第4話
「えーっと、お手伝いですか?」
「はい。あ、私
まあ、そうお願いされて、少なくとも僕に断る理由はない。それに、安茂里さんもすぐにいいよ、って言いそうだし。まあ、今日公園でたまたま見かけたよく分からない団体に声をかける時点でだいぶハートは強そうだけど。
その後笹垣さんをみんなの所に連れていく。そして僕の予想通り安茂里さんは突然登場した美少女を快く受け入れた。
安茂里さんは笹垣さんに、自宅の庭にちょっと不細工なワンちゃんがよく来るっていう設定の美少女役で撮影に参加することに。初めてやる役がそんなんで大丈夫なのかな?
まあ、笹垣さんも戸惑いつつもしっかりと演じている当たり、さすが役者を志してると言うだけはあるなあ、と思う。
そんな様子を横から見ていて、ふと思った。
学園もののラブコメって出てくるのは別に同じ高校の生徒だけじゃないなと。他の学校のヒロインというのもラノベでは珍しくないはずだ。
そう考えるのも急な展開のせいだと思う。笹垣さんの言う理由はそれっぽいけど、やっぱりどこか怪しいと思ってしまう。
やっぱり、撮影に参加したいというのは建前で、実は気になる人がいてその人と仲良くなるために近付いた……とかかもしれない。
あ、いや別にその相手が僕だなんて思ってない。普通に考えれば佐藤君とかかな。目立つタイプではないけど、結構イケメンだし。
いや、ラノベ的に行けばモブ山君かもしれない。顔は相変わらず分からないけど、ハイスペック男子はモテそうな気もするし。
そんな感じで、撮影は昨日と同じように日が暮れるまで行われた。
翌日。
同じく公園に集まり、撮影を開始しようとする僕たち。
「あれ?春子ちゃんがいないね。昨日ちゃんと場所と時間を伝えたのに」
キョロキョロと辺りを見回しながら安茂里さんが聞く。そして僕を含めた他のメンバーも首をかしげている。
「なんか用事でもあるのかなー……ちゃんと連絡先聞いてればよかった」
「……たぶんもうここには来れないぞ」
と佐藤君。どうやら何かを知っているようだ。
「佐藤君何か知ってるの?」
「ああ。遠くに引っ越すから、もう撮影には参加できないから申し訳ないってさ」
「そうなんだ。でも急ね。それなら一言あってもよかったのに。というか、それならなんで撮影に参加したんだろ? 」
「……簡単に言ってしまえば、引っ越してしまう前にどうしても会いたい人がいたから近づいたってところだな」
「ははあ……なるほどね。それにしても佐藤君もやるね。他校の美少女にモテるなんて隅に置けないじゃん」
「いや、別にその相手が俺とは一言も言ってないけどな」
「え、そうなの?じゃあ誰?」
「別に誰でもいいだろ。その辺は適当に想像しとけば」
もしかしてモブ山君の方だったのかな。いやそもそも相手が男とは限らないのか。例えば二条院さんだけど、男子だけからじゃなくて女子からも結構人気があるって聞いたことあるし。
もしかしたら自分かも……なんて少しでも思っていたのが恥ずかしくなってきた。僕にはラブコメ展開なんて早すぎたのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます