㊳『ほんの1、2行のリライトが、その作品の末路を変えることもある(細部リライト)』

(ご挨拶)


▽こんにちは! ゼロから講座にお越しいただきありがとうございます!

 この講座は、『小説を始めたばかり』or『小説をこれから始めたい』という方へ向けてちょびっと役に立つノウハウを紹介しつつ、尾崎ゆうじと一緒にゼロから一緒に楽しく小説を書き上げましょうという企画です。


「けっこう参考になるじゃん」と思った方は、講座や尾崎ゆうじのフォローをお願いします。


(2020.10.25からテキストのみの講座になりました。過去のyoutube動画に関しては、追って少しずつ文字起こししていきます──と言っていたのですが、かなり大変な作業だなということを痛感したので、テキスト化は相当量の要望が無いかぎり、ゆるゆると放置する可能性が高いです。少しクオリティを下げてのテキスト化は、ちょっと考えています) 


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(今日の講座)


『20201124 3回目のリライト仕上げの基準』


 今日は、昨日まで頑張ってやってきた『俯瞰リライト』を終えた状態で、これから細部について添削作業をしていきましょうという話です。


 いちおう『細部リライト』と読んでおきます。前回までお伝えしていた内容でいうと、3回目リライトです。


 私の作品が問題点を多くはらんでいたため、2回目のリライトを5回も繰り返したので、回数で説明するとややこしいなと思い、少し名称を改めます。そもそもはドラマのシナリオ構成の権威と言っていいシド・フィールド氏が提唱しているリライト手順を、少しいじってお伝えしていましたが、そうそう上手く、「2回目はこれ、3回目はこれ」といかないですよね。


 というわけで、順序としては


草稿 → 俯瞰リライト → 細部リライト 


 が効率的というだけで、それぞれに回数の制限はありません、と付け加えます。


 細部リライトの基準は、下記のとおりです。前回の記事から抜粋しています。



③ 細部リライト(3回目のリライト)


 さらにもう一度読み直して、構成や効果的にドラマを演出できる構図になっているか把握できたら、今度は『てにをは』や説明部分の書き直し、描写の修正、会話の面白さ追求などを直していく。わかりやすい説明になっているか、シーンや時系列、キャラの台詞などで読者が誤読しそうな部分は無いか、不自然さはないか、誤字脱字、あるいは用いている言葉に誤用は無いかなど、再度チェックする。


 イメージとしては、②俯瞰リライトが部屋の模様替えで、③細部リライトがお片付けです。


(追記)


 気になるどーをやっていてよく感じるのは、シーン設定や時系列などがよくわからなくなっていることや、その台詞を誰が喋っているのかわかりにくく、読んでいてつまずいてしまうことなどです。


 これらは、このリライトの段階でチェックしていきます。場面描写や時系列などは、現代を描くか、異世界を描くかで変わってきますが、基本的に要チェックな部分です。「それっていつの話?」「それってどこでやってること?」「だれが喋ってんの?」みたいな。


 要するに5W1H的な話です。(HOWはけっこう省略可能かも)


 では実際のリライト内容を解説していきます。


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 全文で確認したい方はこちら。2回目がビフォーで、3回目がアフターです。


 アフターはそのまま、完成稿としました。 


2回目のリライトその2(俯瞰リライト5回目くらい?)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054934956287/episodes/1177354054995513300


3回目のリライト(細部リライト(完成稿))

https://kakuyomu.jp/works/1177354054992755802


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(以下、リライト実践)


 主だったリライト内容と、そうした理由を解説します。


 B……ビフォー  A……アフター


 1~4……1幕から4幕の部分を指します。


B1『「ねえねえ、君、『年確』ちゃんとしなくていいのぉ?」』


 ↓


A1『「ねえねえ、君、ちゃんと『年確』しなくていいのぉ?」』


(説明)


 君、という言葉の扱いにいつも悩んでいます。字面がなんか微妙だったので、ひらがなを挟む形にしました。意味合いと語感は変化しないので、良いかなと。



B1『「先輩が全部飲むんだから、いいじゃないですか」

 買い物かごには、数本のビールが入っているが、それは確かに先輩の飲み物なのだ。

「何その言い方、冷たーい。やだなぁ。あたし後輩にするなら、この店員さんみたいな、誠実な感じの子のほうが良かったなぁ」

「はいはい」

 私はため息を吐いた。あまり酔っていないはずなのに、先輩が止まらない。

 おそらく店員さんのせいだろう。背が高く、黒髪の短髪でさわやか系の彼は、普段まじめな顔で仕事をしているのに、かわれると少しはにかむような困り顔を見せる。それがまた可愛いためか、先輩からさらに追い打ちがかかるのだ。』


