17スラ 木製ピケットライン! スライムさん

街には秘密が溢れている。

ゴポッ、ゴポッと排水溝から聞こえる音は、きっと何処かの家から流された得体の知れない何かが汚水深くに横たわり、腐敗の最中に吐き出す泡であろう。

その証拠に排水溝から音がする度、鼻の奥を刺激する腐敗臭――どこか許容してはいけないと震える――が辺りを漂う。

この臭いに心の奥から湧き上がる嫌悪感は何であろう、と誰しもが思いながらも誰しもが手を出すことに恐怖する。

それは腐敗のプロセスが当然であるかの如く進行していく様と同じ摂理の一部に見える。


皮が破れ、その身が汚水に晒され、水流で削がれながらも、その形を崩さない骨格は、死を与えたもうた者の罪過であろうか。

白く濁った目は、既に光を称えることもなく、暗緑色の汚水を映すこともない。

臓腑はらわたも既に溶け落ち、頭部に残った僅かな身が、かつて生命であったことを呼び起こすしるべであった。


誰が言ったのであろう。

腐敗と濁流に真実があると。


誰がゆるしたのであろう。

あの母なる海から掬い上げたる罪を。


誰が覚えているのだろう。

彼の国から渡ってきた鉄の棺桶を。


耽美と倒錯から世界が産み出した混乱は、人々に発狂をもたらしながらも正気で在るよう強制する。

嘔吐と吐瀉物としゃぶつまみれながらも止むことのない濁流となった涙は否応なく意識を覚醒させる。


――興味本位に触れるべきではなかった、と。


そう。

触れ得るべきは選ばれた者のみである。

それを犯した者の末路。

生きながらに死を味わい、禁忌の何たるかをる。

――もはや取り返しはつかないのだ――

朽ち果てるまで責め苦を負う煉獄のように。

只管ひたすらに時が過ぎることを願う愚者のように。


誰かが叫ぶ。

それは忘れ去るべき過去を呼び覚ますように。




「ダレだっ!! シュールストレミングをドブに捨てたヤツはっ!!」




うん、前フリ長いよね。

そんで前フリはお話と何にも関係ないんだよネッ☆彡キラッ イラッ

昔テレビで見たんだけど、シュールなんたらって何年物ってのがあるらしくってさ。

それを北のヨーロピアーンな家族が庭でパクついちゃうのを紹介してたんだけど、パンパンなのよ。缶詰が。

んで、一家の大黒柱風おとっつぁんが、腕まくりで缶切り挿入しちゃうのよ。パンパンに。

ブシューッて噴水がさ。缶詰から噴水がさ。

今なら光の帯とか虹色に輝かせるとかの修正が入っちゃうレベル。

たぶん、あの場にいたペットのポチはクッサイので即死したと思うよ?


そういえば、これも昔。

浜松町でどっかの居酒屋がクサヤ焼いててさ。

歩行者へ強制的にクサヤ臭をプレゼントするっていう剛毅なことしてたなぁ。(遠い目)

その中にこれから東京タワーに登ろうかとしてる人がいたりなんかしたらと思うと。

笑いが止まりませんがな。グヒャヒャヒャ


つまりね。

シュールなんたらなクサヤ。


これがホントの飯テロだ!


旨いメシを振舞うのは飯ユートピアであってテロではないと断言するっ!


うん、別にどーでもいいことだと思うよね?

当然、地の文もどーでもいいと思ってるからさ。



街には秘密があぶれている。


「んゆー? なにこれー なにこれー」

「なにかしら? 柵?」

「ピヨ~」

「お? ナンでコンなとこに柵たってんだ?」


大人達とは別行動中の子供&人外。

まぁ、ベルがお出かけダッシュかましたところを捕まって、お目付け役にローズが添乗員にされたいつものパターンなんだけどさ。

そんで街の中を徘徊老人ムーブでお散歩中の一行が道の真ん中でナゾの仕切りに出くわしたトコロ。

「でくわす」って漢字だと「出会す」って書くんだよね。「わす」部分はゴロ的雰囲気残ってるケドさ。

「く」の部分が納得いかねッスよ。なんでも「でっくわす」が元らしいよ?

英語だとDECWASS。ハリウッド発のB級映画クサイ雰囲気濃厚。

落ち目のハリウッドスター満載ダヨ!


ああ、ナゾの仕切りね。忘れてナイ忘れてナイヨ?

説明放棄して早々にオハナシ締めようなんて考えてもナイヨ?

文字数多くなったからメンドくなったとかナイヨ?

前フリで力尽きたとか言わナイヨ?

ホントだよ?ホントだよ?


