第6話 神との別れ

それから何年も経ったある日の朝。

「おっはよ〜」

私は、いつも通りゴッドの寝ているソファーを覗き込んだ。

「あれ?」

ゴッドがいない。

「ゴッド〜?ゴッド〜!!!」

どうせどこかに隠れているんだろう。私は特に気にすることもなく、朝ごはんを作った。

「朝ごはん、できたよ〜?」

返事はない。

そろそろ焦り始めた。おかしい。何かがおかしい。私の中になんとも言えない不安が襲う。家中を探し回った。トイレ、風呂場。どこにもいなかった。私は地べたに座り込んだ。

−−−なんで、嘘だ、そんなはずない!!

パラッ、と、音がした。バッ、と振り返ると、そこには一枚の紙が落ちていた。


『ずっと、言い出せなくてすまんかったのう…わしは、朱音さんの夢を叶えてしまった。え?叶えてもらってないって?叶えたじゃろ?笑顔が増えた。毎日楽しそうだったではないか。会社もやめて、今では神との暮らしという大ヒット小説を出しているじゃろ?それを見た天界のお偉いさんが、わしに、天界へ戻ってこいといった。急ですまなかったのう…悲しませたくなかったんじゃよ。でも、結果的には更に悲しませてしまったかもしれんのぅ。

とりあえず、楽しかった。楽しかったぞ。忘れないでくれ、この思い出を。お前さんならやっていける、大丈夫だ。』


涙で滲んだその手紙は、更に涙で滲んで、読めなかった。

お金を拾っただけなのに、こんなに人生が変わるなんて。お金を拾っただけなのに、こんなに毎日が充実するなんて。


『お金を拾っただけなのに』

〜完〜

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お金を拾っただけなのに みかんの木 @mikannoki

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