第11話 悦の極み
死体の並ぶ教室で、同じ眼をして笑っている。いや、笑い合っている。
「わあぁっ!」
「ごめん、それも片付けといて。」
担任の遺体をシートで包み、それを車で運ぶ。生徒と違わず生を終えた肉体として同じ道を歩む。命令をする榎木の言葉は嫌に冷静で冷たく、どこか狂気を帯び、足元で作業をする遺体処理班に怖れを促した
「彼には見えないのね、私の姿。
..もしかして独り占め?」
「そんなつもりは無い、だけど予想以上だよ。ここまで拡がるとはね、君は何処まで手を広げられるんだい?」
刑事は謂わば傍観者、人を見るには警察の〝捜査〟は実に都合がいい。
「いつ気付いたの?
噂で範囲を広げるなんて、私はアナタに言った覚えは一度も無いけど」
時間を掛けて試していた、死体にも慣れる程触れ合った。噂の効果を最大限試して確認するために。
「初めに遭ったのは陽奈ちゃんの事件の時だ、母親が失踪して死亡した後父親に伝染した。それで確信したよ」
「父親に私の噂を流したの?」
「そう、するとどうだ。
娘には被害が及ばず、父親だけに狂気が満ち、死に至った」
人の経過を観察しては範囲の度合いを調べて見て回った。今回はそれが学校のクラスに至り教室を血に染めた。
「どういう事ですか?」
「..ん、あれまだ残ってたんだ。」
とうに遺体を積んで全員が教室を去ったものと思っていたが、野鼠というのは容易く人の話に聞き耳を立てるものらしい。内緒話もろくに出来ない。
「一人くらいいなくてもバレないか」
「..私が殺すの?」
「他に誰がいるの、僕刑事だよ。」
人を誰かが殺したとき、強い恨みの犯行だとか言う奴がいるけど間違いだ恨んでいるなら思って終わり、手に掛けようとは思わない。
「人を殺す奴っていうのは、軽い気持ちで簡単にやるんだ」
邪魔だったから、目障りだから、自分のやりたい事を否定されたから。
「都合悪いから〝どいて欲しい〟って思って移動させるだけなんだ..!」
だから僕は人の死に寛容だ。
モノを試したり、それを邪魔したり、そういうときに無駄に使えるように世界の人口はここまで増えた。
「人の過程や寿命は、減らして使う為にある。生きる価値は〝利用〟だよ」
「あら、科学者気取り?」
「..いいや、僕は刑事だよ。」
もっと、もっとだ..!
更なる成長を見せてくれ、その為には君を彼女の糧にする必要がある。
「漸く陽奈ちゃん、君の出番だよ..」
「……。」
「さぁ..第二幕、始めようか。」
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