんが僕の言葉が嘘なのかを確認したいが為に手紙を見せる様に言うので渡してやる。破かないでくださいよ、これまで貰ったのは全部傷も破れもほとんど残さずに保存できてるんでとも付け加えながら。


 メリエル学園、公国の首都にあるもっとも大きな学園。それも当然の筈、メリエルとは、この国の大公の名前だ、そんな由緒ある名前を頂いている学園が大きくない訳が無いのは当然の事である。


 そしてそんな由緒ある学園と言う事もあり入学試験を受ける条件はかなり厳しく。公国でも名が通っている貴族や冒険者、富豪に有識者などからの推薦が必要だ。

 そしてその試験も座学は当然の事、なんでも現役の騎士や魔法使い、冒険者を雇いその人達と実力比べを行うのだとか。内容は人それぞれだと言うのだから、また凄いと言う他ないものだ。


「とにかくステラちゃんが頑張ってるならティグレも頑張らないといけないわね」

「あはは、追いつけるかは分からないけど、頑張るよ母さん」

「その、何故3人分なのでしょうか? ネイコ様」

「あら、今日も食べていくでしょ、お昼」

「…………頂きます」


 アリスさん手紙を見終わり僕に返してくれる。そんな風に話も区切りがついた所に母さんがパンの入ったバケットとスープの皿を用意する、それも3人分、というのもここ最近こうして手紙を届けに来たアリスさんを母さんは気に入りお昼ご飯を一緒に食べる様になったのだ、最初遠慮していたアリスさんも母さんのパンの美味しさには敵わずにこうして食事を一緒に囲んでいる。


「この後はまた昼から稽古?」

「うん、座学と魔法について」

「そう……ティグレは学園に通いたい?」

「ん~、兄さんと姉さんで学費が大変だろ、僕は街の学校で十分だけど」

「お金については気にしなくていいのよ」

「だとしても、僕みたいな才能の無い黒髪の男じゃ誰からも推薦状は貰えないだろうから、どのみち学園には通えないよ、別に学園じゃなきゃ勉強出来ない訳じゃないし僕は気にしないよ」

「そっか……」

「ご馳走様! それじゃ、先生が来る前に先に稽古場に行くよ」

「ええ、いってらっしゃい」


 母さんが食事をしている最中に僕の学園についても聞いて来る。先生にも言った様な事を聞かせれば、母さんは少し寂しそうに笑う。最近はアリスさん等友人も出来て子供の時の様な寂しそうな表情は減った気がするが、ここ最近、こうして学校の話になると、これである。僕は今で満足しているから、そんな顔はしないで欲しい。

 さてと、昼からはまた勉強だ、正直座学は好きじゃないんだけどね。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ティグレ様は本当に学園に行かないので?」

「それなんですが、こちらを」

「これは旦那様の推薦状ですね、それもメリエル学園への、何故ネイコ様が?」

「いつかの借りのお返しだそうです。これに後は夫と領主様も推薦状を書いて下さるので、メリエル学園の試験を受けさせる事は出来るんです、ただ」

「ティグレ様は、現状で満足していらっしゃると」

「ええ、後一つ、何かティグレを押す物があれば……」

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