18スラ プリンセスメカ! スライムさん

『イラッシャイマセ』

「いらっさいましたー!」 

『イラッシャイマセ』

「いらっさいましたー!」

『マタノオコシヲオマチシテオリマス』

「またのおこしおちおちしておまる!」


のどかな昼下がり。まだ街にいるよ!ネタ出しやすいからね!

そんな露骨にメタいカンジの昼下がり。

正午を知らせる鐘の音がリンゴーンガランゴローンとだみ声交じりで響き渡る。

この音がしたら朝のお仕事はお終い。楽しいお昼ごはんの時間なのだ。


『オー、ヒルニナリマシタワ、バイトシュウリョー』

「しゅーりょー!」

『アナタドコカラキタノカシラ』

「んーっとねー、べるはねー、とまーすにのってきたよ!」

『アー、アノクサレキカンシャ』

「そー! いたんしゃ!」

『アア、イイエテミョウデスワ…イタンシャデスネ、アレハ』


街を行く人々はランチタイムを楽しむかの様にあちこちへ繰り出す。


「いたんしゃ!」

『イタンシャ!』

「いたんしゃいたんしゃ~♪」

『イタンシャイタンシャ~♪♭』


最近は昼時の集客力で威力を発揮したランチタイムサービスが広まりつつあり、どこも昼限定のセットサービスを提供している。

「おい」

そのお陰か、店独特のセットメニューなどが色とりどりに店先で溢れ、昼に何を食べるか選びきれないと言う贅沢な悩みが生まれるのだが、それもまた楽しみの一つである。

ランチタイムを楽しみにしているのは、何も勤め人だけとは限ら「おい!」ない。

幼い子供を連れた主婦やお迎えを待つ老「おいっ! こっちむけや!」人…ってうっせーなぁ。

なにアンタ、さっきから何様のつもりだよ。

「おれ様だよ!」

アッそっすかー。ハイハイ、お偉い方ですねー。青いですもんねー。

そりゃどーもすんませんシター。

地の文にコッチ向けっつー無茶振りすんなや。

見て判んねーのか。仕事中だ仕事中。邪魔スンナ。


「いたんしゃ、しろいのぼふっしたよ!」

『アノヤロー、マタクッサイシルダシマシタカ』

「いっぱいぼふっしたんだよ!」

『アイツ、ツクッタヤツハアタマイカレテヤガリマスワ、ゼッタイ』

「ぜったいー!」


青いタマっころはポヨンポヨン転がって下さいマセ。いい加減にしねーと全身に画鋲っぞコラ。

ホラホラ、金ぴかボールになっちゃいまちゅよー。


「んだとこのヤロー! できるモンならやってみやがれっ! つーか、この状況説明しろっ!」


えー?煽り耐性虚弱じゃね?ゆとり?ゆとり世代?

してたじゃん説明。昼時の街並を消火栓視点で軽やかに描画してたじゃん。

それジャマしてんのに説明しろってオカシクない?

この辺のランチタイムは昼の鐘が合図で開始だから、都会のランチタイムみたいに11:00くらいから14:00までとかってないんよ?

タイムリーなんよ?今説明しなくてどーすんのよ!?


「なんでランチタイム説明してんだよ! 明らかに主人公サイドがおかしな状況じゃねーか! コッチを説明しやがれよ!」


そお?ホラ、ローズなんか口ポカーンで良い子にしてるじゃん。街中の喧噪の方が説明死骸があるじゃん。


「ありゃ、驚きで開いた口が塞がんねーんだよ! つーか死骸って字が違うじゃねーか!」


細けぇなぁ。尻の穴が小っさいヤツめ。立派なアナリストにはなれませんですよ?


「シリアナねーよ! スライムさんなめんなよ!」


舐めませんー。そんなセミとかカブトのアタマとか胴体プチュンした蝶の死骸とポケット同居する青いボールは汚ったないですぅー。


「いちいち腹立つなコイツ。」


フヒヒー。なになに?なんならオレの代わりに説明しちゃう?地の文要らずにしちゃう?

やってみろ、やってみろ、ホーレどしたどしたー。


『じゃあ、わたしが説明いたしましょう。』


え?


『地の文など放っておけばよいではないですか。大抵ビジュアル化したら地の文は出て来ませんでしょう?』


ちょっ!?おまっ!それ正しいけど!正しいけどっ!泣くぞ!


『足りない分は私と、えーと「すらいむさんだよ」…スライムさんですか。私達だけで問題ありませんね。』

「お、おう。そーだな。つーかベルは良く察したな…。」

「さっしたー! さっしたってなーに?」

『あなたが良い子って言うことですよ。』

「よいこー! やったーやったーやったーわーん!」


いやいやいや、地の文無視すんなって。

それとベルさん、危険発言はヤメテ!


『私達だけで問題ありませんね。』

ちょっ待っ『私達だけで問題ありませんね。』て…


いざとなったらこの様に一人称で進めれば良いのですから。如何ですかスライムさん。

おお、それは考え付かんかった。すげぇな、お前さん。不思議だけどよ。


……。(クソッおめーら好き勝手言いやがってど…くれ…あ…れ…?セリ…が…出ない…あれ、だれか…来…うだ。ああ!窓に窓に!)

……プチン。


『では、改めてご挨拶いたします。「ウチの化学は世界一イイイイイ!」と叫びながら滅んだ国から来ました。』

「せかいいちー!」

『私は元ヴィルシュテッター侯爵第一令嬢のエレオノーラ・エデルガルト・フォン・ヴィルシュテッターと申します。』

「はーい! べるはね、まりあべる・ふぉーくす! べるなの! 5さい!」

『あら、ベルさんは元気の良い挨拶がちゃんと出来るよいこですねー。頭を撫でてさし上げましょう。』

「ほめられたー!」

「いきなり流暢なシャベリになって驚れーたぜ。改めて言うがオレはスライムさんだ。悪りーが、アンタ何者なのか教えてくんねーか?」


確かにコイツは不思議だ。

人の様な人形の様などちらとも言える独特の雰囲気だ。

名前からして貴族の姫さんだ。普通、自動人形に付ける名前じゃねーよな。

いや、自動人形ってカテゴリーと違うんじゃねーか?

人間の組成に近い皮膚を持っているよーだがホムンクルスを利用した最近流行りの生体義足とかと同じなのか?

体内には駆動音が聞こえるがモーターじゃねぇな。

単なるゴーレムにしたって明確な意思を持ち会話をこなす高い知性は持たねぇ。

ボディはまだしも制御装置のアストラルコアへ高等生命体をす積層型術式転写は少なくともあと200年はかかる筈だ。

余りにも所作が自然すぎる。

むしろ、アストラルコアに人が宿ったっとでも言った方がしっくりくる。


『概ね正解でございますわよ? スライムさん』

「うおっほぅっ! 読心術かよ!」

『いえ、普通におしゃべりになってましたわ。』

「すらいむさん、むつかしーはなししてたよ。」

「あちゃー、空気振動切るの忘れてたわ。ちとマヌケだったな。」

「え…え?え? 何がどうなってるの?」

「おー。ローズ、正気に戻ったか。」

「え? 店先の客引き人形が? アレ? 普通に話してる? え? え?」


さすが、突拍子がない行動するベルのお目付け役だけあってチョビーットだけ不思議体験しても動じないローズであろうが、これは理解の範疇越えてるわな。

まぁ、オマエさんは話の中核が出るまで良く聞いて内容を咀嚼するこったな。それが早道だ。


『この身体はの亡国で兵器開発部門の天才と呼ばれたバカが造ったものですの。』

「その国って兵器の暴走事故で軍部と政治中枢が吹っ飛んだとこだろ? 中央都市に富も権力も全部集中させてたとこ。」

『はい、あってます。そのバカ国ですわ。』


ん?「身体は」って言ったな。中身は違うんか。


『この身体に、19世紀ドイツで亡くなった私がフラリ一霊ひとり旅をしていたところ、たまたま通りがかったの亡国でアストラルコアに吸い込まれて定着したのです。』

「え? ナニ、その異世界転生。フラリこれちゃうの?」

『来れますわよ? 意外と異世界は人気で予約待ちが220年でしたが。と言うか旅行なので転生とは違います。』

「予約待ち長げーよ! どんだけ異世界行きてーヤツがいんだよ!」

『私の順番が来る頃は予約待ちが400年になってましたわ。トラックに轢かれた若者とかが殺到してましてよ? 話が違うとか言って。』

「ぱんつー! みろりいろー!」

『はい、ベルさん。スカートを捲って遊ばないように。ちなみにこのパンツは春の新作ですわ。』

「はーい! すかーとであそばないー!」


うん。さっきからベルがスカートの中を頭ツッコんだり出したりして遊んでんだよな。

んで今、思いっきりスカート捲りやがった。

剥かれた方は無表情でパンツ全開。シュールな光景だ。

つーか、こいつスカート短くねーか?膝上20cmくらいだぞ?

スライムさん目線だと最初からパンツ丸見えなんだが、いまさら人間の身体なんて興味わかねーしな。


『スカートが短い方がバイト先で喜ばれるんですの。』

「いや、そんな情報いらねーんだが。つーかバイト?」

『そう。バイトですわ。この身体、食事の必要はありませんが服やアクセサリーは普通に購入しなければなりませんから。』

「んじゃ何かい、モノ買うのにバイトしてるってワケか。」

『その認識であっていますわ。』

「ばいとってなーに?」

『働いてお金を貰うことですのよ。』

「べる、おかねもってる! みてみて!」

『あら、たくさん持っていますわね。なくさないようにしないとダメですよ?』

「はーい。」


ベルさん、10円玉2枚掲げとりますがな。つーか、無造作にポッケに突っ込むのは変わんねーのかよ!


「しかし、10年くらい前だろ? あの国滅んだのは。おまえさん、エレオノーラだったか。そっからずっとバイト生活してんのか?」

『私のことはエリーと呼んでくださって結構ですわよ。この世界には旅行に来てますから旅費を稼ぎつつ観光巡りをしております。』

「ああ、旅行に来てたんだったな。つーか、中身は本物の姫さんだった訳か。」

『ええ、その通りですわ。この身体に固着したため朽ちるまで帰るつもりはありませんが。』

「おねーちゃん、おひめさまなの?」

『元ですわ。今は夜の蝶と呼ばれてますの。』

「うおいっ! ソッチの世界で活躍してんのかよ!」

「ちょうちょ! すごい! おねーちゃんとぶの?」

『うふふ。殿方に飛ばされることもありますわよ?』

「子供にナニ生々しいハナシしてんだよっ!」

「ピヨー。」

「ぴよこ今のタイミングで入ってくんのかよ…。おまえハトと一緒に地面啄んでなかったか?」

「ピヨ? ピヨー…」テレテレ


そこ照れるとこ違うだろ!ったく、自由だな、ぴよこ。


「うー…、やっぱり何が何だか判んない…。」


あー、ローズが着いてこれてねーな。しかたねーか。

なまじっか知識があると想定外の情報と突合しよーとしちまうかんな。

そうですわね。私も死んで長いこと経ちますが、最初の20年くらいは情報の整合性に悩まされましたもの。

お前コッチに入ってくんのかよ!一人称視点ちゃうわ!普通の会話になるだろーが!


『良いではないですか。ところで。』

「あん? なんだ?」

『都合よく衣服を溶かす粘液とか、身体を舐め回す触手などは取り揃えていますか?』

『あと、穴と言う穴に入り込んで辱めるなども注文したいのですが。』

「そんな商売してねーよ…。なんでウットリ顔で聞いてくんだよ…。」

『スライムの標準仕様ですもの。確認は必要ですわ。』

「ですわ!」

「ピヨヨ!」


なんか締まんねーな。

まぁ、いっか。

オレ様のラグジュアリーに輝く蒼さにひれ伏しやがれ、そこのハト。


クルッポー


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