第9話 ブライアント家の侍女
「まったくあなたも懲りないわね」
ミレーヌはそう言って、構えを取ったた。眼帯のメイドは目をギラギラさせてこう言ったあと
「今度こそ決着つけてやるわ!!」
いきおうおうとメイドはナイフを逆手に持ち替えてミレーヌに飛にかかったが、ミレーヌはそれをひらりと避けてみぞおちに膝蹴りを入れたあと、手に持っていたナイフを叩き落とした。
「これで満足かしら?」
メイドは首を振ってそのままの姿勢からミレーヌの顔面に蠍蹴りを放ったがミレーヌはそれを避けてメイドの首元に手を置いてそのままメイドををくるっと一回転させた。
メイドはコロコロとタラップから転げ落ちたが、受け身を取ってスッと立ち上がってこう言った。
「あーもう!」
スカートの下からもう一本ナイフを取り出したが、そこでミレーヌがため息をつきながら銃を素早く構えてこう言った。
「で、今日はなんのようかしら?」
観念したようでメイドもはーと大きくため息をついた。それを見たミレーヌは銃をしまった。
落ち着いた様子を見て、置いてきぼりにされていたキリュウとフィオも安心してホッと息をついた。
「ご主人様のお使いと貴女への言伝を頼まれてるのよ」
「で、何かしら?ブルースの言伝なら聞くけど」
ミレーヌはどこか面倒臭そうな顔をするとメイドはやれやれと言った顔をしてこう言った。
「戻り次第でいいから、仕事に復帰して欲しいってことです」
「なるほどね。ちょうどいいわね、私も今仕事を探してるところだったのよ。ニューアムステルに戻ったら、彼のところに行くわ」
ミレーヌはそういうと、メイドは嫌そうな顔をした。
どうやら彼女たちはなのかしら交友があって過去に何かしらがあったかのようにキリュウは感じ取れた。
完全に殺気が消えたので、フィオが場の空気を変えるように明るく高めなテイションでメイドに聞いた。
「ところでメイドさんはどちら様?」
それをを聞いたメイドはスカート掴み軽くあげてお辞儀をして自己紹介をした。
「これは失礼いたしました。私はアンジェリカと申します。ブライアント家の侍女長を任されております。どうぞお見知り置きを」
さっきとは違うメイドの口調にキリュウは驚いたが、ニコッとしたフィオがこう言った。
「へぇーやっぱりこの船にはすごい人たちが乗るのね!
アンジェラならアンかしら?
私はフィオリーナ。フィオって呼んでね。
でこっちは、キリュウ君。よろしくね」
目をキラキラさせているフィオのテイションに押されたアンはうんうんと頷いて答えた。
フィオが紹介してくれたので、キリュウはアンジェリカに向かって軽く会釈をしてどうもと一言だけ言った。
今になってメイド服を見てあることに気がついた。そのメイド服は前に夢に出てきた青髪のボブカットの少女と同じものだったからだ。
「あ、あの何か?」
ずっと見惚れていたので困った顔をしたアンはそう聞いてきた。
思わずキリュウは目を逸らしてこう言った。
「あ、すいません。以前このメイド服を着た人を見たことがあって」
恥ずかしそうにしているアンは顔を赤くしてこう言った。
「殿方にジロジロ見られるのは慣れておりませんでして...」
それを見ていたミレーヌはプププと口を押さえて笑っているのが見えた。
それを見たアンはムスッとした顔をした。
ミレーヌは微笑しながらどこかアンをからかうようにこう言った。
「あら、初々しくてうぶなこと」
「う、うるさいわねこの、アバズレ女!」
ミレーヌとアンのやりとりを見てどこかこの二人はさっきは戦いをしていたが、どこか交友がある友人同士なのかなと思った。
ワンワンと吠えるアンを高いところから平然と欠伸をしながらも見下して遊んでいるミレーヌと言った構図になっていた。
それを眺めていたらフィオが声をかけてくれた。
「あ、そうね。キリュウはブライアント家のことって聞いたことないわねよね」
「確かに。ブライアント家って何なんですか?メイドがいるってことは有名な貴族か何かなんですか?」
フィオはそれを聞いて、指で顎を抑えながら何か考える素振りをしながらこう答えてくれた。
「うーんそうね。ニューアムステルの街で一番有名な富豪というべきかな〜
確かに爵位とかは持ってないから厳密には貴族ではないけど、連合王国の武勇で名高い騎士の家系の分派とかどうとか....
