㊴『完成したら、それで終わりじゃない』

(ご挨拶)


▽こんにちは! ゼロから講座にお越しいただきありがとうございます!

 この講座は、『小説を始めたばかり』or『小説をこれから始めたい』という方へ向けてちょびっと役に立つノウハウを紹介しつつ、尾崎ゆうじと一緒にゼロから一緒に楽しく小説を書き上げましょうという企画です。


「けっこう参考になるじゃん」と思った方は、講座や尾崎ゆうじのフォローをお願いします。


(2020.10.25からテキストのみの講座になりました。過去のyoutube動画に関しては、追って少しずつ文字起こししていきます──と言っていたのですが、かなり大変な作業だなということを痛感したので、テキスト化は相当量の要望が無いかぎり、ゆるゆると放置する可能性が高いです。少しクオリティを下げてのテキスト化は、ちょっと考えています) 


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(今日の講座)


『20201125 完成したって油断ならん』



 今日は、これといった技術的なお話でなく、メンタル面が主軸のお話です。


 みなさんは、何がしかの小説を完成させたことはありますか?


 このゼロから講座は上記の挨拶文のとおり、まだ小説を始めていない方も対象に進めてきましたので、もしかしたら「まだです」という方もいらっしゃるかと思い、このように質問させていただきました。


 おそらく今この講座を訪れている方の多くは


「いや、バリバリ完成させとるわい」


 とか、


「とりあえず1巻分は……」


 なんて方ばかりだと思っています。もしかしたら、今回の講座で私に付き合い、「5分コンの短編で初めて完結させました~」という方もいらっしゃるかもしれませんね。


 4回も5回もリライトを繰り返し、念入りに読み直した原稿を、慎重に間違いのないようアップすると「終わった~!」というスッキリした気持ちになりますよね。この時の感覚は人それぞれだと思いますが、とりあえず「ひと仕事終えた」という区切りがつきますよね。


 ところがここで注意です。油断してはなりません。


 例えば私の場合、〆切の日にちを跨いでしまってから、応募作品を『連載中』から『完結済み』に切り替えるのを忘れていたことに気づきました。忙しさにかまけて要項を昨日ちゃんと確認したら『期間中に完結済にチェック』と明記してあり、orzな状態です。ただ別記にて、『終了後に作品を修正する場合は~~~』という表記もあるので、「この状況からでも入れるコンテストなんですか!?」という期待を胸に、悪あがき参加しました。どうなることやらですね。


 ──とまあ、そんなことがあったのですが、今日の本命はそちらじゃないのです。


 私はもっと大事なことを忘れていました。


 作る側として1人でリライトして「完成した~」と、すっきり満足していてはイカンのでした。ここからが本当の勝負だったのです。


 当たり前ですが、小説は他人に読ませるもの。今までの作業工程は、あくまで「自分の中の完成」であって、言わばプロトタイプだったわけです。全部の過程をアップしているものだから、それを完全に忘れていました。


 その結果、「これで終わったと思うなよ」という創作の神様からのメッセージが届きまして……。


 それで私の経験上、こういう精神的に刺さるやつは無視しない方がよい、とも感じました。


 具体的に、そのメッセージとは下記のとおり。完成稿に対する予期せぬ指摘でした。


①序盤が回りくどい気がする

 『年齢確認』を使用して、キャラクターの年齢関係を書こうとしている気がするけど、ストレートに書いた方がいいかも? 回り道している気がする。この作品の一番のポイントは、中盤のミスリードだから、そこまでは駆け抜けて欲しいかも。


②後半の『ジョニーデップ』はいらないかもと思った。

 そこ必要かな? と。ここもオチまで駆け抜けてもいいかも。先輩の彼氏がバイトに新しく入った、さえ分かればいいかも。

 前半と後半がちょっと長いように感じる。長編だとたぶん悪くない手法だと思うんだけど、短編だと逆に余計かなと。

 

③個人的にはバイトに五分前到着もリアリティがやや、うーん? となった。



 ああ、神様。


 胸が痛いよ笑


 というわけで、つまり何が言いたいかというと、これはメッセージをくれた個人に対する文句とか反論とか、そういうことでは決してないんですよね。


 私はこれを、


「完成稿はアップしたものの、実際のところ、あの作品どうなのかなー」

「タイトルとかもけっこう直感で決めちゃったし、なんか変なところとか、あったかもなー」

「どや顔でゼロから講座なんてやってるくせに、結局パッとしない作品だったかもなー」


 といった自分の無意識の思考が招いた、シンクロニシティ(=無意識に思考していることが、現実世界と共鳴しているように感じられる現象のこと)だと捉えたわけです。


 完成した、世に公開した、その後それほど間を置かずに、この現象は起こることが多いです。シンクロニシティというと、ちょっと非科学的な印象ですが、脳科学的にも説明できる現象です(正確には認知科学なのかな?)。


