第25話:チル VS G


私はチル、エージェントチル。



深夜1時、マスターがお休みになってる部屋に奴が出ました。

隠れているつもりなのでしょうが、私の鼻は誤魔化せません。


「 出てくるデシ。 そこに隠れているのは判ってるんデシよ 」


カサッ カサカサ


「 逃げるつもりデシか、無駄デシ 」


祝福を受けた私から見れば、奴の全力疾走も止まって見えます。

マスターの布団から出てトォとジャンプ、奴の前にスタッと降り立ち、横殴りして壁まではじき飛ばします。


強く殴りすぎるとマスターの部屋の壁を汚してしまうので、手加減が必要です。

壁に当たった衝撃で、奴の脚が何本が取れたみたいですが些細な問題です。


「 逃げても無駄だと判ったデシか? 」


仰向けになった奴のお腹を押さえつけ、反対側の手の平に(肉球デシですけど)ファイヤの魔法で火を出します。


「 また逃げたら燃やすデシよ? 」


頷いていますね、喋れないようですが意思の疎通は出来るようですね。


「 ここはマスターと私の部屋デシ。 二度と来ないで欲しいデシ 」


頷いていますね。


「 あなたも、あなたの子供も絶対に入ってこないこと、それが約束できるのならこのまま逃がしてあげるデシけど? 」


こいつを潰すのは簡単ですけどマスターの部屋は汚したく有りません、それにこいつを退治するだけでは、次の奴が来てしまいます。

マスターの部屋の両側をこいつの住処にして、マスターの部屋を守らせるのです。


「 約束を守れるデシね? 」


頷いていますね、でもこのまま出て行かせたら大変です。


「 さっきまで抱えていた卵はどうしたんデシか? 」


真っ青になっていますね、私が気が付かないと思っていたんでしょうか。

脚を上げて離してあげると、奴は壁際まで急いで走って行って卵を拾いあげました。


「 じゃあ、さっさと出て行くデシ 」


奴が玄関に歩いて行ったのを見送り、私はアルコールのスプレーを準備します。

消毒しておかないと、マスターにとって奴はバイ菌の固まりですからね。


シュ シュ シュ


「 なんでまだ居るんデシか! 」


ふと気が付くと、奴が柱の陰からコッソリ覗いています。

玄関の機密性が高すぎて出られない?


「 じゃあどこから入ったんデシ? 」


段ボール箱の外側に付いてた卵から生まれた?

凄いとこにいたんですね。


仕方がないんで、玄関ドアの郵便受けを開けてあげましょう。


「 ここから出るデシ。 そうそう、右の部屋はかなり散らかってるそうデシよ? 」


奴の目がキランと光りました、卵を抱えお辞儀してから出て行きました。

奴がうまく縄張りを広げれば、今年の夏、マスターはもう2度と奴の姿を見ることは無いでしょう。

他の部屋? 私はマスターのエージェントです、他の人間に興味ありません。


さて、消毒も終わったしマスターの布団に戻りましょう。

マスターはエアコンを入れっぱなしで寝て、いつもお腹を冷やしてしまいますからね。

私がお腹にくっついて暖めてあげないと。


では、お休みなさい。

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