三度の街中

 街の中に入るのは三回目です、いつも通り門から入っていきます後に聞いたのですが、ここは裏門で正門はこことは別にあるそうです、だから随分と閑散としていたのですね。先生は今日は僕がいるから裏路地を抜けていくかと細い路地を歩きます。


「ステラのお家はどこ等辺にあるのです?」

「この街の高級住宅街じゃな、名のある分限者じゃったよ」

「ぶげんしゃ?」

「お金持ちって事じゃて、ここからはちと通りに出るぞ」


 ステラのお家はお金が沢山あるそうです、ちなみに先生が言うには街の外とは言え平屋建てであの大きさの家を持ってる僕の家も相当にお金持ちなんだそうです。

 あんまりそんな気はしません、それとも僕があまり物を買わないからでしょうか?

先生は裏路地から出て大きな通りに出ます、母さんや先生と来た通りとはまた違う道です、なんでもこちらは戸建ての建物に店がある大店しかない通りなんだそうです。


「ここを超えれば高級住宅街、嬢ちゃんの家もそこじゃろ」

「う、うん」

「なんというか、お高そうな服を着た人ばかりですね、僕等浮いてません?」

「そうじゃろな、フードの少年と珍妙な稽古着の老人が少女を連れとるなんて、憲兵に突き出されてもおかしくないわい」


 大通りを歩いていると、こちらを見て僕と同じくらいか少し年上の子供連れの女性や男性がこちらを見て、ひそひそ話です。先生は気にしないで堂々としています。

 よくそこまで堂々といられるなぁと感心……いや、僕も堂々と行きましょう。

ステラをお守りする為にも、そうするべきです、フードはつけたままで。


「さてと、ほれ、あそこに見えるのが嬢ちゃんの家じゃろ」

「うん……」


 大通りも抜けて、ステラの家がある高級住宅街のある所までたどり着きます。

庭先をちらりと除けば母さんくらいの女の人が数人で紅茶を飲んでいたりしています先ほどの通りもですけど、本当に場違いな感じが否めません。


 先生はここでもやはり堂々としており、ステラの家への道を行きます。

ステラのお家は二階建てで僕の家よりも大きくお部屋も多そうだと思いました。

それに鉄の門があります、とても重そうで僕では開けそうもありません。

ステラもやはり開けず、先生に開いて貰い庭へと入っていきます、そして。


「た、ただいま」

「おかえりなさいませ、お嬢様」

「なんじゃ、待って居ったんか、女給さん、おはようさん」

「ええ、おはようございます、約束を守っていただきありがとうございます」

「その、アリス、ご、ごめんなさい、おこってる……よね」

「ええ、怒っておりますとも、ですが、そうまでして街を出たい理由があったのですよね、私にお聞かせ頂けますか、外であった事を」

「う、うん、あのね!」


 庭には前に才能鑑定の時にあった、女の人が立っていました、どこか冷たい雰囲気を感じさせる、なんというか、表情のない人と言った感じです、ただアリスを見る時の目だけはとても優しく笑顔です、思えば才能鑑定の時もそんな感じでした。

 アリスにはとても優しいと言う事なのでしょう。


「セン様とそのお弟子様は旦那様が呼んでおります、どうぞお屋敷の中へ」

「相分かった、入るぞトラ」

「え、あ、はい」


 送り届けるのは終わりましたし、もう帰るのではと思いましたが、どうやらステラの父さんが僕らに会いたいのだそうです、どんな話があると言うのでしょう。

 何も聞かされないまま、屋敷の中へ先生の後をついて入っていきます。屋敷の中はやはりと言うべきか、絨毯が敷かれてお高そうです。アリスさんはステラを連れて別の部屋へ僕らの案内は別の女給さんがしてくれて。僕らはステラの父さんのいる部屋の前に立たされました。


「旦那様、セン様とそのお弟子様をお連れしました」

「入って貰ってくれ、君は席を外してくれて構わない」

「かしこまりました、それでは、どうぞごゆっくり」

「うむ、失礼するぞ」

「しつれいします……」

「やぁ、ようこそ、センさんとそのお弟子さん……お名前は?」

「てぃ、ティグレと言います」

「そうかい、私はステラの父親で名前はジョージ・シャンプーと言う、まぁそう緊張する必要は無い、ソファに座って、まずは紅茶の一杯でも啜ってくれよ」


 僕の前には凄い背の高い人が立っていました、先生も下手したら父さんですら優に超えそうな程の背です。ただ線は細く、先生や父さんのように逞しくは無さそうです腕っぷしだけで言うなら、2人の方がお強いでしょう。声も柔らかく優しそうな感じです。これがステラの父さんですか。先生はステラの父さんに勧めらたソファに座り紅茶をすすります、何というかどこまでも堂々としていますね先生。緊張と言う言葉が最も似合わないお人です。


「君の先生は席に着いてくれた、さぁ、君もどうぞ」

「は、はい」


 一体、この人は僕と先生になんの話があるのでしょう。





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