第10話 殺の仕組み
「‥やってくれるわね..」
やるだけやって、刺されたら直ぐに何処かに消えた。勝手な女だよね
「..死んだのか?」
「そんな訳ない、簡単に人を殺せちゃうような人だよ。これだけじゃ居なくならないよ、どこかに居る」
..確かに、今敢えて抵抗しなかったように見えた。取り敢えず死んでおこうそんな「自己判断」をした感じ。
「みんな、無事か!?」
「..榎木さん?」
「来る途中で連絡しておいたんだ、結局遅かったみたいだけど。」
刑事より先に来たんだ、すごいな瑠夏
「これは酷いね..」
流石にこの惨状は〝見慣れる〟という状態には至らないみたい。死体のプロが引いてたよ、顔を引き攣らせて。
「..お前警察だよな?
今まで何してやがったんだよ!
皆死んだんだぞ、俺達の目の前で!」
胸ぐらを掴まれ怒鳴られながら下を向いてる、流石に返す言葉が無いみたいこんな状況じゃ当然だよね。
「もうよそう、伊勢くん..。」
「よそうって何だよ?
こんな奴に愛想振り撒くってのか!」
「刑事さんが殺したい訳じゃないよ。
..通報でもされないと、悲惨な現場には気付かない。彼も被害者だ」
人が良いとは別の感情。
〝諦め〟に近い気の持ちようが、刑事に同情を与えた。
「..けっ、くだらねぇ!
俺は帰るぜ、こんなトコいられるか」
委員長の腑抜けた振る舞いに腹を立て教室を出た。誰も止めはしなかったが、笛吹は一人虚な目で自責の念を送っていた。
「笛吹、気にしないで。
アイツああ見えて考えるかも」
「..え?」
「今より前にベロニカって奴が現れたときバイトに行けって促したのアイツだったんだよね、お陰で被害に遭わなくて済んだ。」
揶揄う素振りで言われた事だと思っていたが、今思うと「逃げろ」という合図だったかもしれないと思える。
「教室を出たのも、何か考えがあっての行動かもしれないしさ」
「伊勢くん..」
単独行動は寧ろ不死かもしれない、ベロニカは人に見せつけるのが好きらしい。一人を殺しても、そこに愉しみは何も無く、悦びも生まれない。
「絶対ェ逃さねぇぞ..!」
野放しにした人間が何処へ向かうのか誰も知らないが恐らく帰る頃には武器を持ち、啖呵を切って攻め入る気迫を身に纏っているだろう。
「皆、何度も悲しい思いをさせてしまって済まない。」
深々と退げて謝罪する。
最早何で頭を下げているかもよくわかっていないだろう、誰も悪くない。
「もういいよ、仕方ない..。」
同情の余地も無い、空虚な空洞に。
私たちは再び教室から身を引き、見て見ぬフリをして家に帰る。
かつてクラスメイトだった者たちは無機質な袋に一斉に入れられ、生命から警察の情報源に変わった。
「ふぅ..。」
「終わりましたか?」
振り向くと入り口の縁に担任の姿。
「先生、今まで何処にいたんです?」
「職員室で仕事を。
..物音が教室で聞こえましたが、面倒事は嫌いなので無視をしました」
「そう、ですか..」
とことんの無関心、軽蔑する程に。
しかし現場に出てきたところで、何が出来た訳でも無いだろう。
「原因は何ですか?
ここまで大量に、一度に虐殺されるなんて異常もいいところでしょう。」
「……」「刑事さん?」
榎木には、一つ心当たりがあったが口に出す事が出来なかった。それを察してか、担任は自らそれを口にする。
「..ベロニカ、ですか?」
「ええ、それを考えました。」
「バカバカしい、またそれですか!」
呆れられる
わかった上で言葉を続けた。
「ベロニカには、もう一つ特徴があるんです。..〝噂を広めると伝染〟する」
「なっ..!」
頭が裂け、担任の視界が歪み揺れる。
残った胴体は力無く床に倒れ血を流す
「死体がまた増えた..。
まぁいいか、生きる価値は無いし」
屑が肉片に変わる
大した変化は無いと知れ。
「ね、ベロニカ?」
「..あら。
アナタも随分と嫌な奴よ?」
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