で。柵ちゅーか、仕切りがね、道の真ん中にされてるんザマスよ。

ほら、工事現場とか事故現場でハードルの横にでかいやつ版。

木製の横に長い板切れを支える支柱で簡単なバリケートみたいなもん。

ほら、市民運動でデモとかあるとここから入っちゃいけません的な仕切りとおんなじ。


こういった仕切りってね、ピケットラインっていうのよ。

監視線って意味なんだけどこっから先はきたらメッですよ?ってライン。


それはね。デモとかする人はそれを判らんのですよ。

難癖付けて自分の良い様に解釈して乗り越えて来るんですわ。

だから自分達で作った防衛ラインも町人が不便になることも考えずに通せんぼしちゃうんですよ。


そう。この木製ピケットライン。

あさりダ!よしとロう!的なものとは違いまっする。

今回は元ネタもワカリヅライよ!


「ぷらーん♪」


ギシ ギシ マガリ マガリ


「ちょっとベル、やめなさい。その板ギシギシ曲がってるわよ。」


幼児、木製の板にお腹で乗ってます。

天気の良い日にフトン干してる様相。

フトンほした時のお日さまのニオイってさ。

熱で死んだダニの匂いなんだぜ?


「ピヨ?」


ぴよこが止まり木がわりに鎮座中。


「つんつんする! ぼふっする!」


ベルさん、突然何を言い出しますのん。

身振り手振りが加わって板がバヨンバヨンしてますがな。


ユッサ ユッサ バヨーン バヨーン


「んふー♪」


ユッサ ユッサユサ バヨーン バヨヨーン ピヨー


「んふー♪ んふー♪」


ハイ、幼児バヨンバヨンに夢中になりました。


「チョット、ベル、ダメよ! その板折れちゃいそうよ!」

「え~!? ばよんばよーんなのに~」

「ベルさんや。そのバヨンバヨンはオレが挟まってクッションになってたこと忘れんなや。プッチンするとこだったじゃねーか。」

「それはたいへん! すらいむさんがぷっちんする! ぷっちんてなーに?」

「潰れちゃうことよ。もう、ベルったらスライムさんがポッケに入ってるのわすれてない?」

「だいじょーぶ! わすれてない!」


うん、言われれば思い出すレベルですね、それは。

スライムさんは列車の中で室内大クッションになってたんだからこのくらいではプッチンもビチャアァもしないのですよ。

でもポッケにナンか入ってたらプチリとなることをスライムさんは教えているのです。

それは幼児を諭す菩薩の如く。

掲示板でオトナが出た!と言われるくらい。

後光煌めくスライムさん。それは陽の光を浴びて物理的にお光あそばされた!後光チガウ言うな。


「あ! つんつんするー!」


バヨンバヨンに優先順位を奪われたつんつん再び。

遠くを見つめる幼児の目には何が写ったのか!

うん。柵の向こうに水色のまんじゅうがたくさんおられますなぁ。


幼児の手には先っちょが二股に分かれたつんつん増量中の戦国刺突小枝。

戦国刺突小枝の語呂が気に入ってるのは秘密の話だ。

大人の秘密は聞いてはならんことの方が多いのだ!


ベルさん、木製ピケットラインを乗り越えんがためヨイショヨイショと足をかけベリーロール体勢。

スライムさんがブニュリとひしゃげておりまする。

そして、今!コロンと!乗り越えたー!

別に盛り上げる必要はない。


「ちょっと何してるザマス!」


もう言葉尻から自分が正しいと思い込んで聞く耳持たずに意見を通そうとする雰囲気濃厚のオバさんがエンカウント。

三角メガネをクイッとしそうなカンジ。


「んゆー?」

「ここは入ったらダメザマス! 早く出ていきなさいザマス!」

「お嬢ちゃん、ここは立ち入り禁止なんだよ。早く柵の外に出た出た。」

「そうだそうだ!早く出ていけ!」


ナンかオッサンとか生えてきた。数人くらい。

出てけ出てけと語録が少ないその他大勢。

下っ端臭がプーンプーン。

幼児や子供に対してでかい態度をとる時点で人となりはお察し。


「一体何があったんですか、これ?」


ローズさん、大人の威圧に怯まずask a question.

