第5話

窓から見える池には赤と白の睡蓮が咲いていた。


そこから見せる景色には彼女の心を沈ませる作用があった。

遠くに並ぶ木々たちもそよめいていた。


彼女は心の中で思った。


今頃、アスターたちは心配しているだろう。


過保護な彼たちのこと、当然に当たる理だった。

外を出ない暮らしが心を痛めつけて彼女は冷静な判断ができなかった。

痛めつけている最中には愛しいトモルの顔があった。


 その顔が見れたのだから夢か幻さえ際限が付かなかった。彼女はただ静まり返る池を見下ろして、せめて行ってきますの一言でもかければよかったと悔いた。まあ、そんなことを言ったら舟にのることさえ許されなかっただろう、と彼女は思った。


トモルと彼女は離れるわけにはいかなかった。トモルもミチルも恋と愛で結ばれていた。幼きとはいえ約束もあった。

 

 なおミチルの病気はここへきても同じだった。一日に何時間もベットの中にいたし、出るときは用を足すときと風呂に入る時だった。

 

 トモルはミチルを心配して医者をつけた。ところがクリセンマムの医療ではミチルの病気には追い付かなかった。トモルは他国を思った。


ミチルがくらしていたハーレクインの発展した医療なら治せるかもしれない。だがトモルの心にはそのことで彼女が故郷に帰りたくならないだろうかという葛藤があった。


トモルの苦悩は続いた。

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