第32話:チル VS 蚊
私はチル、エージェントチル。
そろそろマスターが帰ってきます。
玄関マットにお座りしてお出迎え。
少しずつ涼しくなってきてますけど、まだまだ暑い日が多いんでマスターはいつも疲れ切って帰ってきます。
シッカリお出迎えしないと。
「 この足音・・・・・・歩幅とタイミング・・・・・・マスターデシ! 」
ガチャ ガチャ
「 ただいま、帰ったよチル 」
『 お帰りなさい! マスター待ってたデシ! 』
「 はいはい、 ただいま 」
『 今日もお留守番は完璧デシ、異常なしデシよ! 』
マスターが頭をガシガシしてくれます、ってドアが閉まる瞬間に奴が入ってきましたね。
「 直ぐ夕飯にするから、ちょっと待っててな 」
マスターが買い物袋を持ってキッチンに移動しました、この隙に始末しておきましょう。
マスターの部屋の壁紙は白系、あいつが壁に止まればすぐにわかります、音でも追跡できますしね。
居ますね、天井近くをユックリ飛んでます。
『 さて、どうしましょうデシ。 床を蹴ってジャンプ、そのまま椅子でジャンプして・・・・・・ 』
そのあと、どうしましょう?
ウォーターでは部屋が水浸しになります、ファイヤでは火事になりますね。
2段ジャンプの後のパンチでは壁に穴が開いてしまいますし、キックもダメ。
「 チル~、御飯だよ~ 」
『 夕飯デシ! 』
夕飯の後で考えましょう。
今日の夕飯もカリカリです、これは美味しいですし『 栄養バランスが良いんだよ 』って、マスターが言ってました。
毛並みもツヤツヤになるんで、私も気に入ってます。
マスターはカレーとサラダですね、カレーは要らないんでお米を少しおねだりしましょう。
いえいえ、そんなに貰ったらマスターの分が・・・・・・まだ在るんですね?
それでは遠慮なく頂きます。
プ~~~~ン
奴が近寄ってきました、マスターの後ろ上方から下に向かっています。
あのコースだと、マスターの左手か左足を狙ってますね、どうしましょう。
プ~~~ン プ~~~ン
奴が最終コースにのりました、でも今動いたらマスターに私の事がバレてしまいます。
どうしましょう!?
「 ウルサイな! 」
シュパッ
マスターが左手を振りました、何なんでしょう?
「 よし、退治したな。 これで落ち着いて飯が食える 」
!!!
マスターの手の平を覗き込むと、奴が潰されていました。
血が出てませんから、マスターはまだ吸われて無かったようですね。
奴の羽音でマスターも気が付いていたようです。
それにしても握りつぶす、ですか。
魔法も筋力も必要ありませんね。
自分の手、肉球をニギニギしても、マスターの様にはできませんね。
まだまだ、修業が必要です。
「 チル~! アイス食べるよ~! 」
『 アイス! 今いくデシ! 』
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