第19話 するのは口で



やれやれ。と諦めたもう一人の騎士様。


片付けがまだ終わってないので、30分後に行くから自分達の馬車で待ってて欲しいと言われ、御役所の馬車停めに先程から息を潜めて待っている。


人通りもそんなには多くないが、物音がすると心臓がドキドキする。

バレたらどうしようかと…、そんな思いでいっぱいだ…。



すると、幾分か経ってジャリジャリと二人の足音が近付いて来た。


きっとあの騎士の方々だろうと思うも、それでも違う人だったらどうしようかと、やはり不安だ。



今以上に息を潜めていると、「やあ、」と荷台に顔を覗かす騎士の方々。



何だかホッとしてしまった私は、やはりおかしいのか…。

これから身体を捧げると言うのに…。



「待たせたね。」


「いえ」


「と言うか俺は本当に待ってるから、それに驚いてるよ…」

「逃げれる時間ならたっぷりあったのに」


「逃げたところで・・・」


「それもそうか。 ねぇ、聞きそびれたんだけどさ、」


「はい、何でしょうか」



服を脱ぎながら騎士様が言う。



「君って処女?」

「なんつーストレートに・・・」


「え、は、はい…、そうです…。すみません…」


「いや、謝ることはないけど・・・。 やっぱりそうか…」

「流石に・・・、な」

「あぁ」


「え、え…?駄目なんでしょうか…?」



残念だな…。とそんな顔をするので、処女では駄目なのかと、またもや不安になる。



「そりゃ…!もし、君の初めてが奪えるのなら、俺達乱闘してまで取り合うさ…!」

「けど、マダム・ロージーや、まぁ、他の店でもそうだけど、処女の方が給料が良いんだよ。だから・・・」


「え…じゃあ…!他にどうすれば…!?私、他に捧げるものが…!」


「違うよ、君のためだ。 処女は俺達に捧げて良いものじゃない。」

「代わりに、口でしてもらおうかな」


「くち、で…?」



口で何をどうするのか、さっぱり想像がつかない。

正直、身体を売ると言ってもどんな行為をするのかも詳しくは分からない…。


誰かに、見られてはいけない、不純な行為だとしか、・・・それぐらいしか知識がない…。



そんな事をまたもや見抜かれたのか、「そもそも、何するか、分かる…?」と最初に服を脱いだ騎士様が言った。



「いえ…、すみません…、よく、知らないんです・・・ごめんなさい・・・」



謝る事しか出来ない私に、困ったように笑う騎士の方々。

その表情は、いつかのエリック様を思い出してしまう…。


まだ私の胸の中には、あの夢のような時間が流れている。

ずっと忘れないまま、色褪せないように、今はそっと大切に仕舞っておこう。

目の前の、騎士様達に失礼だから…。



「じゃあ・・・、勉強だと思って…、教えるから、言う通りにしてよ…」


「はい…」



勉強・・・。

そんな言葉、頭の隅にも浮かばなかった・・・。


けれど…、勉強・・・、そうか…。

私も少しは自分で知ろうとしなければいけなかった…。

何も知らぬまま働かせて貰おうだなんて…、また私は烏滸がましい真似を…。


騎士の方々には後で感謝しなければ…。



「うわ、お前勃ちすぎ」

「仕方ねーだろ…! そりゃこんな子目の前にしたらこんなんなるぜ…!?」

「はいはい」

「ゴッホン…! えぇと…、じゃあ・・・まず、コレを、両手で優しく握って・・・」


「…はい・・・」




それから私は騎士様の言う通りに、手を動かし、舌を動かし、それから口に目一杯含んだ。

難しくて最初は、何度か痛い思いをさせてしまったようだ。

「出来ればその人をたまに見上げるのが良いよ」と言われたけど、そんな余裕がなかった。


しかし段々と慣れてきて、言われた通りに、騎士様の表情まで伺えるようになった。


騎士様と瞳が交わると、「うわーやべぇ」と、苦しそうな表情を浮かべ、更には「うぅう…」と唸り声を上げるもんだから、また私が痛い思いをさせてしまったのかと思って、行為を一旦止めた。



すると騎士様は、「ッえぇえ…!?まさかの焦らしぃ…!?」ともっと苦しそうな表情をする。



「す、すみません…、苦しそうな表情をするので・・・、痛かったでしょうか…?」


「え、いや、これは、この、時の顔は・・・、気持ちが良いんだよ…!」

「ぶふっ、お前、逆に弄ばれてんじゃん」

「うるせー…!」


「す、すみません、続けます…!ごめんなさい…!」




そして二人の騎士様と私は、くたくたになって、そのまま少しだけ眠ったのだった。



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