第4話

 宮殿は入ってすぐ天井が丸く遠く、壁には象嵌細工ぞうがんざいくが細部にまで掘りめぐらされていた。甘美なまでの美しさにミチルは息をのんだ。


「綺麗だろう、ははっ俺の家来と言ったらほらあそこ」


 トモルの指さした場所にはミチルの面影がある鏡絵が張り巡らされていた。


「えーなにあれ」


 ミチルもつられて笑う。ひとしきり笑い合った後、トモルは懐かしそうに瞬きをした。



「あれは小さい頃に俺らと二人で撮った写真を家来たちが見て、大騒ぎで掘ったものなんだ」

「・・・・・・そう」


 ミチルはトモルの服の袖をつまんで寄り添った。まるで物事が走馬灯のようによみがえり、つい涙ぐんだのだ。


「ここがミチルの部屋だよ」


 部屋の中央に大きなロッキングチェアがあり、薄い上質なひざ掛けが天井のシャンデリアに青く照った。奥に三人寝ても足りないほどの大きなベッド。右の隅には細工入りの机と椅子。


「ありがとう、ここが・・・・・・」


 私の部屋と言い切るのにはあまりにも広すぎる部屋だった。寂しさを感じさせるほどに。


「まだ、寂しいかい?」


 そのことにトモルは気づいていたのだ。


「大丈夫、夜眠れないときはいつでも俺の部屋においで」


 ミチルは頷いた。だが、それだけでは何かが物足りなかった。

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