第18話 牽制から始める生活スタイル

ㅤㅤㅤㅤㅤ―― Side なつ ――



先週金曜日にこうに告白して、なんやかやした週末は実に充実した二日間だった。



――んで今日。


こうと改めて付き合うようになって学校に向かう。

これから戦いの火ぶたが切って落とされるのだ。

片方の手はこうと恋人繋ぎ。

もう片方で強く握りこぶしを作り気合を入れる。


主にこうを狙う輩からこうを守るための戦い。

気を引き締めろ!

敵は学校以外にもいるはずだ!



よく見たらすれ違う野郎が振り返ってこうを見たりしている。

いや、知ってたけど。

以前からよくあった事だけど、以前はこう可愛いからな~、なんて呑気に思ってた自分を殴りたい。

ああ、なんでわたしは少し前までこうを一人で通学させてたんだ?

はい、彼氏と付き合ってたからです。

よくよく考えれば何と危険な事を・・・・・・。

こんな事で後悔するとは思いもしなかった。

こんなにヤキモキするなんて思いもしなかったよ。

恋って本当、楽しい・幸せだけじゃないね。




学校に到着!

流石にわたしがいたからかこうに道を聞いてくる奴はいなかった。

だが油断は禁物だ! 


教室に入れば、ドタバタと凄くうるさく駆けてくる奴が。

早速かと思ったら違った。


おっちょこちょいおせっかい系女子、友寧ゆうねだ。


こう~! なつ~! ごっめ~ん!!」

「!?」

「??」

なつの彼氏に、あ、なつにフラれた元カレに聞いたんだけど、なつ、他に好きな子いたって~」


突然謝られて意味解らなかったけど、そっか、元彼から知れたのか。

まあ勘違いを生んだのはわたしのせいでもあるから友寧ゆうねだけを責められないよな。


お節介な部分があるけど、今回はそれでちょっと拗れたんだけど、仕方ないっちゃー仕方ない。


それに、こうの事好きだって自覚できたのも彼氏と付き合ったからだし。


「色々あったけど、自分の気持ちに気付けたのは結局彼氏と付き合ったからだし、全部が全部悪かったわけじゃなかったよ」

「それでもやっぱりごめ~ん!! もう土下座でもしないと私の気が済まない~」


でも友寧ゆうねはわたしの言う事も受け入れずに土下座しだした。

流石にそこまでされても困る。


「いや、本当、あれがあったからわたしもこうの好きだって自覚出来たんだし、ある意味感謝してるよ」

「そうだよ、私もなつの事考えてなかったのは事実だし反省する機会が出来て感謝してるから」

こうは反省することは無かったと思うよ?」

「え?」


こうには悪い所無かったと今でも思ってる。

なんでこう自身はそんなに卑屈になってんだろう。


「そ~だよ! こうは悪くないの~! 悪いの私だから!!」

「もうそれは良いから!」


同じ話を蒸し返して謝り続ける友寧ゆうねをなんとかこうと二人で慌ててなだめすかして土下座を止めさせた。


根は良い子なのは解るが、一々大袈裟で対応に困る子なんだよな友寧ゆうねって。



ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ≫≫≫≫≫≫



そんなこんなで授業の合間の休憩時間。

この間みたいに他のクラスにも関わらず休憩時間直ぐにこうに話しかけてきた奴もいたから警戒して即行こうもとへ向かう。

椅子に座ってるこうを後ろから抱きすくめる。


何事かとこちらを見てくるクラスメイトに威嚇・・・・・・じゃなくて、威圧する。


フフフ、これでこうに近寄れまい。


昨日のデートの事もある。

昼休みともなれば、既に他の学年にも噂が広まったのか、わたし達をチラチラと見に来る子が一年生のみならず二年生っぽい子らも増えた。


構わずこうを抱きすくめたまま威圧。


キャーキャー言って帰ってく。

流石に睨みを効かせ過ぎたかな。

でもここらでビビらせておかないと、わたしに戦いを挑んでくる輩が出るかもしれないから手を緩められない。

特に男子。

でも見に来る殆どが女子なんだよな。

つまりはそう言う事か。

こうは女子からも狙われている、と。

なら女子にも油断できない。

わたしとこうの仲を見せつけてやらねば。


「ひゃ~、凄い人気だね~」


友寧ゆうねが教室の入り口を見ながら話しかけてきた。


「?」

「何が?」

「二人の人気が~?」

「へー」

「私たちの人気? って何?」

「え~? こう知らないの~? こうは男女問わず人気あるし~、なつは女子全般に人気があるから~、その二人がこうべったりくっついたらそりゃ皆もwktkワクテカしに来るってもんだよ~」


wktkワクテカなのか?

野次馬なだけ?

