第4話 良い子でいたいのです。(水島)


また、新谷の野郎が母親を引き連れて、学校にやって来たのか。マジで面倒くさいやろうだな。ねちねちと小言ばっかほざきあがって。あんな奴、ほっとけばいいじゃん。 

「水島、ここ教えてくれない?」

「どこですか?」

「ここなんだけど」

「ここはですね・・・」

まあいいや、バカに勉強を教えるのは嫌いじゃない。

教室のドアが開いて田村のおっさんが入って来た。

「田村じゃん」

勉強を聞いてきた奴らも席に戻って行った。

「騒がしいぞ!授業始めるから静かにしなさい。遅れて申し訳なかった。では教科書の50ページ開いて」15分程度遅れてきた田村は黒板にチョークで図式を書いてるが、字が汚いなくて読みにくい。ただ、もうすでに塾で勉強済みなので、復習の気分だが、退屈でしょうがない内容に聞こえてくる。田村の話し方は、説明が長くて分かりずらくて、聞きずれー。あれでよく教師になれたものだ。

 「誰か黒板に回答を書いてくれないか?」田村が言っても、誰も手を挙げることもいなく、何でこんな簡単な問題も解けねーだよ。結局「誰もいないのか。水島、書いてくれ」と指示してくる。「はい」と少し悩んだふりをして黒板に向かい、答えを書いてあげた。すると「さすがだな」と田村のおっさんが不愉快な声を出す。ただ、その後のクラスメイトから拍手せれて満更でもない気持ちになったが、絶対に顔に出さないよう振る舞い「ありがとうございます。」と少し低い声で嬉しさを噛み殺すように言うのがお決まりだ。何事も問題なく中学生活を行うために試行錯誤して見出した人物設定だ。

 だけど、新谷の引きこもり野郎は、頭が悪くて要領も悪すぎて反吐が出てくる。何がきっかけで、呵責を起こして、問題を起こすのではないのかと、苛立ちが先行してきやがる。

 現在高校3年の従兄である政治くんが中学2年の時、3年生のクラスでいじめが発生して、自殺を図りやがたらしい。その家族は学校等に賠償金を請求して、被害妄想の塊だ。そのため、マスコミに学校名が公表されて、学校には連日マスコミなどが発生して、政治くんも親戚の家族も迷惑を被ることになりと怒り心頭だったのを思い出す。政治くん家族は、その中学の名前で卒業したくなかったのか、転校までしていた。

 新谷とは、去年の2年の時も同じクラスだった。特に印象に残っていないし、顔も思い出せないレベルの陰の薄い人物だ。陰湿で被害妄想の塊のようで、自殺願望があるかは謎だ。俺からしたら一番、厄介な人物な気がして気味が悪くてしかたなくなってくる。新谷の名前を聞くたびに、不愉快な気持ちが沸々と込み上げてきやがる。俺は、あんな落ちこぼれにはなりたくはないから、必死に頑張ってやって来た。それを邪魔されたくないし、関わりたくもねえ。ただ、努力を無駄を水の泡にされては困るんだようね、こっちは。あのアンケートには当たり障りのない回答をした。問題を起こされたら、進路に関わってくるので本当にやめてほしいが、そんなことが通じるわけないのだろうが苛立ちは先走ってきやがる。

チャイムが鳴って、授業は一旦終了した。この後はホームルームだ。新谷の話が出ないか心配だ。

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