とりあえず、色々な噂が絶えない人よ。
マフィアのボスじゃないかとかって言われてる人よ」
「なるほど...」
ふと頭に浮かんだのは世界観的にも、どこか古めかしいジャスが似合いそうな恰幅のいい昔の映画であったような葉巻を蒸すマフィアのドンのイメージが湧いた...
フィオは小声でこうキリュウにこう言った。
「これ秘密なんだけど、ダンナが追ってるのよ」
キリュウはそれを聞いて苦笑いをした、
多分話好きなフィオのことだからきっと親しい人にそれを話してしまっていそうな気がしたからだ。
「とにかく、行き先は一緒なんでしょ?ミレーヌもアンも仲良くしましょ」
フィオはそう言ってアンの頭を撫でたあと、タラップに登りミレーヌの背中を押した。
「こんな豪華客船に乗れるなんて夢みたいなのよ!楽しんでいきましょうよ」
ニコニコしたフィオを見たミレーヌは同じく、にっこりとしてアンもさっきとは全然大違いな感じでにっこりと笑みを浮かべていた。
「ところで、キリュウさん?」
アンは船に乗り込もうとした時足を止めて歩き始めてタラップに足を掛けたキリュウを呼び止めた。
「このメイド服に見覚えがあるってことは...
不思議です。これは最近仕入れた衣服ですし、もしかして名前からして異世界人だからそう言った能力持ちでしょうか?」
夢で見たと答えようとした瞬間だった、ミレーヌは口を挟んできた。
「それは秘密よ。いくら旧知の仲といえど教えられないわ」
ミレーヌの言葉を聞いて、アンは納得した様子を見せた。
ミレーヌには真剣な顔をしてこう言った。
「まだ、彼女の身の潔白を証明できないから。細かいことは答えないでよね」
どこか注意されたように強い口調で言ってきたので驚いたが、どうやら自分自身に関することは秘密にしておいた方がいいのだろう。
あの研究所というか工場から命かながら逃げてきた経緯もあるからだろうと妙に納得する事ができた。
「よろしくお願いしますね」
そうアンは顔色を変えウィンクをしてそうキリュウに言った。
そして4人はタラップを上がり船内へ足を進めていった。
船は以前家族旅行で乗った一泊二日の日程で航行するフェリーのような雰囲気になっていた。
笑顔がすてきな船員がいてミレーヌを見るなり、ニコッとはにかんで声をかけてきた。
「ご予約のアライアンス様ですね。二等客室を2室用意しております。部屋は213と214になります」
キーを2つ出してきたのでミレーヌはそれを受け取って、一つをキリュウに手渡した。
「私とフィオ、アンは同じ部屋で過ごすわ。キリュウ君は一人で一部屋使っていいわよ」
一瞬ミレーヌの言葉を疑ったが、それもそうかと納得した自分もいたがどこか残念に思う自分がいる事をキリュウは感じていた。
「え、でも俺一人でいいんですか?」
逃げ回ってる身であるから、一人になって大丈夫なのかなと感じつつ、
ミレーヌとしても監視すると言ってたにどこか一人部屋にするのも変だなと思ったからだ。
「大丈夫よ、この船に敵になるような人はいないわ。調べは付けてるから信じていいわよ。
もっとも、
あなたもいい歳の人なんだからプライベートってのがあるでしょ?
隣の部屋にいるから何あったら呼んでちょうだい」
ミレーヌのその言葉を聞いて、キリュウは鍵を受け取り頷いてこう言った。
「ありがとう」
そのやりとりを見ていたフィオがワクワクしてどこか興奮気味にこう言ってきた。
「夕方に二等客室用の食堂でランチとディナーができるなんて最高じゃない!!!また後でねキリュウ君!」
それを見ていたアンもどこか嬉しそうな顔をしているのが目た後、ミレーヌがこう言った。
「そうね。
一泊二日の船旅で昼、夜はついているから、食事は楽しみよね。
ね、キリュウ君?」
ミレーヌはどこか嬉しそうな顔をして、キリュウの頬を指で突いてそう言った。
「え、そうですね!」
キリュウは笑顔出そう答えた。
どことなくワクワクしている自分がいる事に感じてこっちの世界に来て初めてどこか肩の荷が降りてにっこりと本心から笑みが浮かべる事ができたような気がした。
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