第2話
「映画?」
「そう、映画。といっても、そんな本格的な物じゃないんだけどね」
「えーっと、どうしてそういう話に?」
作家さんが映画を撮りたいって言うのには、何か色々と理由があるんだろうか。
「それには深い理由があるんだけどね、先週とあるアニメの再放送を見てたの。まあ、涼○ハルヒの憂鬱なんだけど、そこでSOS団が映画撮影をするエピソードがあったじゃない」
「あったね」
「それを見て私もやってみたいなと思ったのよ」
「そ、そうなんだ」
二条院さんは何の話かよく分かってないみたいだけど、アニメも見る僕は何のことか分かるので、相づちを打つ。というか、驚くほど浅い理由だった。
「それで、協力してくれる人探してたんだけど、その時に私の作品の話が聞こえてきたから、ちょっと話かけてみようかなって」
「そ、そう……」
「それでどう?二人にも協力してもらいたいんだけど……」
いきなりそんなことを言われた二条院さんは、数秒考えこむしぐさをしていたが、
「ええ、分かったわ。今日からかしら?」
「え、そんなすんなり⁉」
なぜか二条院さんは映画撮影にOKを出した。
「じゃあ、放課後集合ねー」
と言い残し、安茂里さんは自分の席へと戻っていった。
「え、僕はやるって言ってないけど、やる流れになってない⁉」
僕の叫びは普通にスルーされてしまった。
放課後。
「さ、じゃあ早速撮影にいこっか!」
「お、おー……」
テンションの高い安茂里さんに引き連れられ、僕たちは学校から少し離れた公園に来ていた。
「じゃあキャスト紹介するね。まずはメガネ委員長役の
「委員長役っていうか……うん、まあよろしく」
ほんの少し不服っぽい荻原さん。赤いメガネをかけた荻原さんは確かにマンガとかアニメで出てきそうなかわいい委員長キャラっぽい見た目をしている。そして僕たちのクラスの委員長でもある。
「そして巨乳風紀委員役の
「な、なんか説明があれね」
苦笑いしている小早川さん。実際に風紀委員に所属している小早川さんは、スタイルも良く男子からの人気もある。
「そしてなんかいい感じのギャル役の
「なんかいい感じのギャルってなによ」
素早くツッコミを入れる八重崎さん。明るい茶髪で見た目は少しギャルっぽいけど、美術部に所属している文化系女子だ。
「そして学園一の美少女役の二条院紗季ちゃん」
「……よろしく」
短く挨拶する二条院さん。というか、みんな同じクラスの人ばっかりだ。
「そして色々やってもらう高橋君です」
「色々って何?カメラマンとかそういうこと?」
「いや、その辺りの裏方作業はこのモブ山君に任せてるんで大丈夫」
「どうもモブ山モブ太郎です」
「すごい名前だね」
顔が髪で隠れているモブ山君。なんかマンガでよく見るキャラクターが実際に現れたみたいだ。
「撮影って詳しいことは知らないけど、撮影もカメラマンとか音声さんとかあと映像の編集とか色々あると思うけど、そういった作業も……?」
「うん、全部モブ山君がやってくれるよ」
「はい。一応、『高校生が映画撮影する際の縁の下の力持ち検定』の三段なので、すべて任せてもらって構いません」
「初めて聞いたんだけど、そんな検定あるの?」
モブ山君はパソコンをカタカタといじりながら何か作業をしている。よく分からないけど、すごく出来る感じは分かる。僕と同じ陰キャっぽいオーラを醸し出しているけど、もしかしてモブ山君はラノベとかでよくありそうなハイスペック男子かもしれない。
「監督及び脚本は私が担当ってことで、早速撮影スタートってことで準備はいいかな?」
「そもそもどういう内容の映画を撮ろうとしてるの?」
「それはね、本格社会派学園ヒューマンサスペンスホラーアクションパニックファンタジーバトルミステリーラブコメ映画よ」
「盛りだくさんすぎない⁉っていうか中身が全然分かんない!」
「さ、じゃあまず最初のシーンからね。まずは公園の地面に死体が横たわっているのが見つかるっていうシーンで、登場人物は主人公、主人公の友人、主婦、サラリーマン、世界征服をたくらむ組織の手下、ゆるキャラ、空手の師範代ね」
「ちょっと待って!世界観が分かんないんだけど⁉」
こうして撮影がスタートした。
学園一の美少女や、クラス委員長に風紀委員とかに囲まれている状況だけを見れば、ラブコメ主人公っぽいけど、想像してたのと全然違う展開になってることに困惑している僕に構うことなく撮影は進んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます