お泊り、帰宅

 僕がお家に帰って来て、ドアをノックすると父さんが出て来ました。

僕がいつのまにかお家から出ているのにも大層驚いてましたが、後ろにいるステラを見れば更に驚いていました。


「家出ねぇ、俺もやったけど、ステラちゃんの歳ではないなぁ、度胸あるな」

「ジャガー、家出は褒められた事じゃないのよ、それにティグレも、言ってくれればいい物を」

「あの、ティグレくんはなにもわるくないんです、ぜんぶわたしのせいで」


 父さんも家出をしたことがあるそうです、ですがステラくらいの小さい時ではない為ステラの事を褒めています、確かに夜の森で泣かないでいたのは凄い事です。

 ただ、その反対に母さんは少し怒っている様子です、ステラの家出についても相談してくれればよかったものをとぼやきます。そのぼやきにステラが僕を庇います。


「はぁ、セン様は何か言ってなかったの、ティグレ」

「えっと、まちにいくと、ステラのことはまかせるって」

「ステラちゃんの家に話をつけにいったのかもな、明日あたり家に来るだろう、その時に話を聞けばいい、ステラちゃんは今日の所は家に泊っていけばいい、いいよな」

「いいも悪いも、女の子を森に放っておくだなんて可哀想でしょ、とりあえずお風呂に入りましょ」

「その、ごめんなさい」

「ステラさん、こういう時はありがとうっていうのよ」

「は、はい、ありがとうございます」

「じゃあ、ぼくはもうおそいのでこのままねますね」

「森に入ったんだから服も手も汚れてるわよね、洗ってあげるから来なさい」

「うぎっ」


 先生が何か言ってなかったのかを尋ねられるので、話せば父さんは何か判っているようです、ステラが家出した事をステラの家に話に行ったんだろうとか。

 ステラは家に泊っていくそうです、母さんに連れられてお風呂へと向かいます。

僕はそのまま寝ようと思ったのに、母さんに肩を掴まれ連行されます、お風呂あまり好きじゃないんですよね。あの泡が目に入りそうになるのが怖いんです。

 こうして、母さんと三人でお風呂をすませた僕らは今日は兄さんを起こさない為に父さんと母さんの部屋で寝る事になりました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「か、母さん! ティグレが部屋にいないんだが!」

「あ、にいさんおはようございます」

「え? あれ、なんてティグレがそこに」

「えっと、は、はじめまして、おはようございます」

「あ、はじめまして、って誰だ、ティグレその隣にいる子は」


 翌朝、兄さんがリビングのドアを大きな音を立てて入って、僕がいないと叫びますまぁ、いつも兄さんの方が早く起きて起こしてくれてますからね、いないとなれば驚くのも無理は無いでしょう。そしてステラが兄さんに挨拶をすれば、少し呆けながらも挨拶をしてから誰かを僕に尋ねてきます。


「ふーん、まぁいいや、俺はレオン、ティグレの兄だ、よろしく」

「おはよう母さん、なんか今日は朝から賑やかね、兄さん」

「ああ、おはようサーバル、いやティグレが友達を連れて来ててさ」

「へぇ? ティグレの友達、私サーバル、よろしく」

「は、はい、そのよろしくおねがいします」


 ステラの事を紹介していれば、寝癖だらけの髪の毛をかきながら姉さんもリビングに入ってきます、多分兄さんの大声につられて起きたのでしょう。姉さんもステラに挨拶をしながら席に着きます、そういえばうちには椅子は5つだけです、これでは。


「おう、うちの子は皆早いな……俺の席は?」

「ジャガー、今日は立ちながら食べて頂戴ね」

「了解、ステラちゃん、遠慮せずに一杯食べていいからな」

「は、はい、いただきます」


 最後に入って来た父さんの席は空いておらず、父さんだけがリビングで立ちながらパンを齧る事になってしまいます、本来なら連れて来た僕がやるべきだろうと変わろうと思いましたが、行儀悪いから僕はきちんと座って食べなさいと言われました。

 父さんはいいのでしょうか?


 やがて、皆食べ終わると父さんは仕事に兄さんは街の道場へ姉さんは今日はお家で本を読む事にするそうです、そして僕とステラなのですが。


「せんせい、きませんねぇ」

「そうだね」


 家の前に立って、先生が来るのを待っていました。何度か二人で同じような事を呟き合っていれば、案外早くに来てくれました。


「なんじゃ、2人して待っておったか」

「おはようございます、せんせい」

「うむ、おはようさん、それで嬢ちゃん、帰る気にはなったかい? 女給さんも父君も心配しておったよ」

「うん、え、おとーさんが」


 先生は僕らが待っているのを見てそう言います、昨日会ったことを話せば、先生も昨日していた事を話してくれました、父さんの言う通り先生はステラのお家に入ってお話をして、終わった後、いざ迎えに行こうと街の門に向かったら閉まっていたそうです、行き倒れていた時もですが、先生は結構なうっかり屋さんです。

 

「そうじゃよ、あの女給中々切れ者じゃて、父君が帰る日を見計らって嬢ちゃんを外に出したんじゃろうな、して、帰るか? 帰らないか、どっちじゃ?」

「かえります、かえって、アリスにごめんなさいしたいし、おとーさんともおはなししたいです」

「うむ、ではトラよ今日の稽古も休みじゃて、自主練でもよいし、家でゆっくりしているがよい……って、なんじゃフードなんて用意してからに」

「ぼくもごいっしょするためですよ」


 母さんからは街で揉め事を起こさない事と先生の言う事を聞き、フードを絶対に街で外さないなら、行って来ても良いと言われました。


「ふむ、よいじゃて、ではついてくるんじゃ、トラ」


 出発です、ステラをお守りする為にも頑張らないとです。

 



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