川の中

恐らく物書きとしての技量で測るのならば、今回集まったメンバーでトップクラスかと。
生と死をテーマとした最も文学的な内容であり、それゆえに難解です。
狸に化かされたような、他では味わえない読後感を堪能できるでしょう。

都会の子どもたちが道端の犬の死骸から「死」というものが身近な存在であると悟るように、田舎では狸の死体から子どもたちはそれを学ぶのです。
生と死はそれぞれ独立したものではなく複雑な因果関係によって結ばれており、昔からある決まり事を破ったり、生き物の命を粗末に扱ったりすることで、人は気付かぬ内に死を招き寄せているのかもしれません。掟や伝承には必ずや意味があるものなのです。
作中では…続きを読む

最後まで読んでちょっとした錯覚に陥りました。

あれ？　あ、そうか小説を読んでいたんだっけと。


読み始めれば目の前にリアルな映像が広がってくるようです。

すごく雰囲気が良くて、そんな時代を生きていないのに懐かしい気分になりました。それが怖い話とマッチしていて非常に面白いです。

その土地の土の香りが伝わってくるような伝奇ホラー小説で、伝奇ホラーが好きな身としては一気に引き込まれました。
冒頭の不穏な気配から、結末に至るまで、雰囲気たっぷりで魅せられました。
方言もエッセンスとしてよく効いていると感じます。
ホラーでありながらもどこか切なく物悲しい結末も、宮沢賢治を彷彿とさせてとても素敵です。

方言がいい味をだしてます。田舎の雰囲気がいいです。

文章うまいです。

描写が怖いです。

この物語の恐ろしさは、背景の設定がとても綿密に組まれていることだと思います。方言だけでなく、川がもたらす恵みだとか、匂いだとか、触れられたときのかさつく感触だとか。
だから物語というより、少し外れた世界のありふれた話を聞いているようなそんな錯覚に陥ります。恐ろしいというより胸が切なくなるとてもきれいな話だと思いました。