第6話

「アシュガ、何してるの」

「見てわからないか、クリセンマムまで行く」


 研究室一面に貼られるように書かれた青の魔方陣。

中央にアシュガがいて、チョークでクリセンマムと頭の先に書いている。


 アスターはすっとんきょんな声を上げた。


「ミチル、クリセンマムにいるの?」

「そんなのすぐにわかった。あの衣服にあの肌といったらその国しかない」


 それはトモルのことだった。トモルの姿をアシュガも見ていたのだ。余裕のある言葉として裏腹に腕は疲れで震えていた。


「アシュガ。腕、震えているけど」

「気にすんな、これは労力のいる作業だ」


 アスターは魔方陣の周りをぐるぐる回った。


「クリセンマム、僕らのこと受け入れてくれるかな」

「お前の寿命が縮んだら愉快だな」

「この、冷血漢」


 それ以上言う前にアスターは口を閉じた。魔方陣は後ひとつ線を書いただけで完成する。アシュガは額の頭を拭った。


「行くぞ、準備しろ。これ被ってけ」


 アシュガがアスターに投げつけたのはねこ用の白いローブだった。


「こんなの、暑くない?」

「うるさい黙れ、丸焦げになりたくなかったらな」

 

 小言が続く前にアシュガはさっさとローブを被った。

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