ステラの事情
ステラを送り届けた後、帰ろうとした矢先にステラの父さんに呼ばれてソファに座るように言われ座ると、ステラの父さんは頭を下げました
「この度は娘がご迷惑をおかけしました」
「気にするでない、儂は何もしとらんしの、礼はトラにだけでよい」
「ぼくも、おれいをいわれたくてやったことではないので」
「何とも欲のないご老公と少年でしょうと言いたいのですが、商人として一人の大人として礼の品も用意できないのは心苦しく」
「なら、今は貸しじゃて、トラが大人になれば入り用になる日も来るじゃろう、その時に返せばよい」
「ふむ、貸し一つ、大きな貸しになりますかねぇ」
「ならんじゃろ、こいつは策を弄して欲を満たそうとする奴にはならん」
「その、ほんとうにおれいなんていらないのですよ」
「……そのような気はします」
「じゃろ」
二人して僕を見て何の話でしょうか、しかし御礼をしてくれると言いますけど、僕はただ友達を家に泊めただけなのです、御礼をして欲しい訳ではないのです。
「じゃが気になる事が、嬢ちゃんはこの後どうなるんじゃ? このままだとまた窮屈な暮らしに逆戻りじゃと思うが」
「それですが、ステラは今僕が拠点にしてる方の街へ連れて行く事にします、妻とは距離を開けるしか今出来る選択はありませんから」
「まぁ、それが妥当じゃろなぁ、で、どこまで行くんじゃ?」
「ステラとステラのかあさんはおわかれしないといけないのですか? なかなおりはできないのですか?」
「……今はまだ無理だろう、2人には……妻には時間が必要なんだ」
「ふむ? それは爺と子供が聞いてもいい話かのう?」
ステラの父さんはステラをこの街から別の街に連れて行ってステラの母さんと離れ離れにしようと考えていたそうです、でもそれではいつまでも仲良しにはなれませんそれはとても悲しい事です、なのに何故離れ離れにしようとするのでしょう。
先生も気になってステラの父さんに聞かせて貰うことになりました。
「妻には姉がいてね、才女と呼ばれるだけの溢れんばかりの才能と別に、高い魔力の素養を持つとされる髪色の一つである青色の髪を持つ人だ、両親は妻の姉ばかり褒め妻に対してhs姉を引き合いに出して散々に言っていたそうだ、だからだろうか姉が怖いそうでその姉と同じ髪色を持つステラの事も怖がってしまっているそうだ」
「それはステラはなにもわるくないじゃないですか、ステラがひどいことをいわれるりゆうにはなりません! そんなのはまちがってる!」
僕は話が終わったと同時にステラの父さんに問いかけました、何故正しくない事を正そうとしないのでしょう、それは違うと、僕のその言葉にステラの父さんは寂しそうな笑みを浮かべて話を続け始めました。
「少年、君のいう事が本来正しい言葉なんだろう、だがね、人に心、感情がある限り正しい言葉で救われる事なんてものは無いんだ。だからこそ妻も苦心しているんだよ頭では妻もステラを大切な娘だと分かっている、だが心がどうしてもステラを見ると姉を思い出してしまうんだそうだ、ご老公は分かって貰えますかね?」
「理解は示してやるじゃて、出発は何時頃じゃ? 今の商売の拠点は何処じゃ?」
「出発は夏の終わりを、今の拠点はメリット領と言う場所です、元々妻はメリット領の領主の娘でして」
「貴族としては最近名の通る商人となったお主を囲んで家を大きくしたかった訳か」
「ええ、元々孤児で大きな伝手が無かった私としても貴族の後ろ盾が得れると言うのは大きな役得です、まぁそれだけで妻と結婚した訳では無いですが」
「そうか、出発の際はトラと見送りをしたい小店通りにある民宿まで連絡を寄越して欲しい、それではお暇する。トラ、立つんじゃ帰るぞ」
先生は僕を制した後、ステラの父さんがいつ出発するのやら、何処へ行くのやらを聞いてから自分の今泊っているであろう民宿の場所を行ってから立ち上がりました。
「せんせい、ですが」
「返事は押忍じゃ」
「…………おす」
僕はまだ話がしたいと思い、食い下がろうとしましたが、立ち上がり僕を睨む先生にただただ、返事を返す事しか僕は出来ませんでした。
「あ、ティグレくん! きょうはもうかえるの?」
「あ、ステラ……ええ、おはなしはおわったので」
「あのね、またあそびにいってもいいかな? こんどはアリスもいっしょに」
「えっと……あー……」
「父君に許可を貰ってならば幾らでも遊びに来ると言い、トラ、嬢ちゃんが遊びに来た日は訓練は休みじゃて、たっぷり森を案内してやるんじゃぞ」
「え!? お、おす」
帰り際、メイドさんを連れたステラが小走りで近寄って来てまた遊びに来てもいいかを尋ねられます、それに対して僕がすぐに返事を返せないでいると代わりに先生がいつでも遊びに来るといいと返事を返し僕に案内をするように言ってきました。
ステラはそれを聞くと僕達にまたねと言ってから、嬉しそうに今度は先ほどまで僕がいたステラの父さんのいる部屋へと小走りで去って行きました。
「さて、折角じゃ昼飯でも食って帰るかのう、何でも食っていいぞ」
「……おす」
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