第17話~17

介護の仕事を始めて、仲間の印象として最初に思ったのは、心の歪な人が多いのだなという事。


大昔父から言われ続けた事。。「芸能界は汚い。」

しかし、私の知っている芸能界は、と言ってもマイナーなダンサーの世界と、舞台(商業ミュージカル)の世界だけだけれど、決して汚い世界では無かった。

勿論、嫉妬はある。しかし悪い意味での嫉妬ではなく、自分を向上させるための起爆剤のようなもので、嫉妬=嫌がらせ、イジメ。。ではなかった。


皆自分の芸事に対して切磋琢磨している清々しい姿しか思い出せない。


変わって介護の世界。。私が最初に直面したのは、嫌がらせ、イジメ。。そのもとは嫉妬であった。



始まりは、体操。。


最初の事業所は体操のプログラムなど無く、職員にお任せ状態。。

何処のどの筋肉をどのようになど無く、見ていると体を痛めるような動きになっている職員すらいる。。少なからず私は踊りを仕事としていた訳で、体に悪いか悪くないか?ぐらいは分かるのだ。


それに楽しくない。まず、職員が担当だから?と嫌々やっている人もいる。利用者さまも義務感が漂っている。。

楽しくないと身にならないと私は新人ながらに思った。。


どのみち体操のやり方など無い事業所。。

私は施設長に相談し、許可を貰い、音楽を利用した体操をする事にした。。

女性が多いデイサービス。。

曲は「マツケンサンバ」にした。勿論、準備体操は号令をかけてする。曲を流す前に掛け声の練習もする。そして最後の7~8分をマツケンサンバ体操にして、皆さんには掛け声を出してもらいながらの体操。。そしてクールダウンをして終了。と言う風にプログラムした。


私の立場は資格取得に向けて学校に通いながら、といった全くの新人。その新人が事業所であんたの体操な面白い。今日は誰が体操担当なのか?等声が上がり、普段体操をパスする利用者様も体操をしてくださるようになり、ある意味人気者になったが、それに反比例して周りの職員からの風当たりが酷くなっていった。施設長にはよく相談した。しかし、即戦力になる体操は続けてほしいと言われた。



それに加えて「歌」その事業所ではカラオケではなく、歌声喫茶のような時間があり、その係になると誰でも職員は先導して歌わなくてはいけない。その歌が利用者様の心を掴んでしまう事になる。=嫌がらせに拍車がかかった。


その後、資格を取り、仕事の段取りも覚え、私はイジメ、嫌がらせといったモチベーションの下がる職場に嫌気がさし、休みの日は自腹で各種介護に関してのセミナーに出かけて行き、ひたすら勉強した。


私の「歌」は耳元で歌うと言葉も発せられないような重度の認知症の利用者様の心にも響く事を知った。感情の無い利用者さまに笑顔をもたらす事も知った。


昔、ステージで華やかに歌う事の喜びとは違った喜び。。歌詞を覚えてその言葉を伝えるための気のようなもの。。つかみどころがなく、追いかければ追いかける程、逃げていく空気のようなもの。。それを求めて切磋琢磨していたというのに手に入らなかったものが、目の前にあった。。「これだ!」と思った瞬間にそのくうきのようなものは、一瞬で消える。

しかし、利用者様の心に寄り添おう。。と言う気持ちが湧いているうちは、私の「歌」に柔らかな空気が乗っかって、目の前に現れるのだ。。


私の努力によって、中間層(イジメには加わらない。関わらない人たち)が私の見方をするようになってくれた。。そんな時、元凶だったうちのひとりが、私の体操時間に音を止めてしまうといった嫌がらせまでエスカレートした。

その子は業務妨害として始末書を書かされたらしい。

その辺りで私の体に異変が生じて、その事業所は去った。


昔、手に入らなかったものが手に入りつつある感覚を感じながら、私の体の症状を考えると「歌」の技量は邪魔だと思っていた。


その辺りは「生まれてきた目的に辿り着くまで」に書いている。

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