~最終話~ 邪悪な場所は身近に……

 カスミの通う中学校も三つ又に建てられている、二階のトイレや、体育館、理科準備室には、昔からの言い伝えとして残っている、いわゆる学校の怪談がある。


 霊のえるカスミにとっては慣れた存在でも、怖がる人も多い。

誰もいないのにドアが開いたり、物が落ちたり、少し霊感がある人には黒い影のような物をることもある。


 マユコが小さくつぶやいた、「ここに入学するはずだったの、制服だって用意してたし、憧れていた吹奏楽部に入りたかったのに」


「そやな、そりゃ行きたかったやろな、でも今言うても遅いねん、仕方ないねん」

 人の運命は誰にも分からない、死にたくなくても死ぬことだってある、それだけは誰にも止められない。


 うつむいているマユコの両眼から涙が溢れている。


 だからこそ、成仏してまた新しい命となってこの世に生まれて欲しいとカスミは思う。


 カスミは心の中で九字切りの呪文を唱える

「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前」


(りん、ぴょう、とう、しゃ、かい、じん、れつ、ざい、ざん)


 マユコが何年前に死んだのか分からない、たくさんの魂を道連れにしたのかも分からない、だけど、十分辛い目に合ってきたのだからとカスミは心を込めて最後に手刀で九字を切った。


 マユコの身体は透明から白いもやのようになり朝の光と重なるように天に昇って行く、穏やかな顔は安心したように笑顔に見える。


 天に昇って行くマユコに大きく手を振った。


 まだ誰もいない教室で、ずっと彷徨さまよっていたマユコの魂を成仏させることに成功した。


 その時、教室の扉がきしみながら鈍い音を立てながら開いた。



「カスミ、お前いつも遅刻すんのに今日は早いな」


 立花 風都ふうと、幼なじみでもある男子でカスミの相手が突然目の前に現れた。


風都ふうとこそ早いな、どないしたん? 」


「昨日スマホを机の中に忘れてることを夜中に気が付いてん、誰かに見られるのも恥ずいし、朝早く起きて取りにきた 、てかこの部屋なんか寒ないか? 真夏やのに 」


 後ろの背後霊達がくすくすと笑いながら話している二人を眺めてる。









「てかさ、風都そろそろ成仏させてあげようか? 」


「あと少しだけ勘弁してや」

 風都はスマホなんて入っていない空っぽの机の中を覗きこみながら笑った。



 了

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霊感少女カスミ~三つ又の呪い あいる @chiaki_1116

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