 人間の脳は無意識的であっても、重要だと思っている情報を5感で集めてしまうそうです。『カクテルパーティ効果』で調べると、それに近いものが記載されています。


 だから私が『おにぎり~~』の完成稿(だと思ってるもの)に対し、気になっていることがある場合、たとえ誰かから指摘を受けなかったとしても、その改稿案が思い浮かんだりします。シャワーを浴びている時だったり、あるいはテレビやネット、ふと開いた漫画本、妻の言葉などなど、何かに引っかかりを覚え、それが実は「『おにぎり~~』に対する自分の客観的な感想だった」とか、「要改稿のアイディアだった」ということは、けっこうあります。


 そんなわけで、今回はさいわいにもわかりやすく指摘されて、


「確かにそうかもな……」


 と思う部分があったので、改稿作業をしました。もちろん時間に限界がありましたし、見切るところは見切ると決断しましたけどね。


 ただし注意しなければならないのは、シンクロニシティについて考えると、慣れるまで『どれもこれもが自分に訴えかけているメッセージ』のような気がしてくる場合があります。


 私もいまだにそういうことは多いですが、わりと判別できるようになりました。


 ひとつの判断基準としては、「めんどいから見て見ぬふりをしたい」といった言葉が脳裏にありありと浮かんだときは、だいたいが自分の抱えている問題点になっている場合が多いです。


 何回かご自分の無意識の声を信じてみて、小さなところでトライ&エラーをしてみると、自分なりの感覚がつかめてくると思います。私の場合は、あとこれに「胸がむかむかする」感じが追加されます。はかはかする、というか吐き気がしたりとか、単純な「怒り」とは違う感じだったり。(いや、根本の生理的反応としては、どの怒りも全部一緒らしいんだけど……)


 そんなわけで、求められているかはわかりませんが、一応、リライトした項目、しなかった項目について、紹介します。


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(完成稿からのリライト)


①について


 序盤は「確かになあ、うーん……」という感じでした。リライトによるものなのか、あるいは元から少しくどめなのか、たぶん両方少しずつ影響しているのですが、理解はできるなあと思いました。


 特に、リライトしたことによって、美沙子先輩の絡みが正当性のない嫌がらせに落ちているので、配慮によって悪い方向に転がったかも。


 とはいえ別の形で共感の仕掛けづくりをして文章構築をするとなると、ちょっと時間がなかったので、ここは完全に諦めました。



②について


 2人が映研的なサークルに所属していることもあり、先輩が彼を俳優に例えるのはアリかなーと思ったのですが、浮いちゃったかもしれないですね。


 ここは対象の部分を下記のとおり削ったうえで整え、主人公的には「えぇー……」といった感想を抱くような相手であることを描写し、望月くんを上げることについては変わぬ効果を出せているかなと思います。スッとしたかも。


③について


 リアリティという意味で言うと、コンビニの夜勤には毎日10分以上遅刻してくるような人間もいるので、リアルではあるんですけど……どちらにせよフィクションの範囲内かなあ、どう感じるものかなあ……というせめぎ合いでした。


 それでちょっと不安ではあるけれど、原因を想像してみた結果、ビフォーにて美沙子先輩が「18時ぎりぎり」を強調したことにより、余計な部分に焦点が当たってしまったのかもしれないという予測を立て、台詞をちょっといじりました。


 それくらいだったら、主人公の美沙子先輩の会話の長さが、ちょっと「時間的に長くない? 5分?」の方に違和感軸をずらしたほうが良いと判断した次第です。よくありますよね「こいつら、こんなに切迫した状況でずっと話してていいの?」みたいな会話描写。そっちの方がまだ許されやすいってことなのかもしれませんね。



B3『「あたしの彼氏が、ここの夜勤しててね」

「彼氏?」

 私は首をひねった。

 話によると、先輩は『最近気になっていたひと』と、晴れて恋人になったらしい。で、先輩いわくジョニーデップ似の彼氏が望月くんに、『受験生なのにバイトをやめない理由』を訊いたらしく、結果、その彼が今からシフトに入るそうだ。