いやいや、油断してはいけない。

こうに人気があるのは多分本当だ。

さっきから普段ではありえない程の人数の他クラスの子がわざわざうちのクラスの出入り口に来てはこちらを見て帰っていくのだから。


「何で私に人気があるの?」


でもこうは自身に人気がある事をこれっぽちも理解しようとしない。


「え~? カワイイから~?」

「うんうん」

「もっと可愛い子沢山いるよね?」

「いや~、こうはうちの学校でも学年トップ3に入るよ~」

「うんうん」

「な訳ないじゃん」

「え~? そうかな~? こりゃなつも大変だね~?」

「だよなー」

「何が大変なの」


大変だよー。

無警戒のこうが心配で仕方ない。

モテる恋人を持つと気が置けないねー。

しかも本人無自覚とかもうね!

少しはこっちの心配も解って欲しい。

でも何が何だか解ってないって顔してるこうの顔も可愛くて仕方がない。


もう、この鈍感め!


こうの肩にスリスリと頬ずりする。


そうだった、周りにわたし達の仲を見せつけてやらねば!!

こうのほっぺにもスリスリ。


「あ〜、私こういうのどっかで見たことあるな〜って思ってたけど思い出した〜。

親鳥がヒナを囲ってるやつだ〜。お腹の羽の下に入れてるみたいじゃん~。もしくは子猫を離さない親猫! あはははは!」


バカ笑いする友寧ゆうね

まあ実際にわたしの防衛線の中にこうを必死で留めようとしているのだからあながち意味間違ってないんだけど。

例えがね~。

まあヒナ鳥や子猫なこうは可愛いから許す。

わたしは親バカで結構。



「ねえなつ? 恥ずかしいからそろそろ止めない?」

「うーん? やだ」

「やだじゃなくて」

「今忙しい」

「忙しい!? 何に!?」

こうを愛でるのに?」

「なんで疑問形」

「他にも色々と?」

「他って!? 色々って!?」


こうを愛でつつ、イチャラブ度を見せつけて周りを牽制しつつ、睨みを効かせつつ、でもってやっぱりこうを堪能する。


色々と忙しい。

そしてこうを抱きすくめるのを止めるとそれらが出来なくなるので却下です。

絶対離しません。


「あはは! たじろぐこうカワイイ~!」


当然だ!


「フフフ! わたしのこうは可愛いだろ!」


そしてさりげなく? 露骨に? “わたしの” と言っておく!


「そんななつもカワイイけどね~」


ついでと言わんばかりにわたしも褒めてくる友寧ゆうね

まあきっとこうに気付かれないように周りに威嚇しまくってるわたしの姿をからかってるんだろう。


「わたしはカッコイイって褒めて欲しいけど」

「ん~いや~、やっぱ “カワイイ~” だね!」


そこはカッコイイって褒めろよ。

まったく・・・・・・。


「可愛くないな友寧ゆうねは」

「私はカワイイっしょ!?」

「いんや可愛くないね!」

「えぇ~! 私ってそんなにカワイくないかな~!?」

「可愛いけど可愛くないね!」

「どっちだよ~!!」

「(容姿は)可愛いけど(態度は)可愛くないって事!」

「?? ね~こうなつが何言ってるかわかんないんだけど!」


そんなに難しい事は言ってないだけど、何故か友寧ゆうねに理解されなかった。

友寧ゆうねこうに助けを求めた。


「はいはい、友寧ゆうねなつも可愛いよ」

「でもなつはカワイくないって言ってくる~」

「わたしはカッコイイって褒められたいんだってー」

「じゃあ友寧ゆうねのその態度は可愛くない。なつもその態度が恰好良くない」

「え~」

「えー」


なんだか無理矢理終わらせようとしているな。

まあ、うざかったよなわたしら。


友寧ゆうねは黙ってれば可愛いし、なつも黙ってれば恰好良い。はい、という事で今から喋るの禁止」

「え~」

「むう」


むう・・・・・・。


こう友寧ゆうねは(黙ってれば)可愛いと褒めている。

うーん、ぶっちゃけると中の上かな。

普通の部類よりやや上のカワイイ部類に入るかな? と思う。

おしゃべりなのと馬鹿っぽいテンションが台無しにしてる感じだね。


・・・


・・・・・・?


今、こう、わたしの事なんて言った?

黙ってれば、カッコイイ?

わたしってカッコイイ?

黙ってれば、がつくけど、こうにはそう見えてるの?


「わ、わたしってこうから見てカッコイイ?」

「んー? 恰好良いよ?」

「!!」


マジ?

純粋に、社交辞令じゃない感じで言ってくれる。


何これ。

ヤバい。


嬉しい!!


「てかさ~、なつの顔ヤバいよ~? 黙ってればカッコイイって嘘だよ~! あはは」


友寧ゆうねの失礼な言葉もわたしには届いていない。





『――んー? 恰好良いよ?』


はうぁ!!


嬉しいー!!




――って、浮かれ過ぎて気付けば放課後、下駄箱にいて、こうが自分の靴の上に手紙があったと言っている。


 !?

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