Epilogue

「すべての記録の再生を終わりました」

 ベリンダ様に申しますと、彼女は悲しみを含んだ笑顔をお見せになります。そして、私に問います。

「アイツが最後に私に送った手紙も見たか?」

「拝見しました」

「それでも心は変わらないか?」

「はい」

 私はしっかりと頷きます。

「画面越しではありますが、私の胸はひどく揺さぶられました。記憶を削除されたはずなのに、胸が痛くなりました。私はこれが何か強く知りたいと思います」

「そっか。なら協力するよ」

「ありがとうございます」

 

 ベリンダ様に見送られ、私は旅に出ました。

 画面の中でしか見たことのないあの方にお会いするため。

 ひどい方でした。それでも、会いたいと強く思うのです。

 旅の中で私は様々な経験をしました。喜びも楽しみも、悲しみも恐怖も時に怒りさえ覚えました。

 それでも、あの方に抱いた感情には出会えませんでした。


 色とりどりの壁に囲まれた海辺の街。私は人づてに聞いた家の扉をノックします。

 出てきたのは身長の高いやせ型で、ヘーゼルの髪をお持ちになった――。

 そのブラウンの瞳は見開かれています。

 その瞬間、私は私の中に大きな喜びを検知しました。そして、胸に秘め続けた思いを放ちます。

「やっと見つけました。博士、私にもう一度、恋を、愛を教えてください」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る