 ……やっぱり話が見えないんですけど。 

「あ、来た来た!」

 美沙子先輩が言うと、その見晴らしの悪い駐車場に黒いセダンが停まった。

 降りてきたのは、なんとあの、長髪のダルい店員だった。え、あれが『気になってたひと』だったんだ。

 当たり前だけど、全然ジョニーデップじゃない。

「もう18時になるよ、早く早く!」

 ジョニー成分5%の彼は、先輩に背中を押され、早歩きで店内に入っていく。

 すると先輩だけ立ち止まり、ドアの手前でふり返った。

、望月くん、バイトやめられないんだって」

「え……?」』


 ↓


A3『「あたしの彼氏が、ここの夜勤しててね」

「彼氏?」

 私は首をひねった。

 話によると、先輩は『最近気になっていたひと』と、晴れて恋人になったらしい。で、なぜかその彼が、今からシフトに入るそうだ。

 ……やっぱり話が見えないんですけど。 

「あ、来た来た!」

 美沙子先輩が言うと、その見晴らしの悪い駐車場に黒いセダンが停まった。

 降りてきたのは、なんとあの、長髪のダルい店員だった。えぇー、あれが先輩の『気になってたひと』だったんだ。

「遅刻するよ、早く早く!」

 彼は美沙子先輩に背中を押され、やはりダルそうに、しかし速足で店内に入っていく。

 すると先輩だけはドアの手前で立ち止まり、こちらを振り返った。

、望月くん、バイトやめられないんだって」

「え……?」』



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(全文で確認したい方はこちら)


 ビフォー 最初の完成稿(自称)はこちらの資料です。


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054934956287/episodes/1177354055013643315

 


 アフター 現在の完成稿です。(完結済みにしました)


 https://kakuyomu.jp/works/1177354054992755802


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 というか、やっぱり最近は動けば動くほど「こっちに進むか」「あ、やっぱ違うな」「じゃあこっちに行きたいな」みたいな、そういう転機がどんどん訪れている感じがします。


 このリライト一つとってもそうで、やったことは大したことじゃないし、作品自体も講座用に5分コンへ向けて小説を書いてみた、という感じの軽いノリで作り始めたものではありますが、いざ指摘を受けてみると、自分の心は違う方向を向いているみたいでした。


 講座のため、一定レベル以上のものは見せたいと思い、一生懸命書いたわけです。そりゃあ指摘されたらイラっとしたり、吐き気がしたりするかもしれませんが、どうやらよーく考えたら、何か違うっぽいんですよね。


 小説という形式を自分で書くのはキツイけど、やっぱり僕自身も、全部プライドを捨てて、本当の意味でゼロから貪欲に学んでいきたいなと思いました。


 いずれ原作者になりたいと思っていましたが、昨日の夜、ふと自分も初心者的な立場で、すべての事象から学んで吸収していくスタンスで発信していきたいと思います。


 ちょっとこれから私の発信スタンスが変わっていきますので、違和感を感じたらすみません。本当の意味で、一緒に学んでいきましょうという感じになります。


 あと、たぶんメインの活動の場をカクヨムでなく、別にブログを作って移すことになると思います。


 それと貪欲な学びスタンスとして、12月にカクヨムでオンライン講座が始まるみたいなので、迷わず飛び込んでみました。良ければ、オンラインではありますが、皆さんも一緒にいかがでしょう。


 どのみち、何らかの形で学んだことをシェアすると思いますけどね。


 というわけで、今日はいろいろ決意表明もして、盛沢山ですみません。でも、私の発信がこれからより一層有益になると思います。


 ちょっと長すぎたので、ちゃんと見直しはできてませんので、おかしな文脈があったらすみません。耐えかねる感じだったら、お知らせください!


 ではでは、またお会いしましょう。お疲れ様でした!



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創作コーチ


尾崎ゆうじ


▼以下のリンクは、ドラッグしてコピー → 検索窓に貼り付けて検索してください。


(note)


 https://note.com/ozaki_yuji

 


(youtube)


https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber 

 『ゼロから講座』の過去動画はこちら。書評動画もあるよ。



(stand FM)


https://stand.fm/channels/5f810a3bf04555115d146941 


 初~中級者向け。企画で語りきれなかったコメントの深掘り発信を音声で『気になるどーラジオ』


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