 ↓


A1『「先輩が全部飲むんだから、いいじゃないですか」

 私は本音を押し殺しつつ、店員さん──名札を見ると望月くん──にバーコードスキャンを促した。事実、買い物かごに入っているビールはほぼ先輩の飲み物だ。

「何その言い方、やだなぁ。あたし、後輩にするならこの店員さんみたいな、誠実な感じの子のほうが良かったなぁ」

「はいはい」

 私はため息を吐いた。あまり酔っていないはずなのに、先輩の絡みが止まらない。

 おそらく店員さんのせいだろう。背が高く、黒髪の短髪でさわやか系の彼は、普段まじめな顔で仕事をしているのに、からかわれると少しはにかむような困り顔を見せる。それがまた可愛いためか、先輩からさらに追い打ちがかかるのだ。』


(説明)

 

 そういえば、俯瞰リライトの方には、相手役の名前を紹介できてなかったと思い、入れ込む場所を探してくっつけました。


 あと、主人公がお酒を飲むかどうかは不明、という感じで書きかえました。想定読者のことを考え、レーベルのことも考えたら、そこは倫理的に気を遣いたいなという判断です。



B1『 でも気のせいか、いま望月くんの発した声が、どこか事務的に感じられた。もしかしたら『面倒な客だな』と思われたのかもしれない。見通しの悪い駐車場で、先輩が車に当てられそうになっているのを助けつつ、ため息が漏れた。

 その後は私のアパートで、先輩と映画のDVDを観ながら酒を飲み、一夜を明かした。先輩は酔っていびきをかきながら、早めに寝落ちした。

 それを横目に、『この人はモテないだろうなぁ』なんて失礼な評価をくだしつつ、私はあの店員さん──望月くんのことを考えていた。彼が私のことを、この美沙子先輩と同類だと思っていたら嫌だなぁ、なんて。

 私はそれから、毎週金曜日をコンビニに行く日と決め、夕飯のおにぎりを買うかたわらで、彼にちょっとだけ声をかけるようになった。いまいち判断が難しいけれど、美沙子先輩に比べたら、好印象を与えている自信はある。』


 ↓


A1『 でも気のせいか、いま彼の発した声は、どこか事務的にも感じられた。もしかしたら『面倒な客だったな』と思われたのかもしれない。

 だとしたら心外だ。この人とは同類視されたくないなぁ……。

 見通しの悪い駐車場で、先輩が車にぶつかりそうになっているのを助けつつ、ため息を漏らした。

 その後は私のアパートで、先輩と映画のDVDを観ながら酒を飲み、一夜を明かした。先輩は酔っていびきをかきながら、早めに寝落ちした。

 私はそれを横目に、『この人はモテないだろうなぁ』なんて失礼な評価をくだしつつ、あの店員さん──望月くんのことを考えていた。

 それから、毎週金曜日をコンビニに行く日と決め、夕飯のおにぎりを買うついでに、彼にちょっとだけ声をかけるようになった。行く時はもちろん1人。いまいち判断が難しいけれど、美沙子先輩に比べたら、好印象を与えていると思う。 』


(説明)


 リライトによって1幕から2幕への引っ張りが弱まったように感じたので、いろいろ入れ替えました。


 まずは、先輩との同類視の部分。本来はこの「同類視は嫌だなあ」=「良く見られたい」という願望を1幕の後に置き、引っ張っていましたが、リライトによってそれが適切じゃないと感じられたので、先の『彼の発した声』や『駐車場』と絡めて、そこに入れ込みました。


 ここに入れると、引っ張りとしては弱くなりそうな気がしますが、やむを得ずですね。


 そのあとで、『美沙子先輩に比べたら~~』の部分によって、読者が答え合わせをしたくなるのかな、という狙いでもってこの形に。


 『自信はある』よりも『思う』くらいにした方が、不確かさが増して良いかなーと思いました。



B3『 私は呆気に取られ、去っていく先輩の背中を見送ることしかできず、望月くんの顔も見ぬままに、ぐるりと遠回りをしておにぎり売り場まで歩いた。』


 ↓


A3『 私は呆気に取られ、望月くんの顔も見ぬままに、ぐるりと遠回りをしておにぎり売り場まで歩いた。』


(説明)


 この文章の前で、先輩が店の外に出ることは記載があったので、文脈が長くなりすぎるのも嫌だなと感じ、一部削除しました。あってもよかったけど、文字数も少し余裕が欲しかった。



B3『「えっと……まあ、はい。ちょっといろいろ相談に乗ってもらったりして」

「相談?」

 ふぅん。そういう馴れ初めか。だったら私だって──と思ったけど、こちらは週に1度、金曜日だけ。そのほかの日に先輩が何度も来ていたら、敵わないのか。』


 ↓ 


A3『「えっと……まあ、はい。ちょっといろいろ、相談に乗ってもらったりして」

「相談、へえ」

 ふぅん。そういう馴れ初めか。だったら私だって──と思ったけど、こちらは週に1度、金曜日だけ。そのほかの日に先輩が何度も来ていたら、敵わないか。いや、訪問頻度の問題じゃないかもしれないけどさ。』


(説明)


 こちらは逆に増やした部分ですね。主人公が明らかに『訪問頻度』だけで結果が決まったかのようにモノローグしていたので、「え、そういう問題?」と私もツッコミたくなったから、逆にセルフツッコミさせました。それほど邪魔にならない範囲なら、読者が感じそうなことをあえて突っ込ませると、良い感じに笑いになったりします。上手くできたかな?



B3『「僕、あんまり関わりたくないんですよね、ああいうトラブルって。めんどくさいっていうか、時間取られちゃうし」

 彼は目を伏せ、恥ずかしそうに言う。

「別にいいんじゃない? 学校もバイトもあって、受験勉強もしなきゃいけないんだし……」

 いまの私も、時間を取られようとしてるけど。

「そうかもしれないですけど、すごいって思います。来年の僕が同じ状況に遭遇しても、たぶんそんな対応はできないので」

 私は首をひねった。

「そうかな。望月くんの方がすごいと思うけど。私にはできないよ、受験勉強とバイトの両立なんて」

「いや、そんな……」』


 ↓


A3『「僕、あんまり関わりたくないんですよね、ああいうトラブルって。めんどくさいっていうか、時間取られちゃうし」

 彼は目を伏せ、恥ずかしそうに言う。

「別にいいんじゃない? 学校もバイトもあって、受験勉強もしなきゃいけないんだし……」

 いまの私も、時間を取られようとしてるけど。

「そうかもしれないですけど、すごいと思います。来年の僕が同じ状況に遭遇しても、たぶんそんな対応はできないので」

 私は首をひねった。

「そうかな。望月くんの方がすごいと思うけど」

「いや、そんな……」』


(説明)


 望月くんの方がすごい、と主張する理由をきちんと説明したほうがよいと考えていたのですが、その前の段階で、彼のおかれている状況をすでに明確にしているため、なんだか言葉が重複して、クドく感じられたので、後のほうを削除しました。すっきり。でも意味はなんとなくわかる。ミラクルですね。



B3『「待ってろって、お願いされたんでしょ?」

 するといきなり、どこかから声をかけられた。見ると、店の陰から美沙子先輩が顔をのぞかせ、にやにやと笑っていた。驚いた。帰ってなかったんだ。』


 ↓


A3『「待ってろって、お願いされたんでしょ?」

 するといきなり、声をかけられた。見ると、店の陰から美沙子先輩が顔をのぞかせ、にやにやと笑っていた。驚いた。帰ってなかったんだ。』


(説明)


 うーん、と思ったところ。『どこかから』というのがざっくりしていて、これこそシーンが上手く描けない描写という感じでした。なので、今回はあえて削除し、どこかは指定しないけど、声のする方を『見ると』という形にして書き換えました。うまくいってるかな?

 


 というわけで、今日は以上です。


 細かいリライトの説明は難しいですね。 


 またお会いしましょう。お疲れ様でした!



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創作コーチ


尾崎ゆうじ


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(note)


 https://note.com/ozaki_yuji

 


(youtube)


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 『ゼロから講座』の過去動画はこちら。書評動画もあるよ。



(stand FM)


https://stand.fm/channels/5f810a3bf04555115d146941 


 初~中級者向け。企画で語りきれなかったコメントの深掘り発信を音声で『気になるどーラジオ』


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