第5話 何も間違ってはいない(智里)

 あの子が急に「学校に話し合い行くなら今日にして」と言ってきた。このタイミングで、言われると困るし、急に学校に行っても、話し合いに応じてくれるか分からなかった。ただ、あの子が乗り気なので、このタイミングを逃してはいけないと思い、「14時ぐらいに学校に行きましょう」と言って、学校に断られるのも困るので、事前連絡なしで行ってしまった。

でも結局は、やっぱり学校での話し合いは平行線のまま進み何も解決することはなかった。学校の対応にどうしても納得ができないものもある。積極性もなく、私たち親子に手を差し伸べて、助けようともしないのだ。あの校長は、何を言っても、反応が薄く、責任感が全くない。担任の田村もあまりにも積極性もなく、その場しのぎの対応をされているような気がして腹が立ってくる。それからすぐに、田村は授業があるのでと校長室から出て行った。

校長から「すみません。こちらも予定がありますので、次は連絡をいただければ助かります」ともうそれ以上の話し合いをするつもりがないという感じで、家に帰ることになった。

学校を出てすぐに、「コンビニによって帰る」と言われて、私は先に帰ることになった。

少し1人なれたことで、張り詰めていた気持ちが解けた。ここ1年ぐらいもう疲れ果てていた。あの子がこの先どうなってもいいと思える日が続き、何度、消えてくれないかなと思う日々が続いていた。でもいつも現実は変わらず、あの子は存在していた。

学校に行けなくなり、引きこもった当初は部屋に籠って、テレビゲームに没頭していた。なぜ、そうなったかなど、何一つ説明をしてくれる様子はなかった。

そんな生活が半年ほど続いた矢先、夫の達也があの子の部屋に入って行き「学校に通わない奴はこの家に住むな!お前の堕落生活に付き合うつもりはない」言い放ってしまって、また「自分で金を稼いでから、ゲームだろうが引きこもり生活だろうがしろ」怒ってことがあった。それを言われたあの子は反論することもなく黙っていた。次の日、父親が会社に行った後、あの子は私に「教室には入れない」と言ってきた。学校に連絡をして、週3日の別室登校が実現した。

あの子のいない、週3日は幸せだった。ただ、もうすぐ中学校を卒業するタイミングになっている。進路のことなど、何も決めていなかった。学校に進路に関しても連絡したこともあった。その時は、通信制高校を進められたが、お子さんとご相談してくださいで終わる。向こうがあの子と話し合いする気がないことに腹が立ってくる。進路相談は学校がするものじゃないのだろうか。

マンションに着いて、ソファに座ると、頭が痛かった。余計なことばかを考えているようで、疲れてくる。スマホの音が聞こえる。鞄を探って手に取ると、見知らぬ電話番号が点滅していた。何も考えず一応、出てみると、病院からだった。あの子が病院には運ばれたとのことだった。急いで、教えてもらった病院にタクシーで向かうことにした。

何があったのだろうか。もしかして、自殺を図ったのではないのか。詳しいことは電話では教えてもらえなかった。

タクシーが病院について、教えてもらった場所に向かう。そこで、言われたことが、「手を尽くしたのですが、残念ながらお亡くなりになりました」だった。

コンビニに誤って、車が侵入してきて、その車に激突されて亡くなったとのことだった。何とも言えない結末だった。運転していた70代の男性も亡くなったとのことだった。

私は何を間違えたのでしょうか。


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身勝手な考えたち 一色 サラ @Saku89make

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