ラブコメにはまだはやい

安茂里茂

第1話

 皆はラブコメは好きだろうか。僕は割と好きだ。

 アニメとかラノベ好きな人はあてはまる思うけど、自分もラブコメ的展開に巻き込まれる妄想をすると思う。僕もそういう妄想をよくしてしまうのだけれど、それも仕方がない面があると思う。というのも、


「あ、高橋くん、おはよう」

「あ、お、おはよう……」


 優雅に、そして美しく僕に挨拶をしてくれたのが、僕の隣に座る二条院にじょういん紗季さき

 長くてきれいな黒髪、パッチリとした大きな目を持った可愛さときれいさを兼ね備えたような見た目。学園一の美少女と呼ばれるのも納得だ。

 冴えない男子の隣に学園一の美少女がいるという状況。テンプレかもしれないけど、実際に遭遇するとどうしてもソワソワしてしまう。

 まあ、実際はこうやってあいさつを交わす程度なんだけどね。僕の方から話しかける勇気はないので、席についた僕は本を取り出し読む。



 数分後。


「たたたたたたたた高橋くん?」

「……ん?な、なに?ケン……二条院さん」


 本を読んでいると、何やらケンシロ○の物まねをしながら二条院さんが話しかけてきた。


「え、えっと、何を読んでるのかしら?」

「あ、えーっと本です」


 しまった。緊張してしまって変な答えになってしまった。案の定二条院さんは少し困ったような表情でさらに質問を重ねる。


「え、ええ、本ね。どんな内容なのかしら?」

「す、推理小説です。推理小説が好きで……」


 アニメとかラノベが好きな僕だが、学校では推理小説とかそういうのを読んでいる。別にオタバレは気にしてないけど、ラノベとかによったら学校で読むのは気が引けるものもあるし。


「そうなのね。私も本は読むのだけれど、推理小説はあまり読んでなくて詳しくないのだけれど……ちなみにどんな内容なのかしら?」

「えーっと、事件が起きて、また事件が起きて、またまた事件が起きて、最後に名探偵が事件を解決するっていう話かな」

「なるほど。……とある山奥にある村で、昔から伝わる手毬歌にそって殺されるという連続殺人事件の謎に名探偵が挑む、っていうストーリーね」

「うん……結構有名な作品なんだけど、まだ読んでなくて……」

「ねえ、良かったら何かおすすめの作品を教えてくれないかしら」

「おすすめの作品……」


 こういう時どういう作品を勧めたらいいんだろう?ライトなミステリ小説の方がいいのかな。僕はゴリゴリの本格ものが好きなんだけど、普段読まない人に勧めてもいいのだろうか?

 とりあえず、こないだ読んだ本で良いかな。


「○×△っていう人の作品で、『すごくきれいな隣の子の電卓をペロペロしたいです』っていう作品とかどうかな」

「……どんな作品なの?」

「簡単に言えば、電卓に仕込まれた毒によって殺害された変態をめぐる多重解決もので、推理につぐ推理の展開が面白いよ」

「そうなのね。じゃあ今度読ましてもらってもいいかしら?」

「あ、う、うん。いいよ。持ってくるね……」


 学園一の美少女と本の貸し借りって……そこから始まるボーイミーツガールとか妄想してしまう。

 本を読んで、その感想を話し合ったり、また新しい本を貸してあげたり……

 隣に学園一の美少女がいるという状況が、どうしても自分を非日常的な展開へと持っていく妄想が止まらなくなる。



「ふふふ……お二人さん、ちょっといいかな?」


 僕と二条院さんの席に、ある人物が近づいてきて話しかけてきた。

 

「あら、安茂里さん。何かしら?」


 安茂里あもりふみ。僕と二条院さんと同じクラスの女子で、なんとなくお調子者キャラっぽい印象を受ける女子だ。


「いや、二人が私の作品の話をしてたでしょ?」

「「ん?」」

「いや、私作家やってるんだけど、高橋君が話題に出していた『すごくきれいな隣の子の電卓をペロペロしたいです』っていう作品は私が書いたのよ」

「え、まじ?」


 そう言えば、○×△って高校生作家とか聞いたことがあったけど……


「そ、それはすごいわね……えーっとそれで?」

 

 話の流れがつかめず、少し困惑気味の二条院さん。


「うん。二人にお願いと言うか……ちょっと映画でも撮らない?」

「「へ?」」


 話の流れがさらに分からなくなった。っていうか、何この流れ?


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