意味も解らぬ退去勧告は納得いかないご様子です。


「わたくし達はスライムを守る会ザマス!」


三角メガネをクイッとしそうな雰囲気のセリフ発生。

ナンか訳判らん団体って多いよね。

主義主張するだけで打開策とか全く提示しない掲示板に書き込むノリで無責任発言垂れ流しの連中。

この木製ピケットラインも良く判らないこの団体が勝手に設置したもの。

違法設置に違法占拠ですなぁ。


「んゆー? まもるー?」

「そうザマス! 丸くなったスライムも一つの命ザマス! むやみに潰していいものではないザマス!」

「ぼふっ しないの?」

「そんなことはしてはいけません! それはスライムを殺すことになるザマス!」


こういった連中はスライムの生態とか関係なしに見た目と思い込みで全て判断するのだ。

だから性質が悪い。


「でも、すらいむさんがぼふっはやったほうがいいっていったよ?」

「何を言ってるザマスか。スライムがしゃべる訳ないザマス! 夢でも見たザマス!」


所詮子供の戯言だ、なんて三下が呟いていたり下っ端感増量。

大人になると、子供でなければ判らなかったことが世の中にたくさんあったことを忘れてしまうのだ。

そして、こういった連中の本質は自分の主張を通すことである。

だから初めから聞く耳をもたない。

本当にスライムのことを考えていたらもっとアプローチは違うだろう。


ナンかお話の流れがほんわかのんびり異種族交流からかけ離れてきたなぁ。

だからね。そろそろ動くよ、あのお方が。


『ベル、ローズ、声を出さずにちょっと聞け。』

「すらいむさん、なーに?」

『声だすなっつてんだろ…。まぁいいや。そこの大人達が驚くことをしてやんのさ。』

「おー、すごいー!」

「ちょっと、何言ってるザマス!? 誰と話してるザマス! 人の話をちゃんと聞くザマス!」


――お前が話を聞け


甲高いそんな声が辺りから聞こえる。


――そーだ、聞け

――人間どもよ、聞け

――耳を塞いでも無駄だ、聞け


辺り一面におわす水色のまんじゅうから囁き声とも違う耳に響く聲が。

この部分だけ切り取るとホラーっぽい。


「すごい、すごーい! すらいむがしゃべったー!」

「な、な、なんザマス! 一体なんザマス!」

「なんだ!? 誰が喋ってるお前か!?」

「んゆー?」


幾らなんでも幼児にソンな真似は出来ないだろうに。


――人間よ、何故に我らの繁殖を妨げる

――我らを滅ぼす気か

――ならば敵だ

――お前たちを滅ぼそう


この辺のセリフはザマス達の耳に直接届けてマス。

子供には聞かせらんないからね。

その辺のサジ加減はさすがスライムさん。

ひと掬いでショートケーキのイチゴを分捕る技法的芸術性。


木製ピケットラインがボロボロウスウスと崩れていってますが。


「なんかこわれたー!」

「やー、すごーい。柵が土になってる。」

「ピヨッ!」 スッテン コロリン


ぴよこ我関せず柵を止まり木にしてたので崩壊に巻き込まれ。

腐葉土化した元柵塗れになっとりますがな。


「な、なにが…」


ザマスはザマスを忘れるくらいの驚愕。

オッサンたちもアワアワしてるのが滑稽だ。


――次はお前達だ


ザマス達にだけ聞こえた謎の聲。

超反応を見せる大人達。

すごいね。ピューンと音が聴こえそうなくらいに逃げてったよ。


「いなくなちった。」

「いなくなったわね。スライムさんが何かしたんでしょ。」

「まあな。ちっと脅かしてやった。ああいった連中は言葉が通ーじねーからな。」

「柵もスライムさんが壊したの?」

「おうよ。すげーだろ。」

「すごーい! すらいむさんすごーい!」


スライムさんは木材に付着するカビや木材腐朽菌を超絶に活性化させ、木製ピケットラインを瞬間腐敗させた。

ザマス達に聞こえた声は水色まんじゅう付近で空気振動させたのと、鼓膜付近で空気振動させている。

そして今回は地の文で真面目な文章が時たま現れるのが問題視されるだろう。

ネイチャー誌に「一貫性のない地の文である」などと寄稿されるかもしれない。

むしろ誰か寄稿しろ!


あ。そうそう。

ザマス達なんだけどさ。

スライムさんが体内の酵素とかいろんな菌類を撤去させて二度と保有出来ない様にしたからさ。

どうなると思う?

それは秘密ですよ。

言わぬが花。

街の謎が一つ増えたと言っておこうかね。



うーん。

ある種の典型的な大人を出すとお話のベクトルが変わるからダメだな。

もちっとライトにしようと思ったけどさ。

大嫌いなんだよね、主張だけしかしない団体とかさ。


過去出合った人で子供嫌いっていう人が幾人つーか両手の指くらいいたけどね。

んで、そーいう人は大抵、自分自身が子供だったりするのね。

8割がそーだった。


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