第3話

 次の日。

 放課後昨日と同じ公園に集合していた。

 昨日も日が暮れるまでカメラを回していたけど、そもそもこういう公園で撮影するのって許可とかが必要な気がする。普通に通行人とかカメラ内に入っていたような気がするんだけど、その辺も大丈夫なのかな。そんなことを聞いてみると、


「ああ、大丈夫ですよ。関係各所に許可は取ってるから」

「あ、そう……」


 今日も顔の見えないモブ山君が一言。僕の疑問はすぐに解決された。


「じゃあ今日はゾンビたちに追いつめられた主人公たち。絶体絶命のところに正義のゆるキャラが助けに来るっていうシーンからね」

「どういう状況なの?正義のゆるキャラって何?」


 僕のツッコミはスルーされ、二条院さんたちが演技を始める。

 昨日から思ってるんだけど、女子メンバーの演技上手さに驚いている。安茂里さんのよく分からない指示にも器用に対応している。


「えーっと紗季ちゃんは目の前で期間限定のパンケーキが販売終了になった悲しみを必死でこらえてる感じでセリフをよろしく」


 というような指示に対して、少し戸惑いつつもしっかりと対応し、実際にパンケーキが食べれない悲しみが伝わってくる演技をしてくるのだ。

 

「じゃあそのまま正義のゆるキャラが出てきてー」


 安茂里さんの指示に従い、僕は二条院さんたちに近付く。

 そう、僕も一応演者として撮影に参加しているのだ。――ゆるキャラの着ぐるみを着て。

 いやほんとに思ってた展開と違うんだけど。

 みんなで映画を撮るっていうのもいきなりで驚いたけど、それでもその先の展開を期待しないわけじゃなかった。まあ、僕は地味な見た目だから、どちらかと言えば裏方タイプだと思っている。そして、裏から美少女たちをサポートして行く中で、距離が近づいていく……みたいな。

 実際は、緑色のよく分からないキャラクターの着ぐるみを着て、なんかいろんな動きをしている。これで可愛らしいキャラクターならまだましなのに、見た目が恐ろしい怪物のような見た目だから、女子メンバーは少し引いちゃってると思う。

 まあ一応、


「えーっと、高橋くん?大丈夫?暑かったりしない?」

「ああ、うん、まあ。夏だったらヤバイと思うけど、この時期だからまだましかな」

「そう。もしあれだったら、カメラ回ってない時くらいは頭だけでも脱いだら?」

「それなんだけど、これ脱ぎ着がめんどくさくて、そういうわけにもいかないんだ」

「そう……」


 みたいな感じで二条院さんは話かけてくれるんだけど、これってたぶん見た目が怖いから、あんまり見ないようにしたいんだろうな。


「じゃあ佐藤君は足の小指をぶつけて地味に痛いのを我慢しているインテリヤクザでお願い!」

「いや意味わかんねーよ」


 安茂里さんのこれまた謎な指示に、すげなくツッコミを入れるのは同じクラスの佐藤君。


「そう?聡美ちゃんは普通にやってくれたけど?」

「いや、同じ風紀委員だからって一緒にすんなよ。俺は風紀委員の仕事があるからって小早川に言われて来ただけなんだけど」


 今日は用事があって来れない小早川さんの代わりに、同じ風紀委員の佐藤君が来てくれたみたいだけど、まあ戸惑うよね。

 色々文句は言いつつも、なんだかんだでしっかり手伝ってくれるあたり佐藤君も優しいんだろうな。




 区切りの良い所まで撮影を終え僕は着ぐるみを脱ぎ、休憩していた。公園にある自販機でジュースを買ってると、後ろから声をかけられた。


「あの、すいません。ちょっといいですか?」

「はい?」


 振り返ると、そこには二条院さんに負けず劣らずの美少女が立っていた。この制服たしか隣町の高校の制服だったような。


「いま映画撮影をされているんですよね?」

「え?あ、は、はい……」


 いきなり見知らぬ美少女に話しかけられてしどろもどろになりながらそう答える。いくらとなりの席に二条院さんがいるとはいえ、女子と、それもかわいい女子と話すなんて慣れてない。


「それでお願いがあるんですけど……私もお手伝いさせてもらってもいいですか